カノン

暦海

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聞きたかったこと

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「……そう言えば、ハイノ。ずっと、聞きたかったことがあるんだけど」
「……うん、どうしたの?」
「……わたしにも、教えてほしいな。ハイノが、今までずっと抱えてきたこと。この前、わたしがお話ししたように……今度は、ハイノが話してほしい」
「……エルナ」


 それから、少し経過して。
 ふと、そう口にするエルナ。だけど、言葉の通り彼女の中ではいつか聞こうと思っていたことがひしひしと伝わって。……ほんと、お人好しだなぁ。エルナが最も気にかけるべきは、言わずもがな彼女自身……なのに、こんな時にまでぼくのことを……うん、それなら――

「……うん、分かった」

 そう、ポツリと口にする。……本当は、言わないつもりだった。ぼくの過去で……きっとお世辞にも幸せとは言えないあんな過去で、エルナに辛い思いをしてほしくなかったから。

 でも、こうなってはそうもいかない。これが――お世辞にも楽しいとは言えないあの過去を聞くことが、他でもないエルナの望みなら……もう、言わないわけにはいかないから。だから――




「……そう、だったんだ」
「……うん、聞いてくれてありがとう、エルナ」


 それから、10分ほど経て。
 そう、ポツリとつぶやくエルナ。その表情は、まるで自分のことのように本当に辛そうで……全く、お人好しだなぁ。一番辛いのは、どう考えてもエルナ自身のはずなのに。


「……ごめんね、ハイノ。ハイノが……いや、少しくらいは分かってたつもりだけど……でも、そんなにも辛い思いをしてきたなんて、わたし全然知らなくて」
「……エルナ」

 すると、さっきよりもいっそう辛そうな表情かおでそう口にするエルナ。……うん、確かに辛かった。きっと、客観的に見てもお世辞にも幸せとは言えないくらいには酷い過去だと思う。だけど――

「……でも、ぼくは良かったと思うんだ。だって……だからこそ、ぼくはエルナと出逢えたんだから」
「……っ!! ……ハイノ」

 そう、ぎゅっと手を握り告げる。そう、これは紛れもなく本心。もしも、ぼくが仮にいわゆる人並みの幸せな人生を送っていたら……あの時、自分の生命いのちを懸けてまで彼女を助けようとはきっと思わなかった。何もかもに絶望していたからこそ、せめて誰かを助けて最期を迎えるのも悪くないと思えた。だから……もし、あの時までのぼくが幸せだったなら、そもそもエルナと出逢えてもいなかった。
 ……まあ、そもそもが幸せだったのなら出逢えなくてもその後も幸せだったのかもしれないけど……でも、だとしてもいらない。エルナのいない幸せなんて……そんなの、全く以ていらないから。だから――


「……ありがとう、エルナ。ぼくと出逢ってくれて、ほんとに……本当に、ありがとう」
「……ハイノ……ううん、こちらこそ、ほんとに……本当に、ありがとう」

 そう、じっと瞳を見つめ告げる。すると、ややあってエルナの頬を雫が伝う。それでも、露に濡れいっそう輝く花のような笑顔で応えてくれた。



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