悪役令嬢(未遂)による魔法ありきの防災訓練。

Taka多可 (お米)

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1章、お嬢様になっちゃった?

7.アレルギーテスト

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     *****アレルギーテスト*****

1,検査する食品を水に溶く、煮る、絞るなどして検査試薬を用意する。
2,被験者の皮膚に検査試薬を数滴たらす。腕の内側が望ましいが、部位は問わない。
3,皮膚に水属性の魔力を通す。洗い流さないよう水の生成ではなく魔力を通すだけにとどめること。
 また、魔力を通すのは被験者本人ではないほうが良い。
4,赤く光る、または発赤が生じた場合は陽性であるため患部をすぐに洗い流すこと。ポーションなど回復薬や治癒魔法で回復が早まる。
 何も反応しない場合は陰性である。摂食して問題ありません。

     ******************


ふんふん。いやぁ危なかったねしかし。
そうだよねー、日本で暮らしてた時のあたしと「アリンちゃん」は全くの別人なんだから、アレルギーもそうだけど先天的な病気だって何かあったかもしれないんだ。
油断しちゃーいかんよ。
ではでは早速検査しましょう。

スプーンで海グモをぎゅーっと押しつぶしてお汁を出して、腕にちょんちょんっと。

「はいお父様、お願いします。」
「「ちょちょちょちょ!?」」
「待ってくださいお嬢様!こういうのはまずあっしらがやりますから!」
「えーだって早く食べたいわ。」
「すぐ終わりますから待ってください!ほらおめーら、海グモの煮汁だ急げ!」
「あっぢぃ! はい領主様、お願いします!」
「…いや本当に君たちうちの子大好きだよねぇ、その忠誠心本当にありがたいよ…」

「それじゃあ始めるよ。【水の調べ】」

お父様の手のひらに、淡く光る青い魔力が集まっていく。
水に変化しないよう注意を払いながら、検査を志願した3人の漁師さんたちの腕に滑らせていく。

「……………何も起きませんな。」
「あっしもです。」
「ひえ!?」 ピカー

「「!?」」
固唾をのんで見守っていたみんなに、動揺が走る。
一人の腕が赤い光を発し、徐々に腕自体にも発赤が見られ始めた。

「ひゃー、危なかったなぁ。俺は食べちゃいけねぇんですね。」

そういいながらすごく安心した顔をしているのは、どっちの意味なんでしょうねぇ?
でも、本当に危なかった。
教えてもらえて本当に良かった…

「ほら、早く洗え洗え!真っ赤っかじゃねぇか!」
「うわわ、なんだか痒くなってきた!」
「誰か濡れ布巾を!冷やせば痒いのはおさまるから搔いちゃだめよ!軟膏塗ってやるから待ってな!」
「すごいなぁ、本当にこれだけで検査ができるんですね。」

「はいお父様、今度こそあたしの番です!」
「はいはい、ちょっと待ってね。」

結果は…


「では今度こそ、いっただっきまーす!」
無事、陰性でした!
んーーーー!うんまーい!

「ぷりっとしつつかむたびじゅわっとおつゆが染み出てきながらほぐれていき、ほんのりとした甘みがもうひとくちを誘いますぅ…そのままの海水で煮るのはいけなかったかしら、ちょっとしょっぱいわ。真水にお塩で調整したほうがよさそうね。あ、でもサラダに混ぜたらちょうどいい塩梅かもしれないわ。ドレッシングはうす味で十分ね。はっひらめいたわ!海藻もはさんで海グモサンドイッチにしたら美味しそうよこれ!」モグモグモグ

「出たわーお嬢様の舌鼓。」
「よっしゃ、俺も陰性!いただきます! …うんめぇ!?」
「おいちーの!」
「海ムカデもうまいぞ!赤豆ソースちょっとつけるとうまいな。」

子供らには大好評。
大人も恐る恐るだったけど次第に旨い美味しいの声が出始める。
その様子を見ていた陽性だった漁師さんやそのほか数人は、海ムカデのゆで汁でも試していたけどやはり陽性。
あー、最初は安心してたけどみんながうまいうまい言ってるから食べたくなっちゃったか、ごめん…

