幸薄女神は狙われる

古亜

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帰ってすぐに私は三島さんに電話をした。

『うまくいったか』
「はい。お詫びに、と商品券までいただいてしまいました」

ホテルのエントランスあたりでお詫びの電話がかかってきて、その後直接社長ご夫妻に揃って頭を下げられた。
当然あんなことの後なので見合い話はなかったことになり、さらに迷惑料に、とホームセンターの商品券をもらった。その額5万円。

「女性2人は誰だったんですか?」
『あの副社長のお気に入りの店の女だ。あちこちで嬢を口説いてるって話だったからな。飯代と小遣いバイト代渡してやらせた』

むしろ、あんなのと見合いをさせられて可哀想と協力的だったらしい。最後の目配せはそれだったのか。

「お陰様で向こうからお断りをいただけました」
『命の恩人のあんたの役に立てたんならよかったよ』
「あ、でもお金……三島さんがあのお二人にお渡ししたんですよね?」

いくらかわからないけど、私のためにお金を払ってくれたことに変わりはないのでお返ししたい。まああんまり高いと困るけど……

『返す必要はねぇよ。俺が勝手にやったんだ』
「じゃあせめてこの商品券、三島さんのおかげなので」
『一番迷惑被ったのはあんただろ?あんたが……ん?ちょっと待て』

電話の向こうで誰かに呼ばれたらしい。三島さんの声が遠くなる。

『悪い、客が来た。じゃあな。妙な見合い話は断れよ』

それを最後に電話は切れた。

「本当にありがとうございました」

もう聞こえていないとわかっていたけど、気付けば言葉が漏れていた。
三島さんに相談してなかったら、今頃あの婦人のゴリ押しに負けていたかもしれない。
……とはいえ、三島さんとはもうこれっきりだ。もう電話することはないよね。
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