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春霞
確信
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「……あれ?」
翌日、昼下がりにて。
例によって桜の樹の下へ来たものの、そこに少女の姿はない。てっきりもう来ているものかと思ったけど……まあ、別に約束していたわけじゃないし、それに後からひょっこり現れるかもしれないしね。
だけど、彼女は姿を見せなかった。……まあ、こんな日もあるよね。あまりにもいるのが当たり前過ぎて、少し感覚が麻痺していたのかもしれない。また明日には会えるだろう。
だけど、翌日も――そして更に翌日も、そのまた翌日も少女は姿を見せなかった。……誰だろう、直観で分かるなんてほざいていた愚か者は。
……でも、ほんとにどうしたのだろう。もちろん、来るも来ないも彼女の自由だし、そもそも実際にはたった数日来ていないだけ。僕が一人大袈裟に慌てているだけなのかもしれない。だけど――
……彼女はもう、二度とここには現れない――どうしてか、恐怖にも似たそんな感覚が僕を捕らえて離さないんだ。
「……今日は、来てくれるかな」
翌日、同じような昼下がりのこと。
希望的観測に近いそんな呟きを洩らしつつ、長い石造りの階段を上がり鳥居の前へと到着する。そんな僕は今日、一つ心に決めていることがあった。
それは、もし今日会えなければ――もう、彼女に会うことを諦めるということ。尤も、たかだか数日会えないだけで大袈裟だと思われるかもしれないし、自分でもそう思う。それでも――
……今日会えなければ、きっともう二度と会えることはない――どうしてか、そんな悲観的な推測を確信に近い形で抱いていたから。
……怖い。この場所に……いつもと同じこの空間に足を踏み入れるのが、震えるほど怖い。……それでも――
どうにか足の竦みを抑え、鳥居の中へと一歩を踏み出し聖域の中へ。そして、高鳴る鼓動をどうにか抑えつつ一歩、また一歩と歩を進めていき、桜の樹の下へと――
「…………え?」
刹那、視界に映った光景に目を疑った。何故なら――
「……なんで、霞なんてかかって……」
どうしてか、目の前の桜の樹がぼんやり霞んで見えるから。こんなこと、今まで一度も――
(――ごめんね、湖春)
「…………え?」
卒然、霞の向こうから届いた声。それはまるで覚えのない、包み込むように優しく暖かな声で。だけど、声の主が誰かなんて疑う余地は微塵もなかった。
翌日、昼下がりにて。
例によって桜の樹の下へ来たものの、そこに少女の姿はない。てっきりもう来ているものかと思ったけど……まあ、別に約束していたわけじゃないし、それに後からひょっこり現れるかもしれないしね。
だけど、彼女は姿を見せなかった。……まあ、こんな日もあるよね。あまりにもいるのが当たり前過ぎて、少し感覚が麻痺していたのかもしれない。また明日には会えるだろう。
だけど、翌日も――そして更に翌日も、そのまた翌日も少女は姿を見せなかった。……誰だろう、直観で分かるなんてほざいていた愚か者は。
……でも、ほんとにどうしたのだろう。もちろん、来るも来ないも彼女の自由だし、そもそも実際にはたった数日来ていないだけ。僕が一人大袈裟に慌てているだけなのかもしれない。だけど――
……彼女はもう、二度とここには現れない――どうしてか、恐怖にも似たそんな感覚が僕を捕らえて離さないんだ。
「……今日は、来てくれるかな」
翌日、同じような昼下がりのこと。
希望的観測に近いそんな呟きを洩らしつつ、長い石造りの階段を上がり鳥居の前へと到着する。そんな僕は今日、一つ心に決めていることがあった。
それは、もし今日会えなければ――もう、彼女に会うことを諦めるということ。尤も、たかだか数日会えないだけで大袈裟だと思われるかもしれないし、自分でもそう思う。それでも――
……今日会えなければ、きっともう二度と会えることはない――どうしてか、そんな悲観的な推測を確信に近い形で抱いていたから。
……怖い。この場所に……いつもと同じこの空間に足を踏み入れるのが、震えるほど怖い。……それでも――
どうにか足の竦みを抑え、鳥居の中へと一歩を踏み出し聖域の中へ。そして、高鳴る鼓動をどうにか抑えつつ一歩、また一歩と歩を進めていき、桜の樹の下へと――
「…………え?」
刹那、視界に映った光景に目を疑った。何故なら――
「……なんで、霞なんてかかって……」
どうしてか、目の前の桜の樹がぼんやり霞んで見えるから。こんなこと、今まで一度も――
(――ごめんね、湖春)
「…………え?」
卒然、霞の向こうから届いた声。それはまるで覚えのない、包み込むように優しく暖かな声で。だけど、声の主が誰かなんて疑う余地は微塵もなかった。
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