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65 謎のモテ期です
玉山は走ってくると、敦子と声をかけてきた男の人との間に割りこんできた。
「滝村さん、今帰り?」
「あっ、はい」
「土曜日の予定だけど、ドライブどこにする?」
不意に玉山は、今週のドライブの話題を出してきた。
敦子に声をかけてきた男の人は、自分と敦子の間に割り込んできた玉山にはじめムッとしていたようだったが、玉山の顔と玉山の話を聞いてすごすごと会社に戻っていったのだった。
敦子は、玉山の後ろからその男の人を見ようと体をずらそうとしたが、同じく体をずらしてきた玉山のせいでその男の人が見れなかった。
「あっちゃん、あの人に興味あるの?」
凄みのある声にたじろいで、敦子が伺うように玉山の顔を見れば、玉山もその時初めて敦子を見たのか、玉山が何か言おうとして不意に口を閉ざした。
玉山はじっーと敦子の顔を見ている。
そして急に視線をそらすとしばらく考え込んだ顔をしたが、そのうちなんだが顔が険しくなっておでこにしわまで出てきた。
敦子は、怒った顔も素敵だわ~とはじめ見ていたが、あまりに顔が険しくなっていくのを見てだんだん怖くなってきた。
「どうかした?竜也さん」
敦子が玉山に声をかけても、玉山は何にも言わなかった。
「ねえ、なに怒ってるの?」
敦子が涙声で言ったのに気が付いて、急に表情が柔らかくなった。
「ごめん、あっちゃんが悪いわけじゃないんだけど。あっちゃんがなんだかすごくかわいくて。みんなもそう思ってると思ったらなんだが...」
困ったような顔になり謝ってきた。
敦子は滲んでいた涙が引っ込んでしまった。
玉山の言葉でほめられてうれしい反面、あきれるやら怒れるやらなんだかもやっとしたが、彼の情けない顔を見てすべて許したくなった。
それに彼は、大きな誤解をしている。
「玉山さんがどう思っているのか知りませんけど、誰も私の事かわいいなんて思っていませんよ」
だから大丈夫だといいたかったのだが、玉山は違ったようだ。
「あっちゃん前からかわいかったけど、今日はずいぶん雰囲気が違うんだ。もっとかわいくなっていて、あっちゃんに興味を持つ奴がこれ以上増えたら困るよ」
玉山は敦子に真顔で言ってきた。
これ以上と玉山は言ったが一人もいないだろうと敦子は、心の中でひとりつっこみを入れたが、ここまで言われてうれしくないはずがない。
照れてしまい玉山の顔を見れずに、顔を下げていった。
「もう!こんなところで恥ずかしいです。正直こんなにほめてくれるのは玉山さんしかいませんので、心配ないです。じゃあ私帰りますね。玉山さんはまだお仕事でしょ」
ここはまだビルの中だ。こんなところで玉山と話すのは、さすがに恥ずかしくて敦子は帰ろうとした。
玉山は仕事の途中らしくまだ手には書類を持っている。
「ああ、これから会社に戻るところだったんだ。じゃあ気を付けて。また連絡するから」
後半の言葉を言う時にはなぜか周りを見渡して、大きい声で言っていた玉山だった。
「お仕事頑張ってくださいね」
敦子はそういうと足早にビルを出ていった。
敦子のその様子をちょうどビルにいた数人の男性たちが、敦子の後姿が見えなくなるまで見送っていたのだが、不意に寒気と視線を感じてそちらを向いた。
氷のように冷たい表情をした玉山がにらんでいた。
にらまれた人たちは、蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げていったのだった。
敦子は帰りの電車の中でも視線を向けられていたが、先ほどの玉山との会話でいっぱいいっぱいだったので周りを見る余裕もなく、玉山の言葉を思い出してはひとり顔を赤くしていた。
そんな敦子を見ていた誰かがぽつんとつぶやいた。
「かわいいぃ」
ただその声は敦子の元まで届くことはなかった。
もし届いていてもきっと自分に言われてるとはつゆほども思っていないだろう。
こうして水曜日が過ぎていった。
翌日からも敦子は不思議といろいろな視線に出くわした。
今までこんなに誰かに見られるなんてことは経験がない。
さすがに敦子も何かがおかしいと思い始めていた。
会社でも数人に誘われたし、行き帰りの電車でも知らない人数人から声をかけられたのである。
ここまで来るとこれはモテ期なの!と単純に喜んでいい話ではないと思い始めた。
ただ会社で誰かに誘われる時には、必ず誰かがすぐ来てくれて助け舟を出してくれた。行き帰りの電車で声をかけられた時には、必ずその人にアクシデントが起こり、敦子は救われていた。
敦子に声をかけた人が、なぜかほかの人とぶつかって転ぶとか、今日はその人の持っているバッグの取っ手が外れて中身が全部飛び出したとか、なぜか普段なかなかありえないことが起こるのだった。
それでも今までなかったことが起こって敦子は、なんとなくストレスを感じていた。
それでつい金曜日の夜玉山からの連絡で愚痴ってしまった。
『明日の土曜日ドライブに行こう。動物園はどう?』
『いいですね。うれしいです。最近なんだか変なことばかりおこるので、動物たちに癒されたいです』
玉山の返信は早かった。
『変なことってなに』
敦子は玉山の返信を見て、自分が書いてしまったことを後悔した。
なんて返信しようと敦子が考えているとまた玉山から連絡が来た。
『なんかあったの?大丈夫?』
『大丈夫です。心配させてすみません。おやすみなさい』
『また明日教えて。時間は朝9時にしよう。おやすみ』
