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3.仲間ができました。
魚27:嗚呼、天女様。
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(杏心視点。)
てんにょさまがおいしそうにおにくをほおばっておられます。
っとと、いけない。しっかりしなければ、杏心。
嗚呼、でもかわいいぃぃぃ…
……昨日の早朝、シシィが「契約数作り終わった!もう薬作るの飽きたわ!!キャンプするわよ!」と、男部屋にちゃんとかけた筈のカギをあっさり突破し飛び込んできた。
なんともまあ、シシィらしかった。
シシィが自分で受けた依頼なので、それが終わるまで俺たちも各々お使いや力仕事をしていて、今日は休息日にする予定だったから全然かまわない。
ギルドに薬を預けて完了届と報酬をもらったシシィはそのまま素早くよろず屋へ。
奮発して柔らかいパンとスープの素と柔らかい燻製肉をどんどん買っていく。
あーあー、ずいぶんといからっておられるご様子で。
「ジュドー…」
「好きにさせよう。シシィが稼いだぶんのお金だ、かまわないだろ?」
「そうだね。」
ほとんど普段着のまま、まあナイフで刺された程度なら軽くはじくくらいの強度な装備のまま、シシィに二人そろって引きずられていく。
もちろんちゃんと歩いてはいるよ。シシィが俺たちを引っ張りたい気分なようなので、させるがままになっているが、実際彼女の腕力で大の男二人を引きずることはできないし。
夏前の瑞々しい森なら、危ないモンスターはまずいない。
グローブは常に持ってるし、ジュドーも細い斧はいつも腰に下げている。まあ、大丈夫だろう。
つまりそれが、慢心、というものなんだろう。
やらかした。
たぶんリーフベアーだろうけど、鮮やかな緑の体毛じゃない。どす黒い緑色だしでかすぎる。
いつもの装備の癖でうっかりシシィをかばってしまった。
完全に油断。一度攻撃を受けてから反撃、の悪い癖。
もうろうとする意識の中、ジュドーに担がれてシシィの鈍化魔法がかけられたのが分かる。
出血をおさえるためなんだろうが、あんまり効いて無さそうだ、振動で血がどんどん出ていく。
痛いんだか寒いんだか、ぐらぐらしているうちに、じゃばじゃばと豪快に水をかけられた気がした。
しみるのと口に放り込まれた苦みでばちっと目が覚めた。
シシィ!おっ前なぁ!!
腹の皮がぎしぎしと引っ張られる感触。傷が治っていく感覚は何度経験しても気持ち悪い。
そこにえぐさと苦みと渋さでむせるうちに、シシィが妙なことを言う。
アレを倒した?あの巨熊を?
ーーー「ああ、どうも通りすがりの旅のものです。命あってよかったですね。」
優しい笑顔。
岩カラスの翼ような黒髪。
寺の掛け軸でしか見たことがなかったあの天女様が、目の前に、地上に、いらっしゃった。
ーーーーーーーーーー
「 さん、アビーさん?」
「あ、はい! 天女様。どうされましたか?」
「いや、あの先ほどから店員さんが。」
横を手で指し示す天女様の白い指の先をみれば。
「いやー何回か声はかけたんスけど。おかわりもってきたっすよ。」
「すまない、考え事してた、ありがとう。」
いつも通り、三人前ぶんをまとめて置いてもらう。
「お姉さんはそれだけで足りるんスか?」
「うん、もうお腹いっぱいです。あ、お水って自分で出してもいいのかな?買ったほうがいい?」
「食堂に食べ物は持ち込み禁止でスけど、飲み物は自由にしていいっスよ~。お部屋なら片付けさえ自分でしてくれたら飲み食い自由ッス!」
「そっか、ありがとう。」
「はーい、どうもー」
どういう仕組みなのか、テーブルに置いたコップに一瞬で水が満たされる。水面が揺れたのが見えただけで、注がれる過程は見えなかった。アイテムバックってすごいな。
シシィ、ジュドーもそれぞれ飲み物を頼み、なにかワイワイと話しているけど、難しい話はよく分からない。俺、あんまり賢くないし。
スープの残りを飲み終えたところで天女様がすごくびっくりした顔をして俺を見ているのに気が付いた。
「天女様?」
「え、え、あれ?さっき2、3人前くらいいっぺんにもらってましたよね?もう全部平らげちゃったんですか?すごい…」
「鬼人族は大喰らいだからな!もう見慣れたもんだぜ。」
「困ったな、いっぱい食べないと不自然かな…?」
「まあ個人差あるでしょうから無理して沢山食べる必要は無いわ。」
「そっか…」
「あー…もしどこかの店で、大盛に出されて食べきれなかったら、俺、食べますから。心配いりません。」
「ありがとう、助かるよ。」
「もし、ほかにも困ったことがあったりしたら『赤ん坊のころから人間と一緒に暮らしてたから鬼人族については詳しくない』テイで、ごまかしましょう。」
「ああ、それいいね。嘘ではないし。」
よかった、困ったように笑っていた天女様が、ちゃんと微笑んでくださった。
さて、シシィの部屋で今後の作戦会議という名の状況確認をするため移動しようとしたが、天女様がお手洗いにいきたいとのことで、護衛を兼ねて案内をする。
