43 / 132
1章
43.ヤクザさんのお風呂2
しおりを挟む
「大丈夫か?」
私が突然お湯に顔を叩きつけたからか、昌治さんの体がちょっと浮いて、私の方に向かおうとしていた。
「来ないでくださいっ!」
私は慌てて岩の陰に隠れた。入ってまだそんなに経ってないのに、顔が火照って熱い。
「……昨夜のことを怒ってるのか?」
不安そうに昌治さんは言った。
「昨夜は、やりすぎたと思ってる。初めてだろうし優しくしようと思ったんだが……どうにも、抑えがきかなくてな」
「そういうことを言ってるんじゃないです!」
あれに対して怒りとかそういった感情はない。むしろ……途中から、気持ちよくなってましたけど。あんなことされながら、好きだなとか思ったりしましたけどっ!
今はただ、恥ずかしいだけだ。あれだけ甘い、自分のじゃないみたいな声を聞かれて、体が勝手に動いて、ねだるようなことを言って、全部見られたんだ。恥ずかしくないわけがない。
それに対して動揺しているのは私だけっていうのも、なんだかずるい。
「私は大丈夫ですから!ほっといてくださいっ!」
我ながら意味わからないこと言ってるなとは思うけど、とにかく今は昌治さんの顔をまともに見ることも、ましてや見られるなんて耐えられない。
自分が今どういう顔をしているのかすらわからなかった。
「……わかった」
対する昌治さんの声は落ち着いていて、ますます私はどうすればいいのかわからなくなった。
気まずい沈黙が続く。
昌治さんにいったん出てほしいとお願いしようかと思ったけど、私は勝手に入っているので言いづらい。それに、見られたくないというのは私が一方的に思ってるだけで、もったいぶるほどの体でもない。変に意識してるみたいに思われるのは嫌だった。
いっそ真っ直ぐ出て行こうか。昌治さんは気にしてないんだし……いや、想像だけでも無理だ、と思いかけたところで、昌治さんが私の名前を呼んだ。
「……なんですか?」
「お前のアパートのことなんだが」
そういえば、あのあとどうなったんだろう。鍵とか閉める余裕なかったし、荒らされたりとか、大家さんに不審がられたりしていないだろうか。
「あそこにはもう住むな。ここに住め」
「え、でも、大学とかバイトとか、あるんですけど……」
確かにあそこに住み続けるのは無理なのはわかってる。だから違うアパートか学生寮に移ろうとは思ってはいた。バイトは、そこから近い違う店舗に変えるつもりだった。
というか、ここに住むってつまり、昌治さんと住むわけで、もはや同棲……
「バイトはやめろ。大学は、どうしても行きたいんなら送る」
「いや、でも皆さんに迷惑ですし……バイトも」
「それじゃあお前を守れないだろ。敵に回したのは一条会の会長、条野春斗だ。あいつはまだお前を諦めていない」
「う、それは……」
春斗さんのことは、正直信じたくない。でも昨日のことは事実で、昌治さんたちに助けてもらわなかったら危なかった。
引っ越したところで見つかってしまえば、私一人では抵抗できない。しかも捕まったら、昨晩のあれ以上に……ゾクリと背筋が震えた。
「お前を俺の目に届かないところに置く方が、俺にとっては迷惑だ」
「そうかもしれないですけど、でもここに住むってことは……」
「俺と住むのは、嫌か」
やはり昨晩の最後がまずかったのか、と昌治さんは呟く。あの……そこじゃないです。いや、気にはしますけども。
「嫌とかそういうのじゃないです。昌治さんのことはす、好きですけど……」
これは伝えておいた方がいいと思って言ったけど、なにこれ恥ずかしい!昨日は言えたような気がする。むしろ昨日の私よく言えたね!?
