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一章 転生と魔女
1-3 破滅フラグに満ちた人生
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……うぉう、壮絶だなこの子。そしてよく生きてたなルティアナ。……いや、もしかしたら私に中身が変わってるから本物はすでに死んでしまっているのかもしれないけれど……
とりあえず、私はおそらくあの女の人に崖から落ちて死にかけたところを救われたのだろう。
「……うーん…… もう一回人生やれるのは嬉しいんだけどなぁ……」
思わず転生してしまい、もう一度生きることになったのは正直言ってとーっても喜ばしい。
ルティアナとしての意識はなく、ルティアナが苦しんだ思い出も本を読んだときの知識のようなものとしてしか知っていない。完全に人生二週目なのだ。一周目はお世辞にも幸せとは言い難い、病床で一生を終えるという悲しい人生だったから、棚ぼたって感じ。
ただ、このルティアナ、一つ問題がある。
ルティアナのことを思い出すきっかけになった小説、前世で私のお気に入りだったライトノベル、「光の聖女と火の王子」。平民の主人公が【光】魔法に非常に秀でた、神の加護を持つ魔法使い、公称「聖女」だと判明し、学園に入学することとなり、そこで王子と出会い恋に落ち、共に魔王を倒し結ばれるという、いわゆる異世界系のシンデレラストーリーだ。
この作品の中で、ルティアナは悪役なのだ。
通称「死の森の魔女」。代償を一つ差し出すことで願いを叶えてくれる悪い魔女。作中ではあまり生い立ちは詳しく語られなかった悪役だ。
作中にあった描写は、誰にも愛されなかったせいで、ルティアナは心が弱く、脆く、傷ついているということに魔王が気付き、心に漬け込み【闇】魔法で操り味方にしたということくらい。
最後には、さらにルティアナが魔王の命令で操って協力者にした悪役令嬢ポジのご令嬢(それも前世の私の推し)を巻き込んで、主人公に討伐という名目を元に殺される。
……うぅ、最悪だね。
破滅フラグ満載なこの人生、どうしてくれよう。既に魔王に復活のための利用材料として狙われているだなんて。それもそもそもこの世界では黒髪ってだけで生きにくいっていう…… 前の世界なら黒髪なんて普通だったのに。
うぅぅ、と唸りながら埃っぽいベッドの上で頭を抱えていると、どこかから突然声がした。
『お腹は空いていないかい』
「……は?」
『なにか食べたいなら下に降りておいで』
『……ってラピスが言ってたよ』
「……っ、猫が喋った!? やだ、こっわっ!」
ぴょいと私のいるベッドの上に飛び乗ってきたのは、やはりどこからどう見ても黒い猫。口を動かして喋っている、黒い猫。
……いやいやいやいや、いくら何でもおかしいでしょ!? なんで猫が喋るの!?
『騒がしいわね。これだから嫌だったのに……』
「ひぃっ」
近づいてきたのでつい仰け反ると、表情豊かに明らかに顔を歪められる。
『あと、私は猫じゃなくってよ。ラピスと契約している【水】の精霊フィオナ。フィオナ様とお呼び』
「………………はぁ」
やはり意味がよく分からない。そもそもラピスって誰? さっきの女の人? ……まぁ、たしかにお腹は空いているし、下とやらに降りることにしよう。
「じゃあフィオナ様。下に案内して」
『ふぅん。小娘、私を扱き使う気なの? 小賢しいことをするのね。まぁいいわ、ラピスに連れてきてって言われたし今回は案内してあげる』
とりあえず、私はおそらくあの女の人に崖から落ちて死にかけたところを救われたのだろう。
「……うーん…… もう一回人生やれるのは嬉しいんだけどなぁ……」
思わず転生してしまい、もう一度生きることになったのは正直言ってとーっても喜ばしい。
ルティアナとしての意識はなく、ルティアナが苦しんだ思い出も本を読んだときの知識のようなものとしてしか知っていない。完全に人生二週目なのだ。一周目はお世辞にも幸せとは言い難い、病床で一生を終えるという悲しい人生だったから、棚ぼたって感じ。
ただ、このルティアナ、一つ問題がある。
ルティアナのことを思い出すきっかけになった小説、前世で私のお気に入りだったライトノベル、「光の聖女と火の王子」。平民の主人公が【光】魔法に非常に秀でた、神の加護を持つ魔法使い、公称「聖女」だと判明し、学園に入学することとなり、そこで王子と出会い恋に落ち、共に魔王を倒し結ばれるという、いわゆる異世界系のシンデレラストーリーだ。
この作品の中で、ルティアナは悪役なのだ。
通称「死の森の魔女」。代償を一つ差し出すことで願いを叶えてくれる悪い魔女。作中ではあまり生い立ちは詳しく語られなかった悪役だ。
作中にあった描写は、誰にも愛されなかったせいで、ルティアナは心が弱く、脆く、傷ついているということに魔王が気付き、心に漬け込み【闇】魔法で操り味方にしたということくらい。
最後には、さらにルティアナが魔王の命令で操って協力者にした悪役令嬢ポジのご令嬢(それも前世の私の推し)を巻き込んで、主人公に討伐という名目を元に殺される。
……うぅ、最悪だね。
破滅フラグ満載なこの人生、どうしてくれよう。既に魔王に復活のための利用材料として狙われているだなんて。それもそもそもこの世界では黒髪ってだけで生きにくいっていう…… 前の世界なら黒髪なんて普通だったのに。
うぅぅ、と唸りながら埃っぽいベッドの上で頭を抱えていると、どこかから突然声がした。
『お腹は空いていないかい』
「……は?」
『なにか食べたいなら下に降りておいで』
『……ってラピスが言ってたよ』
「……っ、猫が喋った!? やだ、こっわっ!」
ぴょいと私のいるベッドの上に飛び乗ってきたのは、やはりどこからどう見ても黒い猫。口を動かして喋っている、黒い猫。
……いやいやいやいや、いくら何でもおかしいでしょ!? なんで猫が喋るの!?
『騒がしいわね。これだから嫌だったのに……』
「ひぃっ」
近づいてきたのでつい仰け反ると、表情豊かに明らかに顔を歪められる。
『あと、私は猫じゃなくってよ。ラピスと契約している【水】の精霊フィオナ。フィオナ様とお呼び』
「………………はぁ」
やはり意味がよく分からない。そもそもラピスって誰? さっきの女の人? ……まぁ、たしかにお腹は空いているし、下とやらに降りることにしよう。
「じゃあフィオナ様。下に案内して」
『ふぅん。小娘、私を扱き使う気なの? 小賢しいことをするのね。まぁいいわ、ラピスに連れてきてって言われたし今回は案内してあげる』
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