51 / 81
第3章 ゆるやかな流れの中で
天使の真実(5)
しおりを挟む「学院は政治家や財界のご子息が多いそうです。
ですからむしろそのような山奥の方が都合がいい事もあるのですよ。
政治的なスキャンダルに親御さんが巻き込まれても、院内にいれば子供は守られますし、悪い輩にそそのかされる事もない、そして誘拐などの犯罪に巻き込まれるような事も起こらない。
より確実な自分の後継者を作るなら学院に任せておけば、ほぼそれは約束されたようなものですから受験をするにもなかなか狭き門を潜らなければならないそうです。
家柄も大事ですが、学力の方は何と言っても小学校からの十二年間しっかりと縦横の社会の厳しさを肌で感じながら、勉学の方もみっちり学習するのですから伸びて当然です。塾などには通えませんが、課外では年長者が下級生の世話や勉強も見てやるそうです。歳が近い者に習うとお互いにいい刺激になり、相乗効果で学力がぐんと伸びるそうです。
瞬もこんな歳の離れたおじさんからお勉強を教わるより、歳が近いお兄さん達からお勉強を教えて貰いたかったですよね」
「は!?
いえ!べっ!べつにそんな事は思ってません!
チューターの授業はとってもわかりやすいです!
それにおじさんだなんて!思った事もありません!」
瞬はすっかり榊の話に聴きいっていた。
その学院の中にもしも自分がいたとしたらと、瞬の脳内では同じ年頃の子や上級生のお兄さん達と過ごす楽しい寮生活が再現されていたのだった。
勉強でわからない事があれば同じ学年の子や寮の仲間、そしてそれでもわからなければ上級生に質問すれば教えてくれる。
そんな子供達だけのコミュニティーがあれば確かに外に出なくても不服だなんて思わないかもしれないと、ちょっとだけ羨ましく思ってしまったのだった。
そんな自分の心の中を、また榊に見透かされたように突然自分に話を振られてしどろもどろになってしまう。
別に榊がおじさんだなんて思った事は一度だってない。
瞬に比べたら大人の男の人だとは思うけれど、父や有栖川に比べれば断然若くお兄さんでも通じると思う。
だからそれは嘘偽りのない瞬の素直な気持ちだった。
考えようによってはそのお兄さんの時間をこの三年もの間、独り占めして来た自分は何て幸せ者だとも思う。
「本当ですか?
それは嬉しいですね。
嘘でもそう言っていただけるのは嬉しい事です」
「嘘じゃありません!
ほんとにそんな事思った事もありませんから!」
榊だって本気で思っているわけではない。
自分の事をおじさんと言ったのは、余りに瞬が何も疑いを持たず、榊の話を素直に聴き入っていたから、ちょっとからかってみただけだった。
瞬とはもし自分が学院で同じ時を過ごせたとしてもそれはたった一年だけの事であり、榊と瞬の年の差は小学一年の瞬と最上級生の榊という立場がギリギリ二人が学院で過ごせた一年になる。
だからどんなにその先の成長した瞬の天使のような様を見たくても叶わなかった事であろう。
そう思えば瞬が学院なんかに入れられていなくて良かったなどとも思ってしまう。
瞬という天使を三年もの間、独占できた事は榊にとってもきっと生涯忘れられない出来事になると思うのだった。
「本当に!ホントにですから!」
さっきまで泣いていたはずの瞬が、頬を赤らめ一心に取り繕う姿が可愛いらしかった。
このままここで押し倒してしまいたくなる衝動にもかられる。
だが、こんな寒空の下で瞬を裸に剥いてしまったら風邪を引かしてしまうのが関の山だった。
部屋に戻ってから今日はまだしていない後ろの孔に指を入れて、そこをいっぱい解して逝かせてやろうかとも思う。
瞬は自分ではまだそれを理解していないだろうが、瞬はもうとっくに後ろの孔だけで逝ける事が出来る身体にもなっていた。
それも前で爆ぜる事なく快感を感じ、感覚だけで逝ける身体になっていた。
堂島もその全てを画面でも確認しているはずだった。
後はどう仕上げをするかは、堂島の心ひとつだと榊は考えていた。
一生このまま瞬には射精という男の機能を封印したいのならそれはそれで構わない。
メス逝きだけでも出すことを知らない瞬なら耐えられるかもしれない。
だがあえて前で逝くことを教えてあげるのも、主人としては最高の役割だと思うと提案するつもりではいた。
そうすれば瞬は間違いなく堂島のモノとして身も心も一気に堕ちる。
今まで榊が精魂込めて育て上げた役もこれで全てが終わりになるのだった。
腕の中で耳まで赤く染めた瞬のうなじに鼻を埋めると、子供特有の高い体温を感じる。
柔らかなサラサラの黒髪が榊の鼻腔をくすぐった。
瞬の匂いは甘い花の香りがしていた。
それは榊が毎日身体の隅から隅まで手入れしてやっている天使のものに違いなかった。
11
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる