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学園編
総代挨拶とステータス
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目の前にそびえ立つ、象徴花の薔薇が彫られた大きい門。そう、私はシャルメーテ王立魔法学園の前に立っていた。
……ああ、代表スピーチ嫌だな。この学園では魔法だけでなく、数学や国語といったものも学ぶ。と、いっても前世の小学生レベルくらいまでだが。そして、入学試験はそういう問題を集めて寄せ合わせたものだった。そして、半分眠りながらといったくらいに全くもって集中していなかった状態で解いた私はそれでも満点。前世で成績面では学年一の優等生だっただけある。……あぁ、でも成績以外、つまり性格と態度は不良だと言われていたな。何故かは未だにわからない。授業中に寝ていたわけでも早弁していたわけでもないのに、謎である。
まあでも、満点を取った教科は授業を受けなくてもいいというのはラッキーだった。できたら受けてほしい、と学園の先生には言われたが、受けなくていい、と言われたものは私の性格上、絶対に受けないだろうな。
「おはよう、フィレネーゼ公爵令嬢」
「おはようございます、エルンスト様」
女性を公式の場で下の名前で呼ぶと他の人に色々と勘違いされかねないと私が数年前やんわり注意したのを覚えていたのだろうか、彼は私を姓で呼んでくれた。……やけに会うなあ。出会いイベントはここで起こるはずじゃないんだが。
まあ彼に好意を寄せられる可能性は低い。一番攻略が難しかった原因は好感度の異常なほどの上がりにくさにあるのだから。限定クエストなどをクリアしないと進まないほどだったから、異常な行動を取らない限り大丈夫だろう。微妙に原作と今が違うので一抹の不安は拭えないが。
「首席としてのスピーチ、頑張ってな。では」
周りに人も多かったので、当たり障りのないように相手は早めに引き上げてくれた。空気が読めるところは嫌いじゃない。好きというわけでもないけれど。
「暖かい春の日差しに包まれる今日、私たちは――」
もはや前世では決まり文句となっていた入学式定番の挨拶を壇上に立ってする。正直な話、前世でもスピーチ系はよくやっていたので壇上に立ってみれば何も感じず、動じずにペラペラとカンペも見ずに話せはする。でも決して好きじゃあない。ああ、優等生って辛い。ちょっともう数問くらい落とせばよかった。
「――以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます」
言い終わった。そしてワンテンポ遅れて拍手が返ってくる。一礼して私は壇上から立ち去った。
「次は王族代表として、今年から学園に入学する第一王子様からのお話です」
朝に見たエルンスト様が堂々と壇上へ歩いていき、真ん中に立つ。私とは全く違う威厳が漂う。……これが王族。普段のおちゃらけたような雰囲気とは全く違った。
「皆の者――」
そうして堂々と話していた肝心の内容は私とほぼほぼ同じだった。学園に入れて嬉しいので精一杯がんばります、的な。なのに、私のときとは違って会場が生徒による盛大な歓声で溢れるのはなぜだろうな、なんて思いながらパチパチと手を叩いていた。
「新入生の皆様は、パッツィ先生に大講義室まで案内してもらってください。大講義室でステータスの確認をします」
レオニード・パッツィ先生が私達の前を歩いていく。王子、ソフィ、私、他の人というように身分順で着いていった。
「では、ステータスを確認していきます。王子から順番に来てください。手を中心に当てて魔力を出来るだけ注ぐように」
白い大理石に精密な魔法陣が描かれた壁に王子が手を当てた。端に埋め込まれた虹色に輝く魔石――魔力を吸い取ったり放出したりが自在にできる――がキラキラ光る。……あれ、王子って案外魔力量少ない? あれが光った分だけ魔力があることになるとネロに教えられた。そして私もネロが自作、否、複製したもので測ったことがある。もっと光っていたような気がするのだが気の所為だっただろうか。
「次、ソフィア・ルートヴェング公爵令嬢、来てください」
彼女も同じように手を当てたが、光ったのは王子と同じくらい。と、いうことはネロのが少し光りやすくなっていたのだろうか。私も呼ばれて手を当てる。すると、まばゆいほどの光が。……なんで? そこでネロの言葉を思い出した。
『聖女の癒やしスキル持ちは、ちょっとあれが光りやすくなるから流す魔力の量を加減するようにしてね。目立って面倒だから』
聖女の癒やしとやらは魔石と異様なほど相性がいいらしい。だからほんの少し流しただけでもすごく光ってしまう。なのに私は全力で流してしまった。……言われてたこと忘れてた。私、もしかしなくても入学早々やらかした?
