腐れヤクザの育成論〜私が育てました〜

古亜

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第0段階

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コピー機のインクトナーが切れた。
電子音を響かせながら印刷が止まる。

「おう……」

切れたのは黒だから、こいつがいないと話にならない。しかし残機はゼロ。時刻は22時で、大抵の店は閉まってる。
ため息をついてとりあえず印刷できた分をパラパラとめくる。

『お前の相手は俺だけだ②』
作 ねこみや

ヤクザの車に傷を付けた代償に一晩組長と共に過ごしたら、そのまま気に入られてしまった幸薄系青年の創作BL。その2話目。作者のねこみやは、私。
本命が追川美耶で、「みや」が猫の鳴き声っぽいからくっ付けて「ねこみや」だ。高校時代に1時間くらい悩んでつけて、なんやかんやで愛着があるのでずっと使っている。
……と、そんなのはどうでもいい。問題はコピー機だ。
ひと通り描き終わったから、仕上げの前に印刷して全体を確かめようとしていたんだけど、これじゃ作業が進まない。
けど明日はとある漫画の推しの誕生日のお祝いイラストに手を付けて、大学の小レポートを書かなければ……黒のインク買ってきて印刷していたら時間がなくなる。
どこからか先にそっちやればいいじゃないかという心の声がするけど、単に気分じゃない。特にレポート。
私は印刷しようとしていたファイルをUSBメモリに保存して立ち上がった。
こういう時のための、コンビニのコピー機。この時間なら誰もいないでしょう。きっと。
別に印刷物を見られる事はないと思うけど、さすがに一般の方?の前では見せられない。2話目だからわりと際どいシーンから始まってるし。
というわけで、アパートを出て徒歩5分ほどのところにあるコンビニで印刷作業を開始。さすが業務用、小気味よく紙が吐き出されるし、印刷もくっきりしてる気がする。
一応外から中身が見えないように、持ってきた茶封筒に入れておく。そしてコピー機だけ使って出ていくのはなんとなく気が引けたので、明日の朝ごはん用のパンを買ってコンビニを出た。
買ったのはクロワッサン。パッケージが気になってたアニメとコラボしてたので、一番沼りそうなキャラデザの人にした。
この人、パッケージだと気弱な子犬系な見た目してるのに、たまにTLに流れてくるイラスト見る限り攻めなんだよな。いや、たまに逆カプもあるけど……アニメ及び原作未履修だから何も言えない。
履修したいけど、新しいの観てハマったらしばらくそれしか手に付かなくなるタイプだからなぁ。
とりあえず今は目先の原稿とイラストに集中しなくては。帰ったらひと通り……うぉっ!
考え事してたら誰かとぶつかった。その拍子に持ってたクロワッサンと茶封筒が落ちる。

「す、すみません……ひっ!」

ぶつかったお相手、めちゃくちゃ怖かった。人相が悪いというか、目付きと雰囲気?近寄ってはいけないオーラがすごい。何かしらのフィールドを展開してる。
しかもオールバックに黒スーツとは、いかにもって感じ……と思わず凝視していたら、頬から顎にかけて走っている傷痕に気付いてしまった。

「し、失礼しましたっ!」

私は落ちている封筒とクロワッサンを引っ掴んで、逃げるようにその場を離れる。
くっ、袋代ケチって手で持って帰るんじゃなかった。封筒とクロワッサンの袋を合わせて指先でつまむみたいに持ってたせいで、ぶつかったときにつるっと滑ってしまった。
引っ掴んだせいでクロワッサンも一個握り潰したみたいになってしまっている。悲しい。
まあでも、とりあえず原稿は無事そうでよか……え、あ、ちょっ!?何この封筒。なんかきっちり紐でくるくるして留めてある。
え、中身……私の原稿じゃない!なんかよくわからないけど、人の名前とか電話番号とか個人情報がずらっと羅列されてる。
私は慌てて書類を元に戻して、見てない風を装うために紐でくるくる留めなおしながらコンビニに向かって走った。こんな全力疾走したの高校の部活以来だろうか。
たかだか徒歩5分の距離がこんなにキツイとは……歳、か。いや、単なる運動不足だけど。
息を切らして駐車場に戻ると、さっきぶつかった男の人がちょうどコンビニから出てくるところだった。

「ああ、来たか」

その台詞を言われるという事は、お互い取り違いに気付いたということですね。
封筒の大きさといい中身の厚みも近かった。コンビニの灯りで照らされた封筒は、よく見ると私のやつの方が若干茶色が濃い。

「すみません、慌ててて、途中で気付いて……」
「あっ、ああ。気ぃつけろ」

茶封筒の交換はすぐ成立した。ちらっと中身を確認すると、間違いなく私の原稿全24ページが入っていた。

「失礼しました!」

そう言い残して再び逃走。
あの人は関わったらいけないタイプだ。2次元在住でも曲者、バイオレンス、狂犬、いずれにせよ危険人物カテゴリに入る方……2次元なら好物だけど、3次元リアルでは出会いたくない。
属性持ちは2次元で十分です。
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