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第一部 失業したおっさんがVRMMOで釣りをしていたら伯爵と呼ばれるようになった理由(わけ)

プチオフ会

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「今日はお招き頂きありがとうございます。
 いつも妻がお世話になっております。山中と申します。」
春子の旦那は丁寧に挨拶した。
「いえ、こちらこそ春子さんには、いつも美味しいコーヒーを頂いてます。
時野です。」
「あなたが時野さんですか。」
2人は、握手を交わす。



段々と握る手に力が入り、
「あ、あの山中さん、痛いんですが。」
「いえね、波田運輸サービスに、女ったらしが出入りしてるってのを
聞いてまして、心配で、心配で・・・。」
更に力が入る。
「ちょっと、あなた。」
春子が止めに入って、ようやく握手が終了した。
「すまない春子。心配で心配で夜も眠れなくて・・・。」
「山中さん、そんな心配されずとも。」
波田がなんとか宥めようとする。
「社長さん、最近ね、春子の奴が、時野さんの話ばかりするんですよ。」
「なっ、違いますよ?ネタにしてるだけですから。」
「なんか、クールタイム食らったとか、釣りばっかりしてるとか・・・。」
「先輩、完全にネタにされてますね。」
「だな・・・。」
「そんなに心配なら、一緒のゲームされたらどうですか?」
珍しく、常磐がナイスフォローをした。
「そこは、譲れないんですよ常盤さん。」
「常磐君、この人はね。ガンマニアなの。」
「銃ほど素晴らしい物は、ありませんよっ!時野さんよかったらご一緒に。
 私のダブルハンドで蜂の巣にしてさしあげますよ?」
「け、結構です・・・。」
「山中さんは、2丁拳銃なんですか?」
「ええ。」
「似たもの夫婦ですね。」
「常磐、どういう意味だ?」
「春子さんは、双剣なんですよ。先輩知りませんでした?」
「まあ、俺、冒険しないからな。」
「春子さんが、旦那さんと一緒にやってあげたらどうなんです?」
「私は、剣が好きなの。」
「なるほど、ちなみに山中さんは、何のゲームですか?」
「ガンフィールド12です。」
「うちのゲームですね。」
「ああ、どっかで聞いたと思ったら、そういうことか。」
「えっ!ガンメタリアにお勤めで?」
「はい、中途採用ですけど。」
「あの会社は、素晴らしい会社です。銃の事を本当にわかってる。」
「社内は、モデルガンだらけです。」
「夢のような会社ですね。私のコレクションは結婚する時に・・・。」
「何?結婚する時の条件だったでしょ?」
「なるほど、ガンコレクションより春子さんを取ったわけですね。」
時野が言った。
「ええ、まあ。」

自己紹介も軽く終わり、プチオフ会が始まった。
「僕は、春子さんとはβの時からの知り合いです。」
常磐が言った。
「えっ、そうなのか?」
時野だけが驚いた。
「じゃあ、その縁で同じギルドに?」
「いえ、僕はヴォルグさんに誘われてギルドに入りました。」
「春子さんは?」
「私は立ち上げ人の1人だから、既に入ってたわ。」

ギルド「鋼の翼」は、波田と春子が2人で立ち上げたギルドだった。
時野が保証人となった借金も滞りなく返済終了し、一息ついた頃、
春子が、波田をゲームに誘った。
時野と違って、RPGはそれなりに好きだった波田は、誘われるままに
ゲームを始めた。
あまり、ONできない波田は、野良PT等でギルドに誘われるのが億劫になり、
春子とギルドを立ち上げる事にした。
当初ギルドは5人のメンバーが必要だったが、波田が始めた頃は、
2人からに軽減されていた。

「ギルドに入って、春子さんがいたんでビックリしました。」
「私も社長がカラット君を連れて来たんでビックリしたわ。
 ギルドとかそういうの嫌いでしょ?」
「誘いとかそういうのが、面倒になっちゃって。ヴォルグさんに聞いたら、
 名前だけのギルドって聞いたんで、入っちゃいました。」
「ミラちゃんは?」
「私が連れて来たの。ミラちゃんは、ゲームと言うよりVR機がどんなものか
 興味あっただけみたい。」
「冒険とかしてるんですか?いつも2人で話してますが?」
「時野さんに言われたくはないんですが?」
「・・・。」
「まあ、時野より冒険してない奴なんて、存在しないと思うぞ。」
「僕もそう思います。」
「時野さんは、まったく冒険しない人なんですか?」
山中が聞いてきた。
「え、ええ。殆ど座ってます。」
「素晴らしい、是非一緒にガンフィールドをやりませんか?
 時野さんなら、いいマ・・・仲間になれそうです。」
「今、的って言おうとしましたよね?」
「そ、そんな事は・・・。」
「ねえ、あなた。モデルガンとか仕入れて時野さんを襲ったりしないでよね?」
「その手があったかっ!」
バシンっ!
春子は、旦那の頭を叩いて突っ込んだ。

「それにしても美緒ちゃんを見てきて、女の子がいいなあと思ってたんだけど
 男の子もいいかな~」
春子は、屑串をパクパクと食べている常磐を見ながら言った。
「僕は子供じゃありませんよ~っ」
常磐が抗議した。
「あなたは、どっちがいいの?」
「俺は春子がいればいいよ。」
「アツアツですね・・・。」
「ごちそうさまです。」
常盤と時野が言った。
「娘が居たら可愛いんじゃない?」
「駄目だ!世の中には時野さんのような獣がウジャウジャ居る。
 春子だけでも、心配で一杯なのに、娘まで居たら・・・。」
「俺は獣か・・・。」
「当分、無理そうね・・・。時野さん息子って父親的にどう?」
「さあ・・・、10年近く会ってないし。」
「えっ。」
「まあ相手には、新しい家庭があるから、こいつなりに気を使ってるんですよ。」
波田が、春子に説明した。

ゲームの話は、最初だけで最後は、世間話で花を咲かせたプチオフ会となった。
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