4 / 11
若様は合わせたい2
しおりを挟む
「おかしいですね。加減しましたよ?」
月葉会の男と比較するな。あいつらと違って、一般人はお前に殴られ……今回は突き飛ばされ慣れてねぇんだから。
俺だって彩葉とやり合うのはごめんだ。
まあ一部のやつら、特に沢×2は受け身が上達したとか言ってるが。
「しかも若様に向かって邪魔、ちびっ子とおっしゃいましたよね。邪魔とはどういうことですか。確かに若様は可愛らしいサイズですが、いつか立派な旦那様になられます。今は可愛いらしいですが!」
……俺のために怒ってるんだよな?煽ってるんじゃねぇよな?邪魔云々も、小さいから邪魔になるわけないだろって意味で言ってるわけじゃないよな?
それにその馬鹿伸びてて聞いてねぇだろ。俺が聞いてるだけだぞ。
「もう十分だろ」
「……若様がそうおっしゃるのでしたら」
これ以上言わせたら俺が流れ弾食らうだけだからだよ。不服そうに言うな。
「ですが最後に一言だけ」
彩葉は宙吊りにした男を笑顔で睨むと、くるっと俺……ではなく俺の後ろで呆けている馬鹿集団残3をを見た。
「次はありませんと、この方にお伝えください」
背後で馬鹿どもがガクガク震えながら何度も頷いている。
彩葉はその反応を確認して馬鹿の胸ぐらを掴んでいた手を離した。馬鹿は無様に地面に落ちる。
その音でハッと我に帰ったらしい馬鹿集団残り3人は一目散に駆け出した。地面に伸びている馬鹿は放置されて彩葉の足元に転がったまま。
「……人望ねぇな」
伸びている馬鹿がほんの少し哀れだった。
「若様は今お帰りですか?」
何事もなかったかのように彩葉は言う。足元に転がる馬鹿のことはもはや眼中にない。
「ああ。彩葉は買い出しの帰りか」
家戻るんなら、どうせ方角同じだからまあ並んで……違う。同じ方に向かって歩くよな。ただ歩くだけってのも時間が勿体ねぇから、話くらいしてもいいよな。たまには使用人の話も聞いた方がいいだろ。
別に喋りたいとか思ってるわけじゃねぇ。
道の途中曲がったら回転寿司があるとか、教えたいわけじゃねぇけど興味ありそうだから、行きたいと言えばまあ連れて行ってやらなくも……
「帰るつもりだったのですが、先ほどの方々を見てゴミ袋とお部屋用のホウキとちゅー……いえ、猫のおやつは私の趣味なのでもちろんお小遣いで買います!とにかく買わなければならないのを思い出したので、ホームセンターに寄ろうかと」
いや、猫の餌くらい誰も気にしねぇと思うぞ。
でもホームセンターか。方角は真逆だ。付いていくってのはおかしい。いや、俺だって買い物付いてくほど暇じゃねぇ。宿題は……終わってるけど。
「はっ、何か私にご用件が?お買物は明日でも構いませんから、ご一緒します。荷物もお持ちしましょうか」
「用はねぇよ。聞いただけだ」
「ですがお荷物が、若様の肩の負担になって成長が阻害されてしまうかも……」
「そこまでじゃねぇ!この程度で止まってたまるか!」
これで成長止まるんなら日本人の大半が低身長だ。ランドセルのせいで俺の成長が遅いと思ってんのか。これから伸びるし追い抜くんだよ!
彩葉は不安そうにしつつもそれならと頷いた。必然的に俺の視線は上に、彩葉の視線は下にいく。
くそっ、どうして……
彩葉と同じ高さ、いやそれより高くなって、彩葉の視線を上げる。子供だなんて言わせねぇし、思わせねぇ。あいつの方が生まれたのがちょっと早いってだけじゃねぇか。
そう思っても、歳の差は絶対に埋まることはない。あいつにとって俺はずっと小さい若様なのか?いや、認めねぇ。そんなもん。
小さいなんて思わせねぇ。
「……若様、もしかして体調がすぐれないのですか?気付かず申し訳ありません。どうぞ」
そう言って彩葉はしゃがんで背中を向ける。俺に、乗れってことか。
「違ぇよ。少し考えてただけだ」
とっとと行けよ、ホームセンター。
俺くらい軽々運べる背中が目の前にある。
それが悔しかった。
「それならよいのですが……お気をつけてお帰りください。もし何かあれば、恐らくですが沢田さんが先ほどからあちらにいらっしゃいますから」
……は?
さっと俺は振り向いた。慌てた様子で電信柱の影に隠れる人影が見える。
「……沢田」
見てたのかよお前。
「では、失礼します」
彩葉は何事もなかったかのようにぺこりと頭を下げると、俺とは反対の方向に歩いていった。
その後ろ姿を見送り、続いて電信柱を睨む。
「いや、今日の護衛が俺だっただけですよ」
電信柱の影から嫌々出てきた沢田はちらっとまだ伸びたままの馬鹿を見下ろした。
「よく吹っ飛びましたね」
「まあ気絶してるだけで死にはしねぇだろ」
その辺りの加減はしているのだろう。彩葉に吹き飛ばされた人間は数知れないが、不思議と大怪我をしたやつはいない。
「にしても、残念でしたね」
「何がだ」
「彩葉ちゃんと放課後デートしたかったんですよね……痛っ!」
反射的に俺は沢田の脛を蹴っていた。
「た、たまたまタイミングが一緒だっただけだ!何がデートだ脳内花畑野郎!」
「花畑って酷い言われよう……いや、すみませんでした」
まるで俺が彩葉とデートしたいみたいじゃねぇか。なんだよこの甘ったるい響き。
沢田が何かぶつぶつ言っているが、気にするだけ無駄……あ?つんでれ?なんだそれ。何かの隠語か?
なぜかムカついたからもう反対側の脛も蹴っておく。呻き声を上げる沢田を放置して俺は家に帰った。
月葉会の男と比較するな。あいつらと違って、一般人はお前に殴られ……今回は突き飛ばされ慣れてねぇんだから。
俺だって彩葉とやり合うのはごめんだ。
まあ一部のやつら、特に沢×2は受け身が上達したとか言ってるが。
「しかも若様に向かって邪魔、ちびっ子とおっしゃいましたよね。邪魔とはどういうことですか。確かに若様は可愛らしいサイズですが、いつか立派な旦那様になられます。今は可愛いらしいですが!」
……俺のために怒ってるんだよな?煽ってるんじゃねぇよな?邪魔云々も、小さいから邪魔になるわけないだろって意味で言ってるわけじゃないよな?
それにその馬鹿伸びてて聞いてねぇだろ。俺が聞いてるだけだぞ。
「もう十分だろ」
「……若様がそうおっしゃるのでしたら」
これ以上言わせたら俺が流れ弾食らうだけだからだよ。不服そうに言うな。
「ですが最後に一言だけ」
彩葉は宙吊りにした男を笑顔で睨むと、くるっと俺……ではなく俺の後ろで呆けている馬鹿集団残3をを見た。
「次はありませんと、この方にお伝えください」
背後で馬鹿どもがガクガク震えながら何度も頷いている。
彩葉はその反応を確認して馬鹿の胸ぐらを掴んでいた手を離した。馬鹿は無様に地面に落ちる。
その音でハッと我に帰ったらしい馬鹿集団残り3人は一目散に駆け出した。地面に伸びている馬鹿は放置されて彩葉の足元に転がったまま。
「……人望ねぇな」
伸びている馬鹿がほんの少し哀れだった。
「若様は今お帰りですか?」
何事もなかったかのように彩葉は言う。足元に転がる馬鹿のことはもはや眼中にない。
「ああ。彩葉は買い出しの帰りか」
家戻るんなら、どうせ方角同じだからまあ並んで……違う。同じ方に向かって歩くよな。ただ歩くだけってのも時間が勿体ねぇから、話くらいしてもいいよな。たまには使用人の話も聞いた方がいいだろ。
別に喋りたいとか思ってるわけじゃねぇ。
道の途中曲がったら回転寿司があるとか、教えたいわけじゃねぇけど興味ありそうだから、行きたいと言えばまあ連れて行ってやらなくも……
「帰るつもりだったのですが、先ほどの方々を見てゴミ袋とお部屋用のホウキとちゅー……いえ、猫のおやつは私の趣味なのでもちろんお小遣いで買います!とにかく買わなければならないのを思い出したので、ホームセンターに寄ろうかと」
いや、猫の餌くらい誰も気にしねぇと思うぞ。
でもホームセンターか。方角は真逆だ。付いていくってのはおかしい。いや、俺だって買い物付いてくほど暇じゃねぇ。宿題は……終わってるけど。
「はっ、何か私にご用件が?お買物は明日でも構いませんから、ご一緒します。荷物もお持ちしましょうか」
「用はねぇよ。聞いただけだ」
「ですがお荷物が、若様の肩の負担になって成長が阻害されてしまうかも……」
「そこまでじゃねぇ!この程度で止まってたまるか!」
これで成長止まるんなら日本人の大半が低身長だ。ランドセルのせいで俺の成長が遅いと思ってんのか。これから伸びるし追い抜くんだよ!
彩葉は不安そうにしつつもそれならと頷いた。必然的に俺の視線は上に、彩葉の視線は下にいく。
くそっ、どうして……
彩葉と同じ高さ、いやそれより高くなって、彩葉の視線を上げる。子供だなんて言わせねぇし、思わせねぇ。あいつの方が生まれたのがちょっと早いってだけじゃねぇか。
そう思っても、歳の差は絶対に埋まることはない。あいつにとって俺はずっと小さい若様なのか?いや、認めねぇ。そんなもん。
小さいなんて思わせねぇ。
「……若様、もしかして体調がすぐれないのですか?気付かず申し訳ありません。どうぞ」
そう言って彩葉はしゃがんで背中を向ける。俺に、乗れってことか。
「違ぇよ。少し考えてただけだ」
とっとと行けよ、ホームセンター。
俺くらい軽々運べる背中が目の前にある。
それが悔しかった。
「それならよいのですが……お気をつけてお帰りください。もし何かあれば、恐らくですが沢田さんが先ほどからあちらにいらっしゃいますから」
……は?
さっと俺は振り向いた。慌てた様子で電信柱の影に隠れる人影が見える。
「……沢田」
見てたのかよお前。
「では、失礼します」
彩葉は何事もなかったかのようにぺこりと頭を下げると、俺とは反対の方向に歩いていった。
その後ろ姿を見送り、続いて電信柱を睨む。
「いや、今日の護衛が俺だっただけですよ」
電信柱の影から嫌々出てきた沢田はちらっとまだ伸びたままの馬鹿を見下ろした。
「よく吹っ飛びましたね」
「まあ気絶してるだけで死にはしねぇだろ」
その辺りの加減はしているのだろう。彩葉に吹き飛ばされた人間は数知れないが、不思議と大怪我をしたやつはいない。
「にしても、残念でしたね」
「何がだ」
「彩葉ちゃんと放課後デートしたかったんですよね……痛っ!」
反射的に俺は沢田の脛を蹴っていた。
「た、たまたまタイミングが一緒だっただけだ!何がデートだ脳内花畑野郎!」
「花畑って酷い言われよう……いや、すみませんでした」
まるで俺が彩葉とデートしたいみたいじゃねぇか。なんだよこの甘ったるい響き。
沢田が何かぶつぶつ言っているが、気にするだけ無駄……あ?つんでれ?なんだそれ。何かの隠語か?
なぜかムカついたからもう反対側の脛も蹴っておく。呻き声を上げる沢田を放置して俺は家に帰った。
0
あなたにおすすめの小説
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる