28 / 30
3.仲間ができました。
魚27:嗚呼、天女様。
しおりを挟む
(杏心視点。)
てんにょさまがおいしそうにおにくをほおばっておられます。
っとと、いけない。しっかりしなければ、杏心。
嗚呼、でもかわいいぃぃぃ…
……昨日の早朝、シシィが「契約数作り終わった!もう薬作るの飽きたわ!!キャンプするわよ!」と、男部屋にちゃんとかけた筈のカギをあっさり突破し飛び込んできた。
なんともまあ、シシィらしかった。
シシィが自分で受けた依頼なので、それが終わるまで俺たちも各々お使いや力仕事をしていて、今日は休息日にする予定だったから全然かまわない。
ギルドに薬を預けて完了届と報酬をもらったシシィはそのまま素早くよろず屋へ。
奮発して柔らかいパンとスープの素と柔らかい燻製肉をどんどん買っていく。
あーあー、ずいぶんといからっておられるご様子で。
「ジュドー…」
「好きにさせよう。シシィが稼いだぶんのお金だ、かまわないだろ?」
「そうだね。」
ほとんど普段着のまま、まあナイフで刺された程度なら軽くはじくくらいの強度な装備のまま、シシィに二人そろって引きずられていく。
もちろんちゃんと歩いてはいるよ。シシィが俺たちを引っ張りたい気分なようなので、させるがままになっているが、実際彼女の腕力で大の男二人を引きずることはできないし。
夏前の瑞々しい森なら、危ないモンスターはまずいない。
グローブは常に持ってるし、ジュドーも細い斧はいつも腰に下げている。まあ、大丈夫だろう。
つまりそれが、慢心、というものなんだろう。
やらかした。
たぶんリーフベアーだろうけど、鮮やかな緑の体毛じゃない。どす黒い緑色だしでかすぎる。
いつもの装備の癖でうっかりシシィをかばってしまった。
完全に油断。一度攻撃を受けてから反撃、の悪い癖。
もうろうとする意識の中、ジュドーに担がれてシシィの鈍化魔法がかけられたのが分かる。
出血をおさえるためなんだろうが、あんまり効いて無さそうだ、振動で血がどんどん出ていく。
痛いんだか寒いんだか、ぐらぐらしているうちに、じゃばじゃばと豪快に水をかけられた気がした。
しみるのと口に放り込まれた苦みでばちっと目が覚めた。
シシィ!おっ前なぁ!!
腹の皮がぎしぎしと引っ張られる感触。傷が治っていく感覚は何度経験しても気持ち悪い。
そこにえぐさと苦みと渋さでむせるうちに、シシィが妙なことを言う。
アレを倒した?あの巨熊を?
ーーー「ああ、どうも通りすがりの旅のものです。命あってよかったですね。」
優しい笑顔。
岩カラスの翼ような黒髪。
寺の掛け軸でしか見たことがなかったあの天女様が、目の前に、地上に、いらっしゃった。
ーーーーーーーーーー
「 さん、アビーさん?」
「あ、はい! 天女様。どうされましたか?」
「いや、あの先ほどから店員さんが。」
横を手で指し示す天女様の白い指の先をみれば。
「いやー何回か声はかけたんスけど。おかわりもってきたっすよ。」
「すまない、考え事してた、ありがとう。」
いつも通り、三人前ぶんをまとめて置いてもらう。
「お姉さんはそれだけで足りるんスか?」
「うん、もうお腹いっぱいです。あ、お水って自分で出してもいいのかな?買ったほうがいい?」
「食堂に食べ物は持ち込み禁止でスけど、飲み物は自由にしていいっスよ~。お部屋なら片付けさえ自分でしてくれたら飲み食い自由ッス!」
「そっか、ありがとう。」
「はーい、どうもー」
どういう仕組みなのか、テーブルに置いたコップに一瞬で水が満たされる。水面が揺れたのが見えただけで、注がれる過程は見えなかった。アイテムバックってすごいな。
シシィ、ジュドーもそれぞれ飲み物を頼み、なにかワイワイと話しているけど、難しい話はよく分からない。俺、あんまり賢くないし。
スープの残りを飲み終えたところで天女様がすごくびっくりした顔をして俺を見ているのに気が付いた。
「天女様?」
「え、え、あれ?さっき2、3人前くらいいっぺんにもらってましたよね?もう全部平らげちゃったんですか?すごい…」
「鬼人族は大喰らいだからな!もう見慣れたもんだぜ。」
「困ったな、いっぱい食べないと不自然かな…?」
「まあ個人差あるでしょうから無理して沢山食べる必要は無いわ。」
「そっか…」
「あー…もしどこかの店で、大盛に出されて食べきれなかったら、俺、食べますから。心配いりません。」
「ありがとう、助かるよ。」
「もし、ほかにも困ったことがあったりしたら『赤ん坊のころから人間と一緒に暮らしてたから鬼人族については詳しくない』テイで、ごまかしましょう。」
「ああ、それいいね。嘘ではないし。」
よかった、困ったように笑っていた天女様が、ちゃんと微笑んでくださった。
さて、シシィの部屋で今後の作戦会議という名の状況確認をするため移動しようとしたが、天女様がお手洗いにいきたいとのことで、護衛を兼ねて案内をする。
……あぁ、シシィに頼んだほうがよかっただろうか。
嫌なものを天女様に見せてしまった。
てんにょさまがおいしそうにおにくをほおばっておられます。
っとと、いけない。しっかりしなければ、杏心。
嗚呼、でもかわいいぃぃぃ…
……昨日の早朝、シシィが「契約数作り終わった!もう薬作るの飽きたわ!!キャンプするわよ!」と、男部屋にちゃんとかけた筈のカギをあっさり突破し飛び込んできた。
なんともまあ、シシィらしかった。
シシィが自分で受けた依頼なので、それが終わるまで俺たちも各々お使いや力仕事をしていて、今日は休息日にする予定だったから全然かまわない。
ギルドに薬を預けて完了届と報酬をもらったシシィはそのまま素早くよろず屋へ。
奮発して柔らかいパンとスープの素と柔らかい燻製肉をどんどん買っていく。
あーあー、ずいぶんといからっておられるご様子で。
「ジュドー…」
「好きにさせよう。シシィが稼いだぶんのお金だ、かまわないだろ?」
「そうだね。」
ほとんど普段着のまま、まあナイフで刺された程度なら軽くはじくくらいの強度な装備のまま、シシィに二人そろって引きずられていく。
もちろんちゃんと歩いてはいるよ。シシィが俺たちを引っ張りたい気分なようなので、させるがままになっているが、実際彼女の腕力で大の男二人を引きずることはできないし。
夏前の瑞々しい森なら、危ないモンスターはまずいない。
グローブは常に持ってるし、ジュドーも細い斧はいつも腰に下げている。まあ、大丈夫だろう。
つまりそれが、慢心、というものなんだろう。
やらかした。
たぶんリーフベアーだろうけど、鮮やかな緑の体毛じゃない。どす黒い緑色だしでかすぎる。
いつもの装備の癖でうっかりシシィをかばってしまった。
完全に油断。一度攻撃を受けてから反撃、の悪い癖。
もうろうとする意識の中、ジュドーに担がれてシシィの鈍化魔法がかけられたのが分かる。
出血をおさえるためなんだろうが、あんまり効いて無さそうだ、振動で血がどんどん出ていく。
痛いんだか寒いんだか、ぐらぐらしているうちに、じゃばじゃばと豪快に水をかけられた気がした。
しみるのと口に放り込まれた苦みでばちっと目が覚めた。
シシィ!おっ前なぁ!!
腹の皮がぎしぎしと引っ張られる感触。傷が治っていく感覚は何度経験しても気持ち悪い。
そこにえぐさと苦みと渋さでむせるうちに、シシィが妙なことを言う。
アレを倒した?あの巨熊を?
ーーー「ああ、どうも通りすがりの旅のものです。命あってよかったですね。」
優しい笑顔。
岩カラスの翼ような黒髪。
寺の掛け軸でしか見たことがなかったあの天女様が、目の前に、地上に、いらっしゃった。
ーーーーーーーーーー
「 さん、アビーさん?」
「あ、はい! 天女様。どうされましたか?」
「いや、あの先ほどから店員さんが。」
横を手で指し示す天女様の白い指の先をみれば。
「いやー何回か声はかけたんスけど。おかわりもってきたっすよ。」
「すまない、考え事してた、ありがとう。」
いつも通り、三人前ぶんをまとめて置いてもらう。
「お姉さんはそれだけで足りるんスか?」
「うん、もうお腹いっぱいです。あ、お水って自分で出してもいいのかな?買ったほうがいい?」
「食堂に食べ物は持ち込み禁止でスけど、飲み物は自由にしていいっスよ~。お部屋なら片付けさえ自分でしてくれたら飲み食い自由ッス!」
「そっか、ありがとう。」
「はーい、どうもー」
どういう仕組みなのか、テーブルに置いたコップに一瞬で水が満たされる。水面が揺れたのが見えただけで、注がれる過程は見えなかった。アイテムバックってすごいな。
シシィ、ジュドーもそれぞれ飲み物を頼み、なにかワイワイと話しているけど、難しい話はよく分からない。俺、あんまり賢くないし。
スープの残りを飲み終えたところで天女様がすごくびっくりした顔をして俺を見ているのに気が付いた。
「天女様?」
「え、え、あれ?さっき2、3人前くらいいっぺんにもらってましたよね?もう全部平らげちゃったんですか?すごい…」
「鬼人族は大喰らいだからな!もう見慣れたもんだぜ。」
「困ったな、いっぱい食べないと不自然かな…?」
「まあ個人差あるでしょうから無理して沢山食べる必要は無いわ。」
「そっか…」
「あー…もしどこかの店で、大盛に出されて食べきれなかったら、俺、食べますから。心配いりません。」
「ありがとう、助かるよ。」
「もし、ほかにも困ったことがあったりしたら『赤ん坊のころから人間と一緒に暮らしてたから鬼人族については詳しくない』テイで、ごまかしましょう。」
「ああ、それいいね。嘘ではないし。」
よかった、困ったように笑っていた天女様が、ちゃんと微笑んでくださった。
さて、シシィの部屋で今後の作戦会議という名の状況確認をするため移動しようとしたが、天女様がお手洗いにいきたいとのことで、護衛を兼ねて案内をする。
……あぁ、シシィに頼んだほうがよかっただろうか。
嫌なものを天女様に見せてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
幸福なる侯爵夫人のお話
重田いの
ファンタジー
とある侯爵家に嫁いだ伯爵令嬢。
初夜の場で、夫は「きみを愛することはない」というけれど。
最終的にすべてを手にした侯爵夫人のお話。
あるいは、負い目のある伯爵令嬢をお飾りの妻にして愛人とイチャイチャ過ごそうと思ったらとんでもないハズレくじを引いちゃった侯爵のお話。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる