最後の頁で君を待つ

ArcaWorks

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最終章:空白の続き

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 目の前に広がるのは、静かで、穏やかな、緑に満ちた庭だった。
鳥の声も、風の音も、すべてがゆっくりとした鼓動のように響く。

ニエルは、一歩ずつその庭を歩いていた。手には、あの銀の鍵。
気づけば、どこか懐かしい小道を辿っていた。

やがて、古びた小屋が現れた。彼の記憶の片隅にずっと残っていた場所。

幼い頃、夢の中で何度も訪れた気がする。

扉の前で足を止める。

そして、そっと鍵を差し込む。

カチリ、と音がして、扉が開いた。

中には誰もいない。けれど、どこかで誰かが微笑んでいるような気配がした。

「……ここは、もう“君の記憶”だったんだね」

ニエルはぽつりと呟く。

初めてその言葉が口から漏れた瞬間、全てが繋がった気がした。

終わりを迎えた世界の“最後の夢”。

ふと、小屋の奥にある椅子に目をやると、そこに何かが置かれていた。

一冊の本。

”名も知らぬ誰か”が残した、本。

ニエルはそれを開いた。

文字はほとんど消えかけていたが、最後のページに、たった一文だけが残されていた。


『最後のページで、君を待つ』


ニエルの目から、静かに涙がこぼれた。

彼はそっと本を閉じ、椅子に腰を下ろした。

もうこの世界に、誰も来ることはないかもしれない。

でも、それでもいい。

彼は選んだのだ。

終わらせずに、残ることを。

記憶の番人として、この箱庭で、誰かの心に触れるその日まで――




空は、紫がかった赤に染まり始めていた。

空白のページにはうっすらと文字が浮かび始めている。

風が、優しく草木を揺らす。

少年は、そっと目を閉じる。

そして、祈る。

この記憶が、いつか誰かに届きますように。

この世界が、たとえ誰にも知られなくても、決して孤独ではありませんように。




――Arca Hortus.
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