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本能
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話によると、どこぞの居酒屋で呑んでいたら近くの客と喧嘩になり、それで酔った勢いで手にしていた酒瓶で相手の頭を強打したとのこと。当然、周囲には店員も客もいるためすぐさま通報され現行犯として逮捕……ほんと、どこまでも救いようのねえ両親だ。
――それからは、更なる地獄の日々だった。まず、当然ながら住み込みの話はなくなった。あのボロアパートからも追い出され、当時の仕事もクビになった。とにかく職を探すも、これまた当然ながら受け入れ先なんてあるはずもなく。
だけど、それだけならまだ良かった。いや、良くはないが……いっそう俺を苛んだのは、とにかく四面楚歌の日々。街を歩くだけで罵声を浴びせられ、石を投げつけられ……全く、俺が何をしたって……いや、当然か。なにせ、俺はあの救いようもない犯罪者の穢れた子なんだから。
――すると、そんなある日のこと。どこぞの廃虚に一人蹲っていた俺に話し掛けてきたのは、見るからに喜悦を湛えた笑みを浮かべる厚化粧の若い女。よもや、こんなとこまで罵詈雑言を浴びせにくる奴がいるのかともはや呆れかけたが、そういうわけじゃないらしい。そもそも、何とも珍しいことに彼女は俺のことを知らなかったらしく……いや、別にそこまで珍しくもないか。よくよく考えれば、誰も彼もが俺なんかのことを知ってるなんて思う方が傲慢だし。
ともあれ、だったら何の用かと訝しんだが……どうやら、俺自身――正確には、俺の体が目当てとのこと。どうやら、俺の容姿が随分とお気に召したらしい。……そう言えば、以前から容姿はやたら褒められてたっけ。だが、よもやそれがこんなところで生きようとは。
ともあれ、何も――仕事も、金も、人権すらもない俺にもはや失うものなんてない。強いてあるとすれば、それでもみっともなく生に縋ろうとするこの卑しい本能だけ――もはや、自分を汚すことに抵抗なんてなかった。
――それからは、更なる地獄の日々だった。まず、当然ながら住み込みの話はなくなった。あのボロアパートからも追い出され、当時の仕事もクビになった。とにかく職を探すも、これまた当然ながら受け入れ先なんてあるはずもなく。
だけど、それだけならまだ良かった。いや、良くはないが……いっそう俺を苛んだのは、とにかく四面楚歌の日々。街を歩くだけで罵声を浴びせられ、石を投げつけられ……全く、俺が何をしたって……いや、当然か。なにせ、俺はあの救いようもない犯罪者の穢れた子なんだから。
――すると、そんなある日のこと。どこぞの廃虚に一人蹲っていた俺に話し掛けてきたのは、見るからに喜悦を湛えた笑みを浮かべる厚化粧の若い女。よもや、こんなとこまで罵詈雑言を浴びせにくる奴がいるのかともはや呆れかけたが、そういうわけじゃないらしい。そもそも、何とも珍しいことに彼女は俺のことを知らなかったらしく……いや、別にそこまで珍しくもないか。よくよく考えれば、誰も彼もが俺なんかのことを知ってるなんて思う方が傲慢だし。
ともあれ、だったら何の用かと訝しんだが……どうやら、俺自身――正確には、俺の体が目当てとのこと。どうやら、俺の容姿が随分とお気に召したらしい。……そう言えば、以前から容姿はやたら褒められてたっけ。だが、よもやそれがこんなところで生きようとは。
ともあれ、何も――仕事も、金も、人権すらもない俺にもはや失うものなんてない。強いてあるとすれば、それでもみっともなく生に縋ろうとするこの卑しい本能だけ――もはや、自分を汚すことに抵抗なんてなかった。
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