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学園編

不透明な犯人

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 ネロたちは、森の向こう側から光の柱が打ち上がったのを見て、兵団を連れて突入しようとしてくれていたところだったらしい。私が攫われたあと、彼は王城へ向かい、そこでエルンスト殿下と出会って、兵団を一つ貸して一緒に来てくれたのだ、と。

「ごめん、僕のせいだよね。お忍びなんて方法を使って、護衛を一人も連れてなかったせいだ。他に人がいたら、あんなことにはならなかった。僕のミスだ」

エルンスト殿下、私、お父様、お母様、そしてネロという顔ぶれで王城のとある一室で話すために集まってから、ネロはずっとこんな調子だ。私やお母様、お父様がいくらネロのせいじゃないと言おうと、どんよりと暗く、重く、自分を責めている。

「ルートヴェング公爵令息のせいではない。我々のような高位な貴族や王族にはいつでも起こりうることだ。それを気にして動いてもいられないのだからな」

エルンスト殿下が見兼ねて、そうネロのことを慰める。

「そうはいっても……」

「起こったことを悔やむより、これから起こるかもしれないことを未然に防ぐために努力するほうがいいのではないか? 私はもともと聖女の癒やしの使い手である令嬢が誘拐されたということを公表し、犯人を捕まえるために人を集めて調査しようと思っていた。フィレネーゼ嬢もこのままの状況では不安でならないだろうからな。それをルートヴェング公爵令息には率いてほしい。そうすれば、フィレネーゼ嬢が危険に晒される可能性は低くなるだろう?」

エルンスト殿下、そんなことを考えてくれていたのか。確かに心配だったから、どうしようかとは思っていた。

 優しい気遣いで、やっぱり少しは攫われたせいで緊張して張り詰めていた気持ちがふっと緩んで安心する。

 ネロも、それを聞いて、厳しかった表情を少し緩めた。

「お気遣いありがとうございます。その話、是非とも受けさせてください」

「あぁ、こちらも引き受けてくれて助かった。向こうはそなたさえも不意打ちでなら倒せるほどの能力を持っているのだろう? 王城の魔術師だけでは不安なところも大きかった」

そうしてさっきよりも空気感が柔らかくなったところで、お父様が私に質問を投げかけてきた。

「そういえばミカエル。襲ってきたやつの顔は覚えているのか?」

「……顔は、見ていないんです。真っ白な布を頭からすっぽり被った人でした。でも、目のところに穴もなかったはずなのに、私のことが見えていたみたいで…… 実際、光を使った目潰しも通じましたし」

本当に不思議な相手だった。あんなに長くて大きい布だったのに、それを被った状態でも私を余裕で追いかけてきていた。

「うーん、白い布か…… 心当たりがないなぁ」

ネロもお母様もエルンスト殿下も、知らないと首を振るばかり。あまりにも分からなさすぎる相手に、気持ち悪ささえ感じてしまう。

「まぁ、とりあえず今日はお開きにしよう。フィレネーゼ嬢も落ち着かないだろうし」

しばらく考え込んでいたが、エルンスト殿下のその声で、私達は解散して帰ることにした。

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