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そして迎えた3日後、お見合い当日。
『あんたは普通にしてりゃいい』
そうは言われたものの、お見合いにおける普通とは何か、私はただただ考えていた。
「こちらの方が藤倉さんですか。お噂はかねがね」
お見合いはホテルのラウンジで行われた。こんなこと両親に言えるわけもなく、保護者代わりに社長が一緒だ。
向こうは件の副社長、市原英司さんとそのご両親。
「本日はうちの息子のためにありがとうございます。可愛らしいお嬢さんだ。ぜひ前向きに検討していただきたい」
「ほんと、大人しそうな子で嬉しいわ。私、娘が欲しかったのよね」
副社長のご両親、つまり社長ご夫妻は相当この話に乗り気らしい。圧を感じる。
「仕事は真面目ですし、他の社員からの信頼も厚いですよ」
社長!売り込まないで!ほんとに断らせる気あります?
うちの社長はあてにならない。かといって三島さんの作戦の内容、全く聞いてないからわからない。そもそも三島さんの言葉を完全に信用してしまってよかったんだろうか。
とりあえず今は、自分でなんとか上手いこと断る糸口を見つけるしかない。
唯一の救いは、お見合い相手の副社長がそこまで乗り気じゃ無さそうなところか。
見たところ、ご両親のゴリ押しっぽい。顔を合わせた時に、なんかガッカリそうな顔をされたから。
ごめんなさいね、美人じゃなくて。
「そろそろ身を固めてもらいたくてね。誰かいい人はいないかと思っていたら藤倉さんの噂を耳にしたんだ」
「ほら英司、背筋伸ばしなさい。ごめんなさいね、ほんとは若い2人に会話してもらう方がいいんでしょうけど」
若い……?
副社長は38と聞いている。いや、ご両親からすれば若いだろうけども……
「ところで、その髪は美容院に行かれたの?素敵ね」
社長婦人は私の髪を見て微笑んだ。
美容院?いや、違います。
「ここに来る途中に水やり中のホースの水がかかりまして……元々癖毛なんです」
憂鬱になりつつ歩いていたら、突然真横から水が飛んできた。元々癖毛で、アイロンで整えてきたはずが、濡れて乾いたら癖が戻ってしまった。
「あら、そうなの?癖毛でも素敵ねぇ」
……しまった。不運アピールしちゃいけなかった。
社長婦人は少し嬉しそうだ。私の不運が本当だとわかって嬉しいらしい。見れば、手首に3重くらいブレスレットを付けていらっしゃる。持ち物にも開運目的っぽいシールがぺたぺた貼ってあった。
「素直ないい人じゃないか。英司、お前も何か言ったらどうだ」
そう言う社長の持ち物にも、婦人同様よくわからない柄のシールが貼ってあったり、鞄にはお守りがジャラジャラ付いている。
この人たちは私が特別だと信じているんだろうか。
期待されても困る。それに、求められてるのは私じゃなくて、「運気」だ。それこそ、ブレスレットやシールを貼ったものを身につける感覚なんだろう。
「あの、私……」
「あれ、英司さんじゃないですか~」
少し離れたところから声がした。
見ると、少し派手目の女性グループのひとりがこちらを見ていた。
「え、あっ、ユキちゃん」
副社長はその女性、ユキさんを見て、なぜかたじろいだ。
ユキさんは真っ直ぐこちらに近づいてくる。
「誰ですかぁ、その若い子。私が一番って言ってくれたじゃないですか」
「いや、これは母が……」
「指輪も買ってくれて、本気なんだなって私期待してたんですよ?」
……なにこの状況。俗に言う修羅場ってやつ?
