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今夜、迎えに行きます……。黒猫のモグ、僕の友達。
猫 又
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病院の屋上で大倉敦子は一人景色を眺めている。そこへ雄太が階段を上り姿を見せた。
敦子は彼の方を見て、髪をかき上げた。爽やかな風が屋上を駆け抜けている。
「あれ、今日はあっちゃんいないのか・・・・・・・」雄太の目には敦子の姿が映っていないようであった。
敦子は自分は目の前にいる筈なのに、そんな事を呟く雄太を見て驚いた。
「俺がこの屋上に簡単な結界を張ったんや。俺らの声も姿もその坊主には見えへんはずや」その声のする方向にはあの青年の姿があった。彼は、まるで猫のように腰を下ろして、手を前足のように地面についている。
雄太は、屋上に敦子がいない事に少しがっかりした様子で、登ってきた階段を再び下って行った。
「ああ、貴方が・・・・・・。ゆうちゃんが飼っている猫って、黒猫って聞いたからまさかとは思ったけれど、猫又とはね」敦子は振り返り屋上の手すりに体重をかけた。
雄太はナースステーションに向かった、今までは入院している部屋に行かなくても必ず屋上に行けば敦子と話をする事ができた。照れ臭いこともあり敦子の入院している部屋の場所を聞いたことは一度もなかった。
「あ、あの・・・・・・、すいません・・・・・・」ちょうど雄太が入院していた時に特にお世話になった岡田という名の看護師の姿が目に入った。岡田は忙しそうであったが、勇気をだして声をかける。
「あら、前田君、久しぶり!最近は入院してこないから体元気になったのね」定期的な入退院を繰り返していた雄太は、看護師さん達にも名前を憶えられてしまっていた。彼はなんだか少しだけ恥ずかしそうな顔をした。彼女が言う通り以前と比べて雄太の体の調子は格段に良くなっていた。前のように咳き込んだりすることも無くなっていた。
「お久しぶりです、あの・・・・・・、この病院に入院している大倉敦子さんの病室を教えてもらえませんか?」雄太は有紀を振り絞って聞いた。
「おおくらあつこさん? ちょっと待ってね」彼女は何やらパソコンのキーボードを叩き出した。
「ごめんなさい、その名前の患者さんはこの病院には入院していないわよ」モニターに視線を残したまま彼女は結果を教えてくれた。
「えっ、そんなはずは・・・・・・、もしかして退院したとか!?」亡くなったという選択肢も頭の中にはあったが敢えてそちらは口にしないでいた。
「調べてみるね」カツカツとキーボードを叩く音が響いた。
「やはり、その記録もないわ・・・・・・」今度は雄太の顔を見た。
「そんな、でも確かに少し前までこの病院に入院していたんだよ」雄太は食い下がる。
「どうしたの?」少しベテランの看護師が奥から姿を現した。さきほど検索していたパソコンの画面をのぞき込む。
「いえ、雄太君がおおくらあつこさんて人が入院していないかって言うんですけれど、過去五年間の記録を遡ってみてもそんな名前はないんです」岡田は、ベテラン看護師の女性に説明をする。
「本当なんです。僕は何度もその女の子と屋上で話をしたんです」雄太の口調からは必死さが伝わってくる。
「屋上・・・・・・、おおくらあつこってまさか!?」ベテラン看護師の顔から血の気が引いた。
敦子は彼の方を見て、髪をかき上げた。爽やかな風が屋上を駆け抜けている。
「あれ、今日はあっちゃんいないのか・・・・・・・」雄太の目には敦子の姿が映っていないようであった。
敦子は自分は目の前にいる筈なのに、そんな事を呟く雄太を見て驚いた。
「俺がこの屋上に簡単な結界を張ったんや。俺らの声も姿もその坊主には見えへんはずや」その声のする方向にはあの青年の姿があった。彼は、まるで猫のように腰を下ろして、手を前足のように地面についている。
雄太は、屋上に敦子がいない事に少しがっかりした様子で、登ってきた階段を再び下って行った。
「ああ、貴方が・・・・・・。ゆうちゃんが飼っている猫って、黒猫って聞いたからまさかとは思ったけれど、猫又とはね」敦子は振り返り屋上の手すりに体重をかけた。
雄太はナースステーションに向かった、今までは入院している部屋に行かなくても必ず屋上に行けば敦子と話をする事ができた。照れ臭いこともあり敦子の入院している部屋の場所を聞いたことは一度もなかった。
「あ、あの・・・・・・、すいません・・・・・・」ちょうど雄太が入院していた時に特にお世話になった岡田という名の看護師の姿が目に入った。岡田は忙しそうであったが、勇気をだして声をかける。
「あら、前田君、久しぶり!最近は入院してこないから体元気になったのね」定期的な入退院を繰り返していた雄太は、看護師さん達にも名前を憶えられてしまっていた。彼はなんだか少しだけ恥ずかしそうな顔をした。彼女が言う通り以前と比べて雄太の体の調子は格段に良くなっていた。前のように咳き込んだりすることも無くなっていた。
「お久しぶりです、あの・・・・・・、この病院に入院している大倉敦子さんの病室を教えてもらえませんか?」雄太は有紀を振り絞って聞いた。
「おおくらあつこさん? ちょっと待ってね」彼女は何やらパソコンのキーボードを叩き出した。
「ごめんなさい、その名前の患者さんはこの病院には入院していないわよ」モニターに視線を残したまま彼女は結果を教えてくれた。
「えっ、そんなはずは・・・・・・、もしかして退院したとか!?」亡くなったという選択肢も頭の中にはあったが敢えてそちらは口にしないでいた。
「調べてみるね」カツカツとキーボードを叩く音が響いた。
「やはり、その記録もないわ・・・・・・」今度は雄太の顔を見た。
「そんな、でも確かに少し前までこの病院に入院していたんだよ」雄太は食い下がる。
「どうしたの?」少しベテランの看護師が奥から姿を現した。さきほど検索していたパソコンの画面をのぞき込む。
「いえ、雄太君がおおくらあつこさんて人が入院していないかって言うんですけれど、過去五年間の記録を遡ってみてもそんな名前はないんです」岡田は、ベテラン看護師の女性に説明をする。
「本当なんです。僕は何度もその女の子と屋上で話をしたんです」雄太の口調からは必死さが伝わってくる。
「屋上・・・・・・、おおくらあつこってまさか!?」ベテラン看護師の顔から血の気が引いた。
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