「ご協力ありがとうございます。かゆみはおさまりましたか?」
「はい、食べられないのは残念ですが、死んじまうほうがもっと嫌ですからね。気を付けます。」
「海グモと海ムカデ、両方ともダメだったって事は、こういう硬い殻をもった生き物全般、食べちゃいけないってことなんでしょうか?」
「恐らくそうですね…海藻をとるときに小さな海ムカデが入り込むことがあるかもしれません。よく洗ってから召し上がってくださいね。」
「ええ、気を付けますわ。」


「アリン、よくやってくれたな。ありがとう。」
「神様がたのおかげです、お父様。」
「それでも、アリンが食べたいって駄々をこねたからこそだ。新たな珍味が見つかったし、恐ろしい病気…いや、体質か。発見があったことだ。事前の検査を絶対条件とするが、大切な特産品の一つになる。お手柄だった!」
「ふふ、では、ありがとうございます。」

珍味かぁ…いや、まあ、当分はそうなるか。
陽性だった人は触るのも水魔法なんかで保護してから、ということになり。
陰性だった漁師さんたちのうちから「うっかりよく捕ってしまっていた不運だった漁師」さん数名が、海グモ、海ムカデをとる専門家として任命されました。
あ、もちろんそれ以外の人がとっても問題ではないよ。廉価版ね。
専門家がとった分については領地のブランド物として、ちょっと箔が付くって事。
後日正式に任命証明書をお父様が発行します。
おめでとう!


やあめでたいめでたい、という雰囲気のままお開きになろうかというとき、悲痛な面持ちの奥さんがこっちにやってきた。

「お嬢様…あの、あれるぎーのことについて質問があるんです。」
「もちろん聞くわ、どうなさったの?」
「実はうちの息子が、パンを食べるのをとても嫌がるんです。だから、パンがゆにしたり果物を煮たものを入れて甘いパンを作ってやったりしたのですが、全部顔を真っ赤にしながら嫌がって…そんなに食べたくないのならもう食べなくていい!って叱ったら、本当に魚と豆と芋しか食べなくなってしまって…わがままを言ってるんだろうとほったらかしにしていたんです。 ま、まさか…うちの息子…パンがあれるぎーだったんじゃって…」
「!! それ、危ないところでしたね!小麦やミルク、卵のアレルギーもあります!息子さんは自力で体の異常に気が付いたんですね。心当たりのある食品、手あたり次第調べてあげてください!」
「あ、あああ…そうだったんですね…わたし、なんてひどいことを…」
「うちの娘もだ!ミルクを嫌がるんでさぁ!」
「うちの息子が死んじまったのって、まさか…」

そうですよね…
このままよかったよかったで終わるわけないと思ったよ…
みんなの言いたいこと、顔を見ればわかるよ。

【なんでもっと早く、分からなかったんだ。】、だろ。

あたしが一番思ってるよ…


「みんな、お嬢にそんな顔見せるな。 どうしてもいいてぇんなら、あっしらの命の危険を【今頃】知らせてくださった神様方に文句言えや。」
「そうはいってもよぉ…」
「そうだな、神様にいくら文句言ったって届いたかどうかわかんねぇもんな。だからって、お嬢を非難すんのは間違ってらぁ。 お嬢、あんたが海グモどもを喰いてぇって言ってくれたから、あっしらは喰いモンと体質の相性が悪い組み合わせがあるって教えてもらえたんだ。 だからよう、ありがとうございます。」

うれしいなぁ、くやしいなあ…
ちゃんと伝えるって、難しいなぁ。
誰も知らなかったせいで、すでに失われちゃった命があったかもしれない。
これから、それ以上の人々が救われてほしい。

やっぱりあたしは、わがままな食いしんぼ令嬢だ。
くやしい。そして、頑張らなくちゃ。

「ごはんを食べて死んじゃうなんて、悲しいものね。 これから、そんなことが何度も起きないように、国中の人に伝えてもらえるようにがんばるから、それでゆるしてね。」


「「「ありがとう。」ございます!」」



あたしの声と、みんなの声が、重なった。
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