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学園編

続編とリュゼ・セレナーデ

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「どうしたの、急に黙り込んで。僕が転生者だってことに驚いてるの?」

「……だとしたら、なんです?」

ソフィのように、この男、リュゼ・セレナーデが私の味方だとは限らない。そもそも、さっきの白い覆面を一発で気絶させてしまう時点で普通じゃない。警戒しておかないと。私は、彼から一歩距離を取る。

 彼をじろじろと上から下まで見る。衣服は、決して豪華ではないものの清潔感があって粗末ではない。言葉遣いも、聞いた限りそこまで粗雑というわけではなかった。よく見たら帯刀していて、その刀には細かくどこかの紋章が刻まれている。……たぶん貴族だ、それも他国の。セレナーデ、という姓はシャルメーテにないし、あの紋章も見たことがない。

「うわぁ、敵対的だなぁ。ま、いいや。ミカエル・フィレネーゼ嬢、王都まで送らせていただくので、その間少しお喋りしません?」

「……半径二メートル以上私と離れてくださるんだったら」

王都まで連れていく、というこの男の言葉は疑わしくはあるが、まぁ今は信じてみるしかない。それに、聞きたいこともある。私の名前を知っていて転生者などと言ってくるのから考えて、彼が「ラブマジ」のことを知っているのはほぼ間違えない。そんな彼の言葉に気になるところがあったのだ。「続編」と言ったこと。話の流れからして、「ラブマジ」のことな気がする。もしあるなら、由々しき事態だ。

「はいはい。いいよ、二メートル離れればいいのね」

彼はこっち、と指さし歩き出す。私はその後ろを少し身構えながら付いていく。

「とりあえず自己紹介からいこうか。素性のわからない人間は信用できないだろうしね。名前はさっき言った通り、リュゼ・セレナーデ。隣国、ソーネチアの公爵令息をやってるよ」

「……なんでこの国にいるんですか、他国の令息様が」

「留学生、とでも言っておこうか。ま、いずれ分かるし、今はまだ国同士のトップシークレットだから伏せとかないといけないんだよ」

隣国ソーネチア。うちの国とは適当にうまくやっているらしいけれど、彼が本当に留学生かどうかはわからないな。留学生が来る、というのは噂で少し聞いてはいるけれど、ソーネチアかどうかも分からないような、そもそも来るかどうかも微妙なものなので、判断不能。

「そうですか。じゃあ、本題です。あなたは、私と同じ転生者なんですね?」

「そうだね。ここに来たのは、光の柱――SOSが打ちあがってて気になったから。普通のご令嬢ならほっといたけど、君だったから助けた。本編と全く違う行動を取ってるっていうから、同じ転生者かなと思って。最初のでカマかけてみたら案の定そうだった。――ね、続編っていうのが気になってるんでしょ? 君はおそらく向こうの世界では続編の発売前に死んだのかな、知らないって風な反応してたよね」

彼はペラペラとそうやって楽し気に話す。

「そうですね、気になってます。……教えてくださるんですか?」

「ま、交換条件でだけど。どうする?」

「先に、その条件というのを教えてください」

彼はいかにも楽しいといった感じで口角を上げる。

「――ソーネチアに来ること、かな」


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