ファーストキスを奪った親友は、理想の筋肉の持ち主だった

華翔誠

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配役余波

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「母ちゃん、学校へ苦情の電話を入れてくれっ!」
勇気は家に帰ると早速、母親に助けを求めた。
「何なのいったい?」
いくら親子といえど、突然、言われたら何のことかわからない。
「文化祭の劇の役だよ。」
「ああ、もうそんな時期かあ。さやの時は確か・・・木だったか。」
「ちがいますぅ。木の精ですぅ。」
ソファーで寛いでいた、さやが言った。
「気のせい?」
勇気が首をかしげながら言った。
「気の精霊だっ!」
さやは、弟に対して強く言った。
「で、勇気は、何をやらされるんだい?」
「お姫様・・・。」
「主役じゃないかっ!」
母親はパアっと明るい顔になって喜んだ。
こ、この弟は、昨年、準ミスをやらかしたと思ったら、今度はお姫様役だと?
さやは思った。
同じ学校に同年代に居なくてよかったと。
中学高校と入れ替わりの為、姉弟が同時期に重なることはなかった。
「姉より、可愛い弟など存在せぬわっ!」
「何言ってんの、さや、ここに存在してるでしょ?」
「くっ、あんたそれでも私の母親かっ!」
「子供の容姿なんて、親がどうこう出来る問題じゃないでしょ?」
「勇気のように、目が父親似だったら良かったのに・・・。」
さやと勇気の父親は、普段はメガネを掛けており、平々凡々な顔立ちであるが、メガネを取ると目はパッチリ開いて可愛らしい目をしていた。
「あのねえ、私のキツ目も時代によっちゃあ、美人って言われる事もあるのよ。」
「今は、その時代じゃないっ!」
「もう、やさだって、そこそこ美人なんだから、弟に嫉妬しないの。」
「そこそこ?そこそこって言いました?」
「とりあえず面倒くさい、お姉ちゃんはほっておきましょう。」
「これだっ!私の扱いはいつも・・・。」
で、ほっておかれるさや。
「で、お姫様役いいじゃない?」
「俺は男だ!」
「どうやって決まったの?」
「投票で・・・。」
「じゃあ、仕方ないわね。」
「えー・・・。」
「ちょっと待て、弟。」
「何だよ、姉ちゃん。」
「投票って言ったか?」
「うん。」
「真斗が居るんだろ?お前のクラスは?」
「真斗が王子様役だよ。」
「何故、お前がお姫様役に選ばれる?」
「知らねえよ。」
「こんなに可愛いんだから、勇気が選ばれても当然でしょう?」
「あのねえ、母さん。女子高生なんて半分は妬みで出来てるのよ。投票するなら自分の名前を書くに決まってるでしょ?」
「他の女子にやらせるくらいなら、勇気にって思わないの?」
「なるほど・・・。でもなあ。」
「まだなんかあるの?」
「一部の女子が勇気に入れたとしても男子票は?」
「そう言えば、そうね・・・。」
「わかった、担任の不正だ。票数とか発表してないし。だから母ちゃん、電話してっ。」
「嫌よ、母さんも勇気のお姫様姿みたいし。」
「関係者なら入場できるから、私も見に行こうっと。」
「何でだよっ!」
勇気の叫び声が空しく響いた。

職員室で一人、担任は、投票用紙を処分するべく最終チェックを行った。
一部の女子が、緑屋に投票するのはわかる、うん。
字を見れば男子か女子かは一目瞭然だった。
それ故に・・・。
一部の男子が、王子様役に自分の名前を書いて、お姫様役に緑屋の名前を書いているのは・・・・。
担任は頭を悩ませた。
「この投票用紙は、誰の目に止まらぬように、完全に消去せねば・・・。」
担任は、全投票用紙を学校のシュレッダーにかけると、紙くずを半分、家に持ち返って処分した。
これで復元することは不可能だろう。
生徒たちの秘密を守るために、徹底して事に当たった。

ちなみに、真斗の投票用紙には、王子様に勇気の名前が、お姫様は誰でもいいですと書かれていた。
勇気の投票用紙は、王子様役が真斗の名前で、お姫様役は誰でもいいですと書かれていた。
浩一が自分の名前と意中の女子の名前を書いていたのは言うまでもない。
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