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あれ?私、三島さんに対してさっき結構失礼なことを言ってなかった?
安心してきたからだろうか、三島さんに抱きしめられながら、私は己の言動を振り返って猛省していた。
私のものになれって、お前は何様だって話ですよね。
焦っていたとはいえもうちょっとマシな台詞があった気がする。
恥ずかしくなって腕を離したけれど、三島さんが離してくださらない。
「あの、そろそろ寝ます、ね?私はソファーで寝ますから」
「……それなら俺は床で寝るが?」
所有物が主人より上で寝るのはおかしいだろ、と三島さんはさも当然のように言う。
違いますって、所有物だなんて思ってませんて!
「あれは言葉のあやです!対等……いや、私の方が居候みたいなものですし……」
「居候なら家主の言うこと聞けるだろ」
「うっ……」
返す言葉がない。
結局、私がベッドで寝ることになった。
程よい硬さのマットレスの上で横たわって目を閉じてみる……けど、寝られるはずもなく。
セミダブルらしき大きさで広めのベッドは、ゴロゴロ寝返りをうっても落ちることはない。落ち着かないまま仰向けになったり横になったりを繰り返していたら、喉が渇いてきた。
起き上がってそろそろとリビングに行くとまだ明るくて、ソファーに腰掛けていた三島さんが振り向いた。
「どうした」
「ええと、喉が渇いて」
「そうか。冷蔵庫にまだ水あったはずだから飲め。冷えるんなら確かシンクの下に箱で買ったやつが入ってる」
言われたとおりシンクの下を開けると、水のペットボトルが整然と並んでいた。
「ありがとうございます」
一本を貰って、全部は飲めないのでグラスに注ぐ。
「あの、寝づらくないですか、ソファー……」
「たまに寝てるから気にすんな。そうだ、俺にも一杯もらえるか」
「は、はい」
それくらい喜んでさせていただきますとも。三島さんのグラスも用意して水を注いで、自分の分とあわせて運ぶ……けど、ちょっと入れすぎたかもしれない。
そろっと運んでいると、突然明かりが消えた。
一瞬のことですぐ元に戻ったけど、それに気を取られた私は、事態に気づいても短く声を上げることしかできなかった。
「あ……」
グラスの中身が宙を舞う。
それは見事な弧を描いて、三島さんがソファーで寝る用にと用意していた毛布に落下した。
ビシャっという水音が虚しく響く。
三島さんもその一部始終をなすすべなく眺めて、ひと言。
「運が悪かったな」
と発するのみだった。
少し遅れて、水だから乾かすだけでいいと言ってくれたものの、がっつり濡れてしまった。すぐには乾かないだろう。
「すみませんっ!」
「停電のせいで、あんたは悪くねぇよ。俺が頼んだしな」
そう言ってくれるものの、来客を想定していないからか余分な毛布はないらしい。
「暖房入れてるし、大丈夫だろ」
「でも、私のせいで」
暖房なしでも、何か羽織ったりするものは必要では。
もしこれで三島さんが風邪引いたりしたら……でもベッドの掛け布団使ってくださいって言っても聞いてもらえないだろうし……
「えっと、私、端っこで寝るので……寝相は悪くないはずなので、狭い以外はご不便おかけしないかと」
「それはさすがに……」
「いびきもかきません。たぶん。うるさかったらソファーに放り出してください!」
こんなのまま状況じゃ罪悪感で確実に寝れない。ちょっと大きい人形くらいに思っていただければ……
「いや、俺が起きて……いや、でもなぁ……」
三島さんはため息を吐きつつ、ゆっくり頷いた。
安心してきたからだろうか、三島さんに抱きしめられながら、私は己の言動を振り返って猛省していた。
私のものになれって、お前は何様だって話ですよね。
焦っていたとはいえもうちょっとマシな台詞があった気がする。
恥ずかしくなって腕を離したけれど、三島さんが離してくださらない。
「あの、そろそろ寝ます、ね?私はソファーで寝ますから」
「……それなら俺は床で寝るが?」
所有物が主人より上で寝るのはおかしいだろ、と三島さんはさも当然のように言う。
違いますって、所有物だなんて思ってませんて!
「あれは言葉のあやです!対等……いや、私の方が居候みたいなものですし……」
「居候なら家主の言うこと聞けるだろ」
「うっ……」
返す言葉がない。
結局、私がベッドで寝ることになった。
程よい硬さのマットレスの上で横たわって目を閉じてみる……けど、寝られるはずもなく。
セミダブルらしき大きさで広めのベッドは、ゴロゴロ寝返りをうっても落ちることはない。落ち着かないまま仰向けになったり横になったりを繰り返していたら、喉が渇いてきた。
起き上がってそろそろとリビングに行くとまだ明るくて、ソファーに腰掛けていた三島さんが振り向いた。
「どうした」
「ええと、喉が渇いて」
「そうか。冷蔵庫にまだ水あったはずだから飲め。冷えるんなら確かシンクの下に箱で買ったやつが入ってる」
言われたとおりシンクの下を開けると、水のペットボトルが整然と並んでいた。
「ありがとうございます」
一本を貰って、全部は飲めないのでグラスに注ぐ。
「あの、寝づらくないですか、ソファー……」
「たまに寝てるから気にすんな。そうだ、俺にも一杯もらえるか」
「は、はい」
それくらい喜んでさせていただきますとも。三島さんのグラスも用意して水を注いで、自分の分とあわせて運ぶ……けど、ちょっと入れすぎたかもしれない。
そろっと運んでいると、突然明かりが消えた。
一瞬のことですぐ元に戻ったけど、それに気を取られた私は、事態に気づいても短く声を上げることしかできなかった。
「あ……」
グラスの中身が宙を舞う。
それは見事な弧を描いて、三島さんがソファーで寝る用にと用意していた毛布に落下した。
ビシャっという水音が虚しく響く。
三島さんもその一部始終をなすすべなく眺めて、ひと言。
「運が悪かったな」
と発するのみだった。
少し遅れて、水だから乾かすだけでいいと言ってくれたものの、がっつり濡れてしまった。すぐには乾かないだろう。
「すみませんっ!」
「停電のせいで、あんたは悪くねぇよ。俺が頼んだしな」
そう言ってくれるものの、来客を想定していないからか余分な毛布はないらしい。
「暖房入れてるし、大丈夫だろ」
「でも、私のせいで」
暖房なしでも、何か羽織ったりするものは必要では。
もしこれで三島さんが風邪引いたりしたら……でもベッドの掛け布団使ってくださいって言っても聞いてもらえないだろうし……
「えっと、私、端っこで寝るので……寝相は悪くないはずなので、狭い以外はご不便おかけしないかと」
「それはさすがに……」
「いびきもかきません。たぶん。うるさかったらソファーに放り出してください!」
こんなのまま状況じゃ罪悪感で確実に寝れない。ちょっと大きい人形くらいに思っていただければ……
「いや、俺が起きて……いや、でもなぁ……」
三島さんはため息を吐きつつ、ゆっくり頷いた。
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