……ああ、代表スピーチ嫌だな。この学園では魔法だけでなく、数学や国語といったものも学ぶ。と、いっても前世の小学生レベルくらいまでだが。そして、入学試験はそういう問題を集めて寄せ合わせたものだった。そして、半分眠りながらといったくらいに全くもって集中していなかった状態で解いた私はそれでも満点。前世で成績面では学年一の優等生だっただけある。……あぁ、でも成績以外、つまり性格と態度は不良だと言われていたな。何故かは未だにわからない。授業中に寝ていたわけでも早弁していたわけでもないのに、謎である。
まあでも、満点を取った教科は授業を受けなくてもいいというのはラッキーだった。できたら受けてほしい、と学園の先生には言われたが、受けなくていい、と言われたものは私の性格上、絶対に受けないだろうな。
「おはよう、フィレネーゼ公爵令嬢」
「おはようございます、エルンスト様」
女性を公式の場で下の名前で呼ぶと他の人に色々と勘違いされかねないと私が数年前やんわり注意したのを覚えていたのだろうか、彼は私を姓で呼んでくれた。……やけに会うなあ。出会いイベントはここで起こるはずじゃないんだが。
まあ彼に好意を寄せられる可能性は低い。一番攻略が難しかった原因は好感度の異常なほどの上がりにくさにあるのだから。限定クエストなどをクリアしないと進まないほどだったから、異常な行動を取らない限り大丈夫だろう。微妙に原作と今が違うので一抹の不安は拭えないが。
「首席としてのスピーチ、頑張ってな。では」
周りに人も多かったので、当たり障りのないように相手は早めに引き上げてくれた。空気が読めるところは嫌いじゃない。好きというわけでもないけれど。
「暖かい春の日差しに包まれる今日、私たちは――」
もはや前世では決まり文句となっていた入学式定番の挨拶を壇上に立ってする。正直な話、前世でもスピーチ系はよくやっていたので壇上に立ってみれば何も感じず、動じずにペラペラとカンペも見ずに話せはする。でも決して好きじゃあない。ああ、優等生って辛い。ちょっともう数問くらい落とせばよかった。
「――以上をもちまして、新入生代表の挨拶とさせていただきます」
言い終わった。そしてワンテンポ遅れて拍手が返ってくる。一礼して私は壇上から立ち去った。
「次は王族代表として、今年から学園に入学する第一王子様からのお話です」
朝に見たエルンスト様が堂々と壇上へ歩いていき、真ん中に立つ。私とは全く違う威厳が漂う。……これが王族。普段のおちゃらけたような雰囲気とは全く違った。
「皆の者――」
そうして堂々と話していた肝心の内容は私とほぼほぼ同じだった。学園に入れて嬉しいので精一杯がんばります、的な。なのに、私のときとは違って会場が生徒による盛大な歓声で溢れるのはなぜだろうな、なんて思いながらパチパチと手を叩いていた。
「新入生の皆様は、パッツィ先生に大講義室まで案内してもらってください。大講義室でステータスの確認をします」
レオニード・パッツィ先生が私達の前を歩いていく。王子、ソフィ、私、他の人というように身分順で着いていった。
「では、ステータスを確認していきます。王子から順番に来てください。手を中心に当てて魔力を出来るだけ注ぐように」
白い大理石に精密な魔法陣が描かれた壁に王子が手を当てた。端に埋め込まれた虹色に輝く魔石――魔力を吸い取ったり放出したりが自在にできる――がキラキラ光る。……あれ、王子って案外魔力量少ない? あれが光った分だけ魔力があることになるとネロに教えられた。そして私もネロが自作、否、複製したもので測ったことがある。もっと光っていたような気がするのだが気の所為だっただろうか。
「次、ソフィア・ルートヴェング公爵令嬢、来てください」
彼女も同じように手を当てたが、光ったのは王子と同じくらい。と、いうことはネロのが少し光りやすくなっていたのだろうか。私も呼ばれて手を当てる。すると、まばゆいほどの光が。……なんで? そこでネロの言葉を思い出した。
『聖女の癒やしスキル持ちは、ちょっとあれが光りやすくなるから流す魔力の量を加減するようにしてね。目立って面倒だから』
聖女の癒やしとやらは魔石と異様なほど相性がいいらしい。だからほんの少し流しただけでもすごく光ってしまう。なのに私は全力で流してしまった。……言われてたこと忘れてた。私、もしかしなくても入学早々やらかした?
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