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かん子のある日 その後
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かん子は、車で母親と仲間たちを会場まで送っていた。
さわがしい車内。
かん子の好きな曲は次から次へと繰り広げられる会話のなかとても聞こえず、今日自分がこうやって送るはめになった出来事を思い出していた。
それは一週間ほど前のこと。
ある朝、母がいった。
「今度、披露会があるんだけれど、会場まで誰か送っていってくれないかしら」
母は運転ができない。免許をとろうとも思っていない。出かけるときには、誰かが送ってくれるのが当たり前だと思っている。
誰も返事はしない。
母だけでなく、もれなく仲間たちまで付いてくるのだから。家族なら一度は経験している、あの騒々しい車内。
披露会という特殊な状況もあるのだろうか。あのハイテンションな会話の中、とてもじゃないが運転をしたいとは誰も思わない。しかも行きも帰りもあるという特典付き。
兄の俊史の時には、あの素晴らしい容姿のせいか、いつにもましてハイテンションだったお仲間たちに、帰ってきた俊史の顔はげっそりしていた。
父親もいつもは母親のいいなりで溺愛しているが、この送迎だけは腰が重いようだ。
そんな中、兄の俊史から爆弾発言が出た。
「かん子がいけばいいんじゃない?せっかくだからご挨拶してくれば?」
かん子は、確かに母のサークル仲間の一人からお世話になっている。就職の口利きをしてもらったのだ。
すかさず父親も援護射撃をする。
「そうだな、かん子。ご挨拶しておいで」
うらみがましく兄俊史を見るが、当の本人は涼しい顔。
「じゃあ、かん子にお願いしようかしら。かん子!その日用事ある?」
母が聞くと、すかざす兄の俊史がかん子に代わって、勝手に返事をする。
「その日は、用事ないよな。かん子!」
こうしてかん子の送迎が勝手に決まって、今に至る。
無事、会場に着いた。
母親と仲間たちの後に、みんなの着物の荷物を山ほど持って、かん子が後に続く。
披露会は、チケット制になっている。といってもチケットは披露する自分たちで買い、見に来てくれる人たちに配るのだ。朝から午後までお昼を挟んで行われるため、チケットにはお昼の引換券が付いている。
受付で引換券を出すと、いなり寿司とお茶そして紅白のお饅頭まで付いてくる。
至れり尽くせりだ。
かん子は母親から2枚チケットをもらっているので、母親からさっそく引き換えるように言われた。初めの数回ほどは、午前中ぐらいは踊りを見ていたのだが、ここ最近は見ていない。
お仲間たちにお礼を言われながら、チケットを交換する。
「ありがとうねえ。悪いわねえ、デートの邪魔しちゃったんじゃない」
かん子にこの後、デートなどという予定が絶対入っていないことはわかっているはずなのに、世間話のついでかいつも言われる。
かん子は、いなり寿司・お茶・お饅頭をそれそれ2個ずつもらって、ほくほくしながら帰ることにした。
父親は、いつものように趣味の釣りに行った。
兄の俊史は、きっとまだベッドでごろごろしているか、優雅に居間でテレビを見ていることだろう。
俊史はモテるくせに、休日はほとんど家にいる。たまに友達と出かけるが、基本男とだ。彼女ぐらい作って家にいなければいいのにと思うが、自分もそうなので人のことは言えない。
母親が趣味で出かけるときには、お昼は毎回自分が担当となる。兄の俊史は、しかも食べたいもののリクエストをいう。それがめんどくさくて仕方がない。いくら顔がよくても、兄なんてうっとうしいだけだ。
おまけに弱みを握られてからは、いろいろ例えば読みたい本を買ってくることまで要求するようになった。
30万円を俊史に借りた後、やはり親に隠し事はいかがなものかと思いなおし、母親に言おうとした。それに英語の教材だし、きっと母親なら許してくれるかもと思ったのだ。
それなのに、かん子がいうより先に先に俊史に言われてしまった。
「母さん!かん子えらいんだよ。英語の教材を買って英語を勉強するって。僕も前から興味あったから、お金貸すことにしたんだ。僕も借りるしね」
両親に当たり前のように言っていた。これで、自分から言う機会が奪われてしまった。俊史の策略にまんまとはまってしまったかん子だった。
かん子の腕の中にはいなり寿司。兄の俊史も好物だし、これで今日のお昼はばっちりだ。送迎は、めんどくさいけれど、こんなご褒美もあるからうれしい。
そう思いながら、帰るためにホールのロビーを抜ける途中、視線を感じた。
普通なら視線を感じても、気にもしないのになぜかこの視線は無視できない。視線が突き刺さるようだ。どこから見ているのかはっきり分かる。
(いったい誰なの?なんなのよ~!)