このもやもやをどう話せばいいのかと悩んでいたら、昌治さんの方も反応がなかった。すみませんはっきりしなくて。
どうしたものかと悶々としていたら、突然昌治さんが立ち上がった。
そしてなにやら、近付いてくる音がするんですが!
「昌治さん!来ないでくださいって……ちょっ!」
腕を掴まれて、昌治さんの方へ引き寄せられる。そのまましゃがんで、横から抱き締められた。
あの、裸なんですけど!色々と、障りがあるんですがっ!
「見てなけりゃいいんだろ」
「いや、こっちの方がなおさらダメですって!」
確かにお互いの背中しか見えてませんけど、明らかに見るよりアウトですって!
「離してください!」
「嫌だ」
そんな子供みたいに言ってもダメです!
「その……熱いんですけど!」
「そうか」
昌治さんが私を抱く力がなぜか強くなった。いや、離れてくださいって!
「やっと手に入ったんだ。離すわけねぇだろ」
耳元で囁かれて、お風呂のせいでもなく全身がカッと熱くなった。
何か言おうにも、途切れ途切れで言葉にならない。
「好きだ、楓。もうお前が何と言おうが、俺はお前を嫁にする」
「よ、嫁って……!」
話がいきなり飛躍しすぎじゃないですか!?間のなにかをぶっ飛ばしすぎですよ!?
「さすがに一回抱いたくらいでお前が俺のものになるなんて思っちゃいない。でもな、俺は本気だ。お前がその気になるまで待つが、諦めるつもりは毛頭ない」
「そそそ、そうですか……」
頭がショート寸前だ。この状況もだけど、追い討ちかけるみたいにさらに負荷がっ!
もう恥ずかしくて熱いんだかお風呂が熱いのかわからなくなってきた。
「とにかく、いったん離してくださいっ!」
結婚云々の前に、この状況じゃまともに頭が働かない。いったんお互いに落ち着きませんか!?
そう言ったら、渋々ながら昌治さんは体を離してくれた。離される間際に首を甘噛みされた気が……うん、そんな気がしただけかもしれない!そう思いたいっ!
私が突然お湯に顔を叩きつけたからか、昌治さんの体がちょっと浮いて、私の方に向かおうとしていた。
「来ないでくださいっ!」
私は慌てて岩の陰に隠れた。入ってまだそんなに経ってないのに、顔が火照って熱い。
「……昨夜のことを怒ってるのか?」
不安そうに昌治さんは言った。
「昨夜は、やりすぎたと思ってる。初めてだろうし優しくしようと思ったんだが……どうにも、抑えがきかなくてな」
「そういうことを言ってるんじゃないです!」
あれに対して怒りとかそういった感情はない。むしろ……途中から、気持ちよくなってましたけど。あんなことされながら、好きだなとか思ったりしましたけどっ!
今はただ、恥ずかしいだけだ。あれだけ甘い、自分のじゃないみたいな声を聞かれて、体が勝手に動いて、ねだるようなことを言って、全部見られたんだ。恥ずかしくないわけがない。
それに対して動揺しているのは私だけっていうのも、なんだかずるい。
「私は大丈夫ですから!ほっといてくださいっ!」
我ながら意味わからないこと言ってるなとは思うけど、とにかく今は昌治さんの顔をまともに見ることも、ましてや見られるなんて耐えられない。
自分が今どういう顔をしているのかすらわからなかった。
「……わかった」
対する昌治さんの声は落ち着いていて、ますます私はどうすればいいのかわからなくなった。
気まずい沈黙が続く。
昌治さんにいったん出てほしいとお願いしようかと思ったけど、私は勝手に入っているので言いづらい。それに、見られたくないというのは私が一方的に思ってるだけで、もったいぶるほどの体でもない。変に意識してるみたいに思われるのは嫌だった。
いっそ真っ直ぐ出て行こうか。昌治さんは気にしてないんだし……いや、想像だけでも無理だ、と思いかけたところで、昌治さんが私の名前を呼んだ。
「……なんですか?」
