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第四章
約束
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あのときと一緒だと東は思った。
直政に蓮水家から逃がしてもらい、雲母の背に乗って美弥藤家に連れて来られた八年前も打掛を頭から被り、自分が白人だということで人々の混乱を招いていた。
水の女神が降らせる雨の中、章子の打掛を被って馬を走らせる東と青は並走しながら松老院の追手から逃げていた。
裏口であれば、まだ松老院の家来は来ていないだろうと思っていたが、数人の武者に見つかってしまった。向こうも騎兵を寄越し、もうすぐそこまで地を抉る騎馬の音が迫っている。
せめて村人に危害が及ばないように沫ノ森付近まで逃げようと、と二人は馬を走らせていたが、松老院の武者が放った矢が地面に鋭く突き刺さる音を聞いて東は唇を歪めた。
まだ沫ノ森までの距離を半分も走っていないというのに。
焦燥感を滲ませていた東に、青が口早に言った。
「東、おまえは先に龍神の封印を解きにいけ」
「俺だって戦える。保親さまから頂いた刀がある」
背後の様子を見計らい、放たれた矢を刀で砕きながら青は東を説得する。
「龍神の封印を解くのはおまえがいなければできない。予波ノ島の気を整えるのだろう? 私もそれを望んでいる。美弥藤の、予波ノ島に住む民のためになるのだからな」
それでも、東は納得できずにいると、青が続けた。
「私も後で行く。沫ノ森と上尾の境で待っていてくれ。私は東がいないと森の中で迷い子になってしまうからな」
そう柔らかく冗談っぽく笑んだ青に、東は渋々頷いた。
「後で、必ず」
念を押すように東が語調を強めて言った。
「あぁ、約束は必ず守る」
青の言葉の余韻まで聞き届けた東は、馬の腹を蹴って速度を上げて青から離れた。
直政に蓮水家から逃がしてもらい、雲母の背に乗って美弥藤家に連れて来られた八年前も打掛を頭から被り、自分が白人だということで人々の混乱を招いていた。
水の女神が降らせる雨の中、章子の打掛を被って馬を走らせる東と青は並走しながら松老院の追手から逃げていた。
裏口であれば、まだ松老院の家来は来ていないだろうと思っていたが、数人の武者に見つかってしまった。向こうも騎兵を寄越し、もうすぐそこまで地を抉る騎馬の音が迫っている。
せめて村人に危害が及ばないように沫ノ森付近まで逃げようと、と二人は馬を走らせていたが、松老院の武者が放った矢が地面に鋭く突き刺さる音を聞いて東は唇を歪めた。
まだ沫ノ森までの距離を半分も走っていないというのに。
焦燥感を滲ませていた東に、青が口早に言った。
「東、おまえは先に龍神の封印を解きにいけ」
「俺だって戦える。保親さまから頂いた刀がある」
背後の様子を見計らい、放たれた矢を刀で砕きながら青は東を説得する。
「龍神の封印を解くのはおまえがいなければできない。予波ノ島の気を整えるのだろう? 私もそれを望んでいる。美弥藤の、予波ノ島に住む民のためになるのだからな」
それでも、東は納得できずにいると、青が続けた。
「私も後で行く。沫ノ森と上尾の境で待っていてくれ。私は東がいないと森の中で迷い子になってしまうからな」
そう柔らかく冗談っぽく笑んだ青に、東は渋々頷いた。
「後で、必ず」
念を押すように東が語調を強めて言った。
「あぁ、約束は必ず守る」
青の言葉の余韻まで聞き届けた東は、馬の腹を蹴って速度を上げて青から離れた。
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