敦子は玉山が深く詮索しなかったことにほっとして寝たのだが、まさか根掘り葉掘りこれでもかと聞かれて疲れ切るとは今まだ知らない敦子だった。
「滝村さん、今帰り?」
「あっ、はい」
「土曜日の予定だけど、ドライブどこにする?」
不意に玉山は、今週のドライブの話題を出してきた。
敦子に声をかけてきた男の人は、自分と敦子の間に割り込んできた玉山にはじめムッとしていたようだったが、玉山の顔と玉山の話を聞いてすごすごと会社に戻っていったのだった。
敦子は、玉山の後ろからその男の人を見ようと体をずらそうとしたが、同じく体をずらしてきた玉山のせいでその男の人が見れなかった。
「あっちゃん、あの人に興味あるの?」
凄みのある声にたじろいで、敦子が伺うように玉山の顔を見れば、玉山もその時初めて敦子を見たのか、玉山が何か言おうとして不意に口を閉ざした。
玉山はじっーと敦子の顔を見ている。
そして急に視線をそらすとしばらく考え込んだ顔をしたが、そのうちなんだが顔が険しくなっておでこにしわまで出てきた。
敦子は、怒った顔も素敵だわ~とはじめ見ていたが、あまりに顔が険しくなっていくのを見てだんだん怖くなってきた。
「どうかした?竜也さん」
敦子が玉山に声をかけても、玉山は何にも言わなかった。
「ねえ、なに怒ってるの?」
敦子が涙声で言ったのに気が付いて、急に表情が柔らかくなった。
「ごめん、あっちゃんが悪いわけじゃないんだけど。あっちゃんがなんだかすごくかわいくて。みんなもそう思ってると思ったらなんだが...」
困ったような顔になり謝ってきた。
敦子は滲んでいた涙が引っ込んでしまった。
玉山の言葉でほめられてうれしい反面、あきれるやら怒れるやらなんだかもやっとしたが、彼の情けない顔を見てすべて許したくなった。
それに彼は、大きな誤解をしている。
「玉山さんがどう思っているのか知りませんけど、誰も私の事かわいいなんて思っていませんよ」
だから大丈夫だといいたかったのだが、玉山は違ったようだ。
「あっちゃん前からかわいかったけど、今日はずいぶん雰囲気が違うんだ。もっとかわいくなっていて、あっちゃんに興味を持つ奴がこれ以上増えたら困るよ」
玉山は敦子に真顔で言ってきた。
これ以上と玉山は言ったが一人もいないだろうと敦子は、心の中でひとりつっこみを入れたが、ここまで言われてうれしくないはずがない。
照れてしまい玉山の顔を見れずに、顔を下げていった。
「もう!こんなところで恥ずかしいです。正直こんなにほめてくれるのは玉山さんしかいませんので、心配ないです。じゃあ私帰りますね。玉山さんはまだお仕事でしょ」
ここはまだビルの中だ。こんなところで玉山と話すのは、さすがに恥ずかしくて敦子は帰ろうとした。
玉山は仕事の途中らしくまだ手には書類を持っている。
「ああ、これから会社に戻るところだったんだ。じゃあ気を付けて。また連絡するから」
後半の言葉を言う時にはなぜか周りを見渡して、大きい声で言っていた玉山だった。
「お仕事頑張ってくださいね」
敦子はそういうと足早にビルを出ていった。
敦子のその様子をちょうどビルにいた数人の男性たちが、敦子の後姿が見えなくなるまで見送っていたのだが、不意に寒気と視線を感じてそちらを向いた。
氷のように冷たい表情をした玉山がにらんでいた。
にらまれた人たちは、蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げていったのだった。
敦子は帰りの電車の中でも視線を向けられていたが、先ほどの玉山との会話でいっぱいいっぱいだったので周りを見る余裕もなく、玉山の言葉を思い出してはひとり顔を赤くしていた。
そんな敦子を見ていた誰かがぽつんとつぶやいた。
「かわいいぃ」
ただその声は敦子の元まで届くことはなかった。
もし届いていてもきっと自分に言われてるとはつゆほども思っていないだろう。
こうして水曜日が過ぎていった。
翌日からも敦子は不思議といろいろな視線に出くわした。
今までこんなに誰かに見られるなんてことは経験がない。
さすがに敦子も何かがおかしいと思い始めていた。
会社でも数人に誘われたし、行き帰りの電車でも知らない人数人から声をかけられたのである。
ここまで来るとこれはモテ期なの!と単純に喜んでいい話ではないと思い始めた。
ただ会社で誰かに誘われる時には、必ず誰かがすぐ来てくれて助け舟を出してくれた。行き帰りの電車で声をかけられた時には、必ずその人にアクシデントが起こり、敦子は救われていた。
敦子に声をかけた人が、なぜかほかの人とぶつかって転ぶとか、今日はその人の持っているバッグの取っ手が外れて中身が全部飛び出したとか、なぜか普段なかなかありえないことが起こるのだった。
それでも今までなかったことが起こって敦子は、なんとなくストレスを感じていた。
それでつい金曜日の夜玉山からの連絡で愚痴ってしまった。
『明日の土曜日ドライブに行こう。動物園はどう?』
『いいですね。うれしいです。最近なんだか変なことばかりおこるので、動物たちに癒されたいです』
玉山の返信は早かった。
『変なことってなに』
敦子は玉山の返信を見て、自分が書いてしまったことを後悔した。
なんて返信しようと敦子が考えているとまた玉山から連絡が来た。
『なんかあったの?大丈夫?』
『大丈夫です。心配させてすみません。おやすみなさい』
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