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学園編

次は絶対に

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 それから二十分くらいで私達は店を出た。魔法談義で盛り上がれたおかげで、妙な緊張はある程度かき消されて、まあ消えはしなかったけれどうまく話せたので私は事なきを得た。

「えっと、今日はありがとう」

彼は私がお手洗いで席を少しばかり外している間にお支払いを済ませてしまったらしい。うわぁ、スパダリだぁ、と半ば呆然としながら思ってしまった。知ってるけど! 乙女ゲームの本編のどのルートでも、ネロは気遣いと優しさに溢れるイケメンだった。

「ううん、僕も来たかったから。こういう店、男一人じゃ入りにくかったから助かったし」

フォローも完璧だ。あぁ、やっぱり好きだな。なんて思いながら、私は差し出された手を取って、外に止めていた馬車に彼と一緒に乗り込んだ。

 すぐに、ガタン、ガタンと相変わらずの大きな音を立てながら馬車が動き出した。

「あぁ、そうだ。ミカエルにお土産を包んでもらってたんだ。ケーキはさすがに無理だったけど、新しく一緒に発売されたらしいチョコクッキーはお持ち帰り可だったから」

ちょっとだけ、買っちゃった、と、はにかんで、彼は私に可愛らしいピンク色の小袋を私に手渡す。

「ありがとう! ふふ、嬉しいっ」

「喜んでもらえてよかった。ソフィが、ミカエルはチョコレート系のスイーツが好きだって言ってたしね、いいかなって」

「うん、すっごく好き。……でも、高かったでしょ? カカオって、なかなか手に入れるのが難しいし。加工できる職人も僅かだし……」

嬉しいとともに、ちょっと感じる罪悪感、というか申し訳なさ。そしてそれはどんどん考えれば考えるほど膨れ上がっていく。

 ……奢ってもらったときも思ってたけど、日本でいうとケーキ一つだけで10000円、って値段がついてしまうくらいには高いのだ。そしてそのうえ、クッキーもってなったら出費がものすごくかさむはず。いくらなんでも、奢ってもらいすぎてる。

「ううん、全然大丈夫。今日は付き合ってもらっちゃったし、そのお礼くらいに思ってよ」

爽やかに笑って、そう言ってくれるけど申し訳なさは依然として消えない。

「うーん、でも……」

「じゃあ、また今度一緒に遊びに行ってくれる? 他にも色々と行きたいところがあるから。それでどう?」

また適当に学園サボって遊びに行こう、と彼は小指を私の小指と絡めて指切りをする。

「うん、分かった。私も行きたいし、それなら! あと、次回は私が絶対に払うからっ!」

うん、次回行ったときに私が払えばチャラになる。そうすればいい。そもそも推しに一銭も私は払わせたくない。むしろ貢ぎたい。今回はちょっとミスってしまったけれど、次回からはしっかり貢ごう、と私はぐっと手を握りしめて決意する。

「ふふ、次回も僕が払うから。それはだめ」

すると彼はにこりと笑って、そう言い放つ。

「いーえ、次回は絶対に私が払うからいいの」

と言っても依然彼はにこにこ笑って小さく横に首を振るばかり。私は、少し頬を膨らませて不満を示すも、彼は見えていないかのように知らんぷり。

 ……何があっても、次回は絶対貢ぐんだから!

 私はそんな彼をじいっと見つめながら、もう一度、さっき以上に強く決意した。

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