……あぁ、シシィに頼んだほうがよかっただろうか。
嫌なものを天女様に見せてしまった。
てんにょさまがおいしそうにおにくをほおばっておられます。
っとと、いけない。しっかりしなければ、杏心。
嗚呼、でもかわいいぃぃぃ…
……昨日の早朝、シシィが「契約数作り終わった!もう薬作るの飽きたわ!!キャンプするわよ!」と、男部屋にちゃんとかけた筈のカギをあっさり突破し飛び込んできた。
なんともまあ、シシィらしかった。
シシィが自分で受けた依頼なので、それが終わるまで俺たちも各々お使いや力仕事をしていて、今日は休息日にする予定だったから全然かまわない。
ギルドに薬を預けて完了届と報酬をもらったシシィはそのまま素早くよろず屋へ。
奮発して柔らかいパンとスープの素と柔らかい燻製肉をどんどん買っていく。
あーあー、ずいぶんといからっておられるご様子で。
「ジュドー…」
「好きにさせよう。シシィが稼いだぶんのお金だ、かまわないだろ?」
「そうだね。」
ほとんど普段着のまま、まあナイフで刺された程度なら軽くはじくくらいの強度な装備のまま、シシィに二人そろって引きずられていく。
もちろんちゃんと歩いてはいるよ。シシィが俺たちを引っ張りたい気分なようなので、させるがままになっているが、実際彼女の腕力で大の男二人を引きずることはできないし。
夏前の瑞々しい森なら、危ないモンスターはまずいない。
グローブは常に持ってるし、ジュドーも細い斧はいつも腰に下げている。まあ、大丈夫だろう。
つまりそれが、慢心、というものなんだろう。
やらかした。
たぶんリーフベアーだろうけど、鮮やかな緑の体毛じゃない。どす黒い緑色だしでかすぎる。
いつもの装備の癖でうっかりシシィをかばってしまった。
完全に油断。一度攻撃を受けてから反撃、の悪い癖。
もうろうとする意識の中、ジュドーに担がれてシシィの鈍化魔法がかけられたのが分かる。
出血をおさえるためなんだろうが、あんまり効いて無さそうだ、振動で血がどんどん出ていく。
痛いんだか寒いんだか、ぐらぐらしているうちに、じゃばじゃばと豪快に水をかけられた気がした。
しみるのと口に放り込まれた苦みでばちっと目が覚めた。
シシィ!おっ前なぁ!!
腹の皮がぎしぎしと引っ張られる感触。傷が治っていく感覚は何度経験しても気持ち悪い。
そこにえぐさと苦みと渋さでむせるうちに、シシィが妙なことを言う。
アレを倒した?あの巨熊を?
ーーー「ああ、どうも通りすがりの旅のものです。命あってよかったですね。」
優しい笑顔。
岩カラスの翼ような黒髪。
寺の掛け軸でしか見たことがなかったあの天女様が、目の前に、地上に、いらっしゃった。
ーーーーーーーーーー
「 さん、アビーさん?」
「あ、はい! 天女様。どうされましたか?」
「いや、あの先ほどから店員さんが。」
横を手で指し示す天女様の白い指の先をみれば。
「いやー何回か声はかけたんスけど。おかわりもってきたっすよ。」
「すまない、考え事してた、ありがとう。」
いつも通り、三人前ぶんをまとめて置いてもらう。
「お姉さんはそれだけで足りるんスか?」
「うん、もうお腹いっぱいです。あ、お水って自分で出してもいいのかな?買ったほうがいい?」
「食堂に食べ物は持ち込み禁止でスけど、飲み物は自由にしていいっスよ~。お部屋なら片付けさえ自分でしてくれたら飲み食い自由ッス!」
「そっか、ありがとう。」
「はーい、どうもー」
どういう仕組みなのか、テーブルに置いたコップに一瞬で水が満たされる。水面が揺れたのが見えただけで、注がれる過程は見えなかった。アイテムバックってすごいな。
シシィ、ジュドーもそれぞれ飲み物を頼み、なにかワイワイと話しているけど、難しい話はよく分からない。俺、あんまり賢くないし。
スープの残りを飲み終えたところで天女様がすごくびっくりした顔をして俺を見ているのに気が付いた。
「天女様?」
「え、え、あれ?さっき2、3人前くらいいっぺんにもらってましたよね?もう全部平らげちゃったんですか?すごい…」
「鬼人族は大喰らいだからな!もう見慣れたもんだぜ。」
「困ったな、いっぱい食べないと不自然かな…?」
「まあ個人差あるでしょうから無理して沢山食べる必要は無いわ。」
「そっか…」
「あー…もしどこかの店で、大盛に出されて食べきれなかったら、俺、食べますから。心配いりません。」
「ありがとう、助かるよ。」
「もし、ほかにも困ったことがあったりしたら『赤ん坊のころから人間と一緒に暮らしてたから鬼人族については詳しくない』テイで、ごまかしましょう。」
「ああ、それいいね。嘘ではないし。」
よかった、困ったように笑っていた天女様が、ちゃんと微笑んでくださった。
さて、シシィの部屋で今後の作戦会議という名の状況確認をするため移動しようとしたが、天女様がお手洗いにいきたいとのことで、護衛を兼ねて案内をする。
……あぁ、シシィに頼んだほうがよかっただろうか。
嫌なものを天女様に見せてしまった。
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