「お前のアパートのことなんだが」
そういえば、あのあとどうなったんだろう。鍵とか閉める余裕なかったし、荒らされたりとか、大家さんに不審がられたりしていないだろうか。
「あそこにはもう住むな。ここに住め」
「え、でも、大学とかバイトとか、あるんですけど……」
確かにあそこに住み続けるのは無理なのはわかってる。だから違うアパートか学生寮に移ろうとは思ってはいた。バイトは、そこから近い違う店舗に変えるつもりだった。
というか、ここに住むってつまり、昌治さんと住むわけで、もはや同棲……
「バイトはやめろ。大学は、どうしても行きたいんなら送る」
「いや、でも皆さんに迷惑ですし……バイトも」
「それじゃあお前を守れないだろ。敵に回したのは一条会の会長、条野春斗だ。あいつはまだお前を諦めていない」
「う、それは……」
春斗さんのことは、正直信じたくない。でも昨日のことは事実で、昌治さんたちに助けてもらわなかったら危なかった。
引っ越したところで見つかってしまえば、私一人では抵抗できない。しかも捕まったら、昨晩のあれ以上に……ゾクリと背筋が震えた。
「お前を俺の目に届かないところに置く方が、俺にとっては迷惑だ」
「そうかもしれないですけど、でもここに住むってことは……」
「俺と住むのは、嫌か」
やはり昨晩の最後がまずかったのか、と昌治さんは呟く。あの……そこじゃないです。いや、気にはしますけども。
「嫌とかそういうのじゃないです。昌治さんのことはす、好きですけど……」
これは伝えておいた方がいいと思って言ったけど、なにこれ恥ずかしい!昨日は言えたような気がする。むしろ昨日の私よく言えたね!?
このもやもやをどう話せばいいのかと悩んでいたら、昌治さんの方も反応がなかった。すみませんはっきりしなくて。
どうしたものかと悶々としていたら、突然昌治さんが立ち上がった。
そしてなにやら、近付いてくる音がするんですが!
「昌治さん!来ないでくださいって……ちょっ!」
腕を掴まれて、昌治さんの方へ引き寄せられる。そのまましゃがんで、横から抱き締められた。
あの、裸なんですけど!色々と、障りがあるんですがっ!
「見てなけりゃいいんだろ」
「いや、こっちの方がなおさらダメですって!」
確かにお互いの背中しか見えてませんけど、明らかに見るよりアウトですって!
「離してください!」
「嫌だ」
そんな子供みたいに言ってもダメです!
「その……熱いんですけど!」
「そうか」
昌治さんが私を抱く力がなぜか強くなった。いや、離れてくださいって!
「やっと手に入ったんだ。離すわけねぇだろ」
耳元で囁かれて、お風呂のせいでもなく全身がカッと熱くなった。
何か言おうにも、途切れ途切れで言葉にならない。
「好きだ、楓。もうお前が何と言おうが、俺はお前を嫁にする」
「よ、嫁って……!」
話がいきなり飛躍しすぎじゃないですか!?間のなにかをぶっ飛ばしすぎですよ!?
「さすがに一回抱いたくらいでお前が俺のものになるなんて思っちゃいない。でもな、俺は本気だ。お前がその気になるまで待つが、諦めるつもりは毛頭ない」
「そそそ、そうですか……」
頭がショート寸前だ。この状況もだけど、追い討ちかけるみたいにさらに負荷がっ!
もう恥ずかしくて熱いんだかお風呂が熱いのかわからなくなってきた。
「とにかく、いったん離してくださいっ!」
結婚云々の前に、この状況じゃまともに頭が働かない。いったんお互いに落ち着きませんか!?
そう言ったら、渋々ながら昌治さんは体を離してくれた。離される間際に首を甘噛みされた気が……うん、そんな気がしただけかもしれない!そう思いたいっ!
45
あなたにおすすめの小説
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる