お客様はヤのつくご職業

古亜

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1章

23.後悔は先に立たない

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「ああああああ!ううっ……私は、私何をぉぉ……」

アパートの部屋に戻るなり、私はベッドに倒れこんで悶絶していた。

「とりあえず、フった?フっちゃった?私!」

枕に顔を埋めて、あー、えー、うー、と母音しか喋っていない。語彙力が一気に乳幼児まで低下した。
あの後、ふらついた足取りで昌治さんは外に出ていった。そしてしばらく大原さんと顔を見合わせ、蜘蛛の糸が切れて落ちる瞬間に楽しかった思い出の走馬灯を見てるみたいな表情になった大原さんの車でアパートまで送ってもらって、今に至る。
先程の出来事を思い返し、悶絶中。
迫田さんたちのことはめちゃくちゃ危なかったし怖かったんだけど、その後の衝撃の方が私には大きすぎて、大原さんが十分仕返し?してくれたから今はもうどうでもいい。見られたのもお腹だけだ。減るもんでもない。むしろ減るなら喜んで。
そう、今問題なのは、昌治さんをなんだか一方的にフってしまったことなのだ。
昌治さんのことは嫌いじゃない。そう、それは事実。むしろ、これまでのことは全部私のためにやってたのか、と気付いてしまって、むしろ、むしろっ……

「ちょっと、嬉しかった……?」

口に出したら、私の心臓と顔面に全血流が集中したみたいになる。熱い。
うん。このままこのことをずっと考えてたら、私はたぶん、頭が沸騰して死ぬ。
ダメだ、考えちゃダメだ。
自分で言ったじゃないか。住む世界が違いすぎるって。相手はヤクザ。私は何の力もない一般人。付き合うとか、そんなのあり得ないし、できる気がしない。さっきみたいに巻き込まれたら、私は何もできないし迷惑をかけるだけ。
それに歳も、たぶん十以上違うんじゃないかな。年齢とかそんなの基本的に気にしないけど、昌治さんに関しては私じゃ経験不足というか、釣り合わない。
考えちゃったら、考えちゃいけないところまで考えてしまう。
昌治さんは、好きになっちゃいけない人だ。
そう、好きになるわけないし、ましてや恋愛対象としての好きなんて、なるわけない。なっちゃいけない。
そしてこの間発していた奇声、もし隣人に聞かれてたら、頭壊れたと思われる。うるさくてごめんなさい。しばらく我慢願います。壊れてるんですみません。

「あああああっ!」

私はそうして、顔を知ってるレベルの隣人に平謝りしながら、ベッドの上で悶えていた。
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