優しい時間

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第3章 ゆるやかな流れの中で

天使の真実(5)

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「学院は政治家や財界のご子息が多いそうです。
 ですからむしろそのような山奥の方が都合がいい事もあるのですよ。
 政治的なスキャンダルに親御さんが巻き込まれても、院内にいれば子供は守られますし、悪い輩にそそのかされる事もない、そして誘拐などの犯罪に巻き込まれるような事も起こらない。
 より確実な自分の後継者を作るなら学院に任せておけば、ほぼそれは約束されたようなものですから受験をするにもなかなか狭き門を潜らなければならないそうです。
 家柄も大事ですが、学力の方は何と言っても小学校からの十二年間しっかりと縦横の社会の厳しさを肌で感じながら、勉学の方もみっちり学習するのですから伸びて当然です。塾などには通えませんが、課外では年長者が下級生の世話や勉強も見てやるそうです。歳が近い者に習うとお互いにいい刺激になり、相乗効果で学力がぐんと伸びるそうです。
 瞬もこんな歳の離れたおじさんからお勉強を教わるより、歳が近いお兄さん達からお勉強を教えて貰いたかったですよね」

「は!?
いえ!べっ!べつにそんな事は思ってません!
チューターの授業はとってもわかりやすいです!
 それにおじさんだなんて!思った事もありません!」


 瞬はすっかり榊の話に聴きいっていた。

 その学院の中にもしも自分がいたとしたらと、瞬の脳内では同じ年頃の子や上級生のお兄さん達と過ごす楽しい寮生活が再現されていたのだった。

 勉強でわからない事があれば同じ学年の子や寮の仲間、そしてそれでもわからなければ上級生に質問すれば教えてくれる。

 そんな子供達だけのコミュニティーがあれば確かに外に出なくても不服だなんて思わないかもしれないと、ちょっとだけ羨ましく思ってしまったのだった。

 そんな自分の心の中を、また榊に見透かされたように突然自分に話を振られてしどろもどろになってしまう。
 別に榊がおじさんだなんて思った事は一度だってない。
 瞬に比べたら大人の男の人だとは思うけれど、父や有栖川に比べれば断然若くお兄さんでも通じると思う。
 だからそれは嘘偽りのない瞬の素直な気持ちだった。
 考えようによってはそのお兄さんの時間をこの三年もの間、独り占めして来た自分は何て幸せ者だとも思う。

「本当ですか?
それは嬉しいですね。
嘘でもそう言っていただけるのは嬉しい事です」

「嘘じゃありません!
ほんとにそんな事思った事もありませんから!」

 榊だって本気で思っているわけではない。
自分の事をおじさんと言ったのは、余りに瞬が何も疑いを持たず、榊の話を素直に聴き入っていたから、ちょっとからかってみただけだった。

 瞬とはもし自分が学院で同じ時を過ごせたとしてもそれはたった一年だけの事であり、榊と瞬の年の差は小学一年の瞬と最上級生の榊という立場がギリギリ二人が学院で過ごせた一年になる。
 だからどんなにその先の成長した瞬の天使のような様を見たくても叶わなかった事であろう。

 そう思えば瞬が学院なんかに入れられていなくて良かったなどとも思ってしまう。

 瞬という天使を三年もの間、独占できた事は榊にとってもきっと生涯忘れられない出来事になると思うのだった。

「本当に!ホントにですから!」

 さっきまで泣いていたはずの瞬が、頬を赤らめ一心に取り繕う姿が可愛いらしかった。

 このままここで押し倒してしまいたくなる衝動にもかられる。

 だが、こんな寒空の下で瞬を裸に剥いてしまったら風邪を引かしてしまうのが関の山だった。

 部屋に戻ってから今日はまだしていない後ろの孔に指を入れて、そこをいっぱい解して逝かせてやろうかとも思う。

 瞬は自分ではまだそれを理解していないだろうが、瞬はもうとっくに後ろの孔だけで逝ける事が出来る身体にもなっていた。

 それも前で爆ぜる事なく快感を感じ、感覚だけで逝ける身体になっていた。

 堂島もその全てを画面でも確認しているはずだった。

 後はどう仕上げをするかは、堂島の心ひとつだと榊は考えていた。

 一生このまま瞬には射精という男の機能を封印したいのならそれはそれで構わない。

 メス逝きだけでも出すことを知らない瞬なら耐えられるかもしれない。

 だがあえて前で逝くことを教えてあげるのも、主人としては最高の役割だと思うと提案するつもりではいた。

 そうすれば瞬は間違いなく堂島のモノとして身も心も一気に堕ちる。

 今まで榊が精魂込めて育て上げた役もこれで全てが終わりになるのだった。

 腕の中で耳まで赤く染めた瞬のうなじに鼻を埋めると、子供特有の高い体温を感じる。

 柔らかなサラサラの黒髪が榊の鼻腔をくすぐった。

 瞬の匂いは甘い花の香りがしていた。

 それは榊が毎日身体の隅から隅まで手入れしてやっている天使のものに違いなかった。




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