皇国の栄光

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ABDAと酒好き大男の駆逐艦

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1942年2月27日。
蘭印作戦の梅雨払いとしてABDA艦隊との海戦が発生した。
直前の四航戦の空襲などでABDA艦隊は損傷を受けていたのに対し、第三艦隊は超甲巡などを中核とし準備万端だった。
高木武雄は超甲巡の洞爺にて指揮を執っていた。
「提督。敵艦隊接近中とのことです。」
高木は冷静に言った。
「もしかするとスラバヤに退避するだけかもしれん。偵察機を出して逐一、敵艦隊の情報を報告させろ。」
「はっ。」
その後、ABDA艦隊は高木艦隊に接近してきたため高木も2,4水戦と共に迎撃を開始した。
日本海海戦後初めての本格的な砲撃戦が始まろうとしていた。


「敵重巡4隻を中核とする艦隊発見!接近してきます!」
ドルーマン少将は難しい顔をしながらも命令をだす。
「我が艦隊も敵艦隊に接近する!我々が今まで受けてきた屈辱を晴らせ!」


その後、一時は形勢不利となったものの羽黒の砲弾がエクセターに、洞爺の砲弾がパースに命中。
これを機にABDA艦隊は遁走を開始。
だが無傷では逃げれず、エクセター、ヒューストン、パース他駆逐艦が撃沈された。


ドールマンはなんとか撤退していた。
「我々は敵になんら損害を与えられなかった…。奴らは化け物か何かなのか?」
思わず言葉が出る。
「我々はその化け物とよく200年もなかよくできたものですね。」
「まったくだ。」
そう話していると敵艦隊発見の報が入る。
「今の我が艦隊の戦闘能力は日本艦隊に大きく劣っている。どうする?」
彼は副官に尋ねる。
「逃げても追いつかれるでしょうな。」
副官は肩を竦めて言う。
「ならば選択肢は一つしかないな。」
そういうとドールマンは無線を手に取った。
『我、敵艦に肉薄す。全艦続け!』
それが彼の最後の命令となった。


翌日、駆逐艦雷は昨夜海戦があった海域に通りかかった。
「艦長!前方に浮遊物多数発見いたしました!」
そう聞いた工藤俊作は双眼鏡でのぞく。
「あれは人か。おそらく昨夜の開戦の生き残りだろうな。」
「では攻撃しますか?」
そう下士官が言うと工藤は激しく憤慨した。
「馬鹿者が!すでに戦えなくなった相手にたいして攻撃するなど武士道の精神に反する!我々は彼らは救助する!」
「ですが彼らは我々の乗組員の数倍に当たります!暴動でも起こされでもしたら…。」
「その点はおそらく大丈夫だろう。彼らは戦意を喪失している。夜中、海の中にいたのだからな。」
その後、工藤はおよそ564名を救助し彼らの前でこう言った。
「貴官らはよく戦った。敬意を表す!今からあなた方は我々日本海軍の客人である!」
彼らは少し安堵したような顔をした。
なかには眠りこけるものまでいた。
それに笑って布団代わりの布をかぶせた日本軍人達。
工藤は久しぶりに平和というものを見た気がした。
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