幸薄女神は狙われる

古亜

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そして、気付けば私のその醜態VTRの放送は今夜に迫っていた。
話題になるたびに「ああ、あれが全国に……」と頭を抱えて叫びたくなる。
会社でも今日は社長命令でノー残業デーにされた。別に数時間残業したところで間に合うと思うけど、内心そう思いつつ、早退したいなーなんて思いながらキーボードを叩いていた時だった。

「ねぇ!ちょっと見てよこれ!」

ちょっと上の空になりながら仕事をしていたら、突然誰か……鳴海さんが突進してきた。
その手にはスマホが握られている。

「どうかしました?」

鳴海さんに促されるまま画面を見ると、今話題になってるニュースの項目の中に、あのキラキラアイドルの名前があった。
タップして詳しく見てみると、どうやら薬をやっていたらしい。加えて同棲していた恋人と、と報道されたせいで、彼女がいたのかという意味でも燃え上がっていた。

「え、じゃあ藤倉さんの取材どうなるの?」

隣から画面を覗き込んでいた平野さんが思わずといった様子で声を上げる。

「映ってるところだけカットするとか?どうなるんだろうね」

今日は帰ったらテレビの前で放送を待とう。社内全体がそんな雰囲気になっていたくらいなので、その衝撃は大きかった。
案の定、テレビ局からすぐ社長あてに電話があったらしい。
社長から正式に今回の取材分はカットされるという連絡があった。
内心ほっと胸を撫で下ろす私と、残念そうな同僚達。

「せっかくいいお酒とつまみ用意したのに」
「友達に出るかもって言っちゃった」
「藤倉さんちょっとこの11連ってボタン押してくれない?」
「写真撮ってもらったけど、自慢できなくなっちゃった」
「え、追加注文?はい、はい……」
「親戚になくなったって言っとくか」

みんな似たような反応……と思ったら、なんかどさくさに紛れて違う事も起こってる気がする。
なんにせよ、私としては放送されないから安心だけど。
まさか放送直前にこんなことになるなんて……あ。

「ちょ、ちょっと私も身内に電話をっ!」

いくらなんでもタイミングが良すぎやしないか。私には思いっきり心当たりがある。
私は休憩スペースに飛び込み、周囲に誰もいないことを確認して心当たり……三島さんに電話をかける。
しばらく鳴らしてみたけど出ない。忙しいんだろうか。また仕事終わりに電話しよう。
今日は返事がなくても、明日くらいには返事が来るかな。そう考えていたけれど、三島さんから返事があったのは1週間後のことだった。
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