社長ご夫妻は突然のことに固まっていた。一方うちの社長は、驚きながらもどこか期待を込めた表情でその女性を見ている。
「どうしたのユキ……って、英司さん?あれ、そもそもユキあんた英司さんとどういう関係なの?」
そしてなぜかまたひとり増えた。副社長はその女性をミレイちゃんと呼んだ。
「土地買ったから、私のために家建ててやるって言ってたじゃないですか」
「え、なにそれ。本命ミレイだったの?っていうか、他のお店に行くのは付き合いだって……」
「はぁ?こっちが驚きなんですけど。英司さんは特別だったのに」
「ちょっと英司、どういうことなの?悪縁は早く断ちなさいって言ったわよね?そんなだからあなたは……」
「お袋には関係ねぇだろ!」
「落ち着け2人とも」
そんなこんなで、一気にお見合いどころではなくなってしまった。
騒ぎになっている間に、私と社長は挨拶もそこそこに修羅場から離脱。
その直前に偶々ユキさんと目が合い、意味深な目配せをされた。まさか……
『あんたは普通にしてりゃいい』
そうは言われたものの、お見合いにおける普通とは何か、私はただただ考えていた。
「こちらの方が藤倉さんですか。お噂はかねがね」
お見合いはホテルのラウンジで行われた。こんなこと両親に言えるわけもなく、保護者代わりに社長が一緒だ。
向こうは件の副社長、市原英司さんとそのご両親。
「本日はうちの息子のためにありがとうございます。可愛らしいお嬢さんだ。ぜひ前向きに検討していただきたい」
「ほんと、大人しそうな子で嬉しいわ。私、娘が欲しかったのよね」
副社長のご両親、つまり社長ご夫妻は相当この話に乗り気らしい。圧を感じる。
「仕事は真面目ですし、他の社員からの信頼も厚いですよ」
社長!売り込まないで!ほんとに断らせる気あります?
うちの社長はあてにならない。かといって三島さんの作戦の内容、全く聞いてないからわからない。そもそも三島さんの言葉を完全に信用してしまってよかったんだろうか。
とりあえず今は、自分でなんとか上手いこと断る糸口を見つけるしかない。
唯一の救いは、お見合い相手の副社長がそこまで乗り気じゃ無さそうなところか。
見たところ、ご両親のゴリ押しっぽい。顔を合わせた時に、なんかガッカリそうな顔をされたから。
ごめんなさいね、美人じゃなくて。
「そろそろ身を固めてもらいたくてね。誰かいい人はいないかと思っていたら藤倉さんの噂を耳にしたんだ」
「ほら英司、背筋伸ばしなさい。ごめんなさいね、ほんとは若い2人に会話してもらう方がいいんでしょうけど」
若い……?
副社長は38と聞いている。いや、ご両親からすれば若いだろうけども……
「ところで、その髪は美容院に行かれたの?素敵ね」
社長婦人は私の髪を見て微笑んだ。
美容院?いや、違います。
「ここに来る途中に水やり中のホースの水がかかりまして……元々癖毛なんです」
憂鬱になりつつ歩いていたら、突然真横から水が飛んできた。元々癖毛で、アイロンで整えてきたはずが、濡れて乾いたら癖が戻ってしまった。
「あら、そうなの?癖毛でも素敵ねぇ」
……しまった。不運アピールしちゃいけなかった。
社長婦人は少し嬉しそうだ。私の不運が本当だとわかって嬉しいらしい。見れば、手首に3重くらいブレスレットを付けていらっしゃる。持ち物にも開運目的っぽいシールがぺたぺた貼ってあった。
「素直ないい人じゃないか。英司、お前も何か言ったらどうだ」
そう言う社長の持ち物にも、婦人同様よくわからない柄のシールが貼ってあったり、鞄にはお守りがジャラジャラ付いている。
この人たちは私が特別だと信じているんだろうか。
期待されても困る。それに、求められてるのは私じゃなくて、「運気」だ。それこそ、ブレスレットやシールを貼ったものを身につける感覚なんだろう。
「あの、私……」
「あれ、英司さんじゃないですか~」
少し離れたところから声がした。
見ると、少し派手目の女性グループのひとりがこちらを見ていた。
「え、あっ、ユキちゃん」
副社長はその女性、ユキさんを見て、なぜかたじろいだ。
ユキさんは真っ直ぐこちらに近づいてくる。
「誰ですかぁ、その若い子。私が一番って言ってくれたじゃないですか」
「いや、これは母が……」
「指輪も買ってくれて、本気なんだなって私期待してたんですよ?」
……なにこの状況。俗に言う修羅場ってやつ?
社長ご夫妻は突然のことに固まっていた。一方うちの社長は、驚きながらもどこか期待を込めた表情でその女性を見ている。
「どうしたのユキ……って、英司さん?あれ、そもそもユキあんた英司さんとどういう関係なの?」
そしてなぜかまたひとり増えた。副社長はその女性をミレイちゃんと呼んだ。
「土地買ったから、私のために家建ててやるって言ってたじゃないですか」
「え、なにそれ。本命ミレイだったの?っていうか、他のお店に行くのは付き合いだって……」
「はぁ?こっちが驚きなんですけど。英司さんは特別だったのに」
「ちょっと英司、どういうことなの?悪縁は早く断ちなさいって言ったわよね?そんなだからあなたは……」
「お袋には関係ねぇだろ!」
「落ち着け2人とも」
そんなこんなで、一気にお見合いどころではなくなってしまった。
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