召還師と教師の不祥の弟子たち

落花生

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異世界でのスペックが最低なのは確定だが、現実のスペックもよく考えれば高くはない

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 とりあえず、今の俺のスペックを整理しよう。
 種族:推定十歳の子供
 職業:魔法使い
 身分:ほぼ奴隷
 覚えている技:マッチぐらいの炎を手から出現させる

 チートどころか、最下層にもほどがあるだろってぐらいのスタートだった。
 アニメや小説にありがちの女神の庇護とかはもちろんない。ありがたいのは、ここの使用人たちが割と優しいということぐらいだ。着ている物も半袖から、長そでにランクアップしたし……いや、このレベルで喜ぶのはやめよう。なんか、自分が置かれている状況がハードモードすぎて少しのことがものすごい幸福に思える脳みそになりつつある。
「バン、よく見ていてくださいね」
 広い建物中で、サモナーは俺にそう言った。
 俺はサモナーの弟子ということになったらしく、毎日サモナーと一緒に過ごすことになった。といっても、サモナーはこの建物と屋敷の短い距離を往復ぐらいしかしない。この建物は、嫌いだ。現代の肉処理工場のような無機質な清潔さがあり、なんだか背筋が寒くなる。そして、ここで行われていることも肉処理工場とさほど変わりがない。
「――世界は創作された。呼び声に答えよ。あなたを、私が作った」
 相変わらずの呪文の後に、ドラゴンが現れる。
 サモナーがサシャを脅すために出した竜よりも小柄で、全身の鱗が金色に輝いている。もちろん、本物の金ではないので鱗の輝きは鈍い。それでも、こんなモンスターが空を飛んでいたら、人は「何かいいことが起こるかもしれない!」と興奮するだろう。中国人がかつて鳳凰に抱いた幻想が、このドラゴンを見た俺にはよく理解できた。
「よし、かかれ!」
 サモナーが呼び出したドラゴンは、剣や盾を持った人間たちに襲われてしまう。ドラゴンは、それに対して叫び声を上げるが派手な抵抗はしなかった。サモナーはモンスターを呼び出しては殺され、呼び出しては殺され、をずっと続けている。
 たぶん、辛いだろう。
 サモナーは、自分が呼び出したモンスターにそれなりの愛着を持っていた。なのに、それを殺されて体の一部を素材にするたまだけに利用されて、こんなに辛いのに逃げ出せなくて。
「あの、師匠」
 気が付けば、俺は勝手に口を開いていた。
「ボクも師匠みたいな魔法を使えますか?」
 サモナーの重荷を軽くしたい、俺は心からそう思っていた。
「ダメです。召喚は消費する魔力が大きいから、君では死んでしまいますよ」
 優しげに笑ったサモナーは、子供になった俺からみると大きな大人に見えた。自分を絶対に守ってくれる――信頼できる大人。教師の俺は、生徒にちゃんとこういう風に思ってもらえているだろうか。
「そいつ、実験台にしないのかよ」
 剣を持った一人の男が口を開いた。
「サウエル様が言ってたぜ。魔力がなくとも魔法が使える、魔術っていうのをあんたは研究してるんだろ。それを、そのチビに使えば今よりも金儲けできるぜ」
 嫌な奴だ、と俺は思った。
 サモナーが召喚したモンスターを狩るのは、近くの村から集められた人々ではない。普段は野生のモンスターを狩ることを生業としている狩人みたいな人たちだという。彼らはサウエルに雇われて、サモナーの無抵抗なモンスターを楽しげに殺していく。
「……たとえ、魔力を増量しても召喚をおこなえるほどの魔力は得られません。無理をしたらバンが死んでしまいます」
「死んでもいいじゃねぇか」
 狩人は、特に感情も込めずに行った。
「魔法使いのしかも、何の役にも立たないチビなんて死んでもいいじゃねぇか。誰も困らないし、むしろ魔法使い嫌いには感謝されるぜ」
「……命を。命をなんだと思っているんですか!!」
 サモナーの怒り反応したかのように、剣を突き立てられて息も絶え絶えなドラゴンが吠えた。その咆哮に、その場にいた全員が腰を抜かす。
 ――サモナーをのぞいては。
「たとえ、姿形が違っても生きているんです。生きたいんです!!私が呼び出した子たちだって、全員がそう望んでいたんです。……見せて、あげましょうか」
 すっと、サモナーの顔から表情が消える。
 やばい、と思った俺はサモナーを後ろから羽交い絞めにしようとした。だが、身長差があって上手くはいかない。
「離して……離してください!!
 だが、サモナーは暴れまわる。
 そしてドラゴンは再び吠えて、翼をはためかせた。
 逃がすな、と狩人たちは叫ぶ。
 だが、ドラゴンが翼で発生させた風圧のせいで誰も近づくことができない。気が付くと、ドラゴンは天井を破って外に逃げ出していた。結構立派な建物のはずだったのに、数秒もかからずに開いた大穴。ドラゴンの隠れた凶暴性とあまりの破壊力に、その場にいた全員が呆然としていた。
「はははっ。ここ、明日から暫く使えないな」
 誰かの乾いた笑い声が響いた。
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