さわがしい車内。
かん子の好きな曲は次から次へと繰り広げられる会話のなかとても聞こえず、今日自分がこうやって送るはめになった出来事を思い出していた。
それは一週間ほど前のこと。
ある朝、母がいった。
「今度、披露会があるんだけれど、会場まで誰か送っていってくれないかしら」
母は運転ができない。免許をとろうとも思っていない。出かけるときには、誰かが送ってくれるのが当たり前だと思っている。
誰も返事はしない。
母だけでなく、もれなく仲間たちまで付いてくるのだから。家族なら一度は経験している、あの騒々しい車内。
披露会という特殊な状況もあるのだろうか。あのハイテンションな会話の中、とてもじゃないが運転をしたいとは誰も思わない。しかも行きも帰りもあるという特典付き。
兄の俊史の時には、あの素晴らしい容姿のせいか、いつにもましてハイテンションだったお仲間たちに、帰ってきた俊史の顔はげっそりしていた。
父親もいつもは母親のいいなりで溺愛しているが、この送迎だけは腰が重いようだ。
そんな中、兄の俊史から爆弾発言が出た。
「かん子がいけばいいんじゃない?せっかくだからご挨拶してくれば?」
かん子は、確かに母のサークル仲間の一人からお世話になっている。就職の口利きをしてもらったのだ。
すかさず父親も援護射撃をする。
「そうだな、かん子。ご挨拶しておいで」
うらみがましく兄俊史を見るが、当の本人は涼しい顔。
「じゃあ、かん子にお願いしようかしら。かん子!その日用事ある?」
母が聞くと、すかざす兄の俊史がかん子に代わって、勝手に返事をする。
「その日は、用事ないよな。かん子!」
こうしてかん子の送迎が勝手に決まって、今に至る。
無事、会場に着いた。
母親と仲間たちの後に、みんなの着物の荷物を山ほど持って、かん子が後に続く。
披露会は、チケット制になっている。といってもチケットは披露する自分たちで買い、見に来てくれる人たちに配るのだ。朝から午後までお昼を挟んで行われるため、チケットにはお昼の引換券が付いている。
受付で引換券を出すと、いなり寿司とお茶そして紅白のお饅頭まで付いてくる。
至れり尽くせりだ。
かん子は母親から2枚チケットをもらっているので、母親からさっそく引き換えるように言われた。初めの数回ほどは、午前中ぐらいは踊りを見ていたのだが、ここ最近は見ていない。
お仲間たちにお礼を言われながら、チケットを交換する。
「ありがとうねえ。悪いわねえ、デートの邪魔しちゃったんじゃない」
かん子にこの後、デートなどという予定が絶対入っていないことはわかっているはずなのに、世間話のついでかいつも言われる。
かん子は、いなり寿司・お茶・お饅頭をそれそれ2個ずつもらって、ほくほくしながら帰ることにした。
父親は、いつものように趣味の釣りに行った。
兄の俊史は、きっとまだベッドでごろごろしているか、優雅に居間でテレビを見ていることだろう。
俊史はモテるくせに、休日はほとんど家にいる。たまに友達と出かけるが、基本男とだ。彼女ぐらい作って家にいなければいいのにと思うが、自分もそうなので人のことは言えない。
母親が趣味で出かけるときには、お昼は毎回自分が担当となる。兄の俊史は、しかも食べたいもののリクエストをいう。それがめんどくさくて仕方がない。いくら顔がよくても、兄なんてうっとうしいだけだ。
おまけに弱みを握られてからは、いろいろ例えば読みたい本を買ってくることまで要求するようになった。
30万円を俊史に借りた後、やはり親に隠し事はいかがなものかと思いなおし、母親に言おうとした。それに英語の教材だし、きっと母親なら許してくれるかもと思ったのだ。
それなのに、かん子がいうより先に先に俊史に言われてしまった。
「母さん!かん子えらいんだよ。英語の教材を買って英語を勉強するって。僕も前から興味あったから、お金貸すことにしたんだ。僕も借りるしね」
両親に当たり前のように言っていた。これで、自分から言う機会が奪われてしまった。俊史の策略にまんまとはまってしまったかん子だった。
かん子の腕の中にはいなり寿司。兄の俊史も好物だし、これで今日のお昼はばっちりだ。送迎は、めんどくさいけれど、こんなご褒美もあるからうれしい。
そう思いながら、帰るためにホールのロビーを抜ける途中、視線を感じた。
普通なら視線を感じても、気にもしないのになぜかこの視線は無視できない。視線が突き刺さるようだ。どこから見ているのかはっきり分かる。
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