32 / 108
蒋介石を捕縛せよ!
作戦開始
しおりを挟む
諸々の準備が整ったのは1939年8月21日の事だった。
「諸君らが、この事変を終わらすのだ。作戦の成功を祈っている」
わざわざ大陸の奥地の飛行場まで訪れた山本が捕蒋作戦に参加する陸戦隊員、航空機搭乗員の前でそう訓示した。
前日の8月20には陸軍のチハを主力とする部隊が湖北から攻勢を仕掛けており、今日の天気は快晴。
もはや作戦開始待ったなしだった。
陸戦隊員たちは33機の九九式輸送機に続々と乗り込んでいく。
最初に発艦したのは母艦から陸揚げされた第三航空戦隊の九九式艦戦と陸軍の九九式戦闘機だった。
陸軍の九九式戦闘機は海軍の九九式艦上戦闘機と何ら変わらなかった。
但し、折り畳み機構がない分10㎞あまり速度が向上していた。
九九式艦戦と九九式戦は合わせて63機となっていた。
それらの後に続くのは第一航空戦隊の九九式艦爆隊である。
数は45機であり、うち21機が250㎏爆弾を1発、24機がが60㎏爆弾を12発搭載していた。
その後に、やっと九九式輸送機が発進した。
結局、捕蒋作戦に参加した航空機は141機に達した。
(頼むぞ…)
山本は成都に向かっていく航空隊を見送りながら心の中で願った。
翻って成都の蒋介石だが、彼は彼で多忙を極めていた。
8月20日に開始された日本軍戦車部隊による攻勢が激しかったためである。
チハは対歩兵戦では期待以上の役割を果たし、次々と国民党軍の防衛線を突破していた。
これに対抗するのは戦車なり対戦車砲を配備するしかないが、例え配備したとしても日本軍の航空隊に撃破されてしまうため歩兵による肉薄攻撃により戦車を破壊するしかなかった。
だが、チハの周りは日本軍の歩兵が固めておりそう易々と近づけなかった。
(何としてでも北部の攻勢を抑えなければ…)
蒋介石や国民党軍の首脳陣はそう思い立ち、各戦線からの引き抜きを行っていた。
それで最も引き抜かれたのが、後方だった。
つまり、後方で警備に従事している兵士も前線に立たせるのだ。
それは成都にも言えることであり、防衛部隊の8割を北部に送っていた。
そのため、成都にはわずか400名の国民党軍しか居なかった。
「隊長、成都が見えました」
搭乗員からの言葉を受けて陸戦隊の隊長は命令した。
「降下準備!」
機体後方の大きな扉が開かれる。
「降下!」
そうして990名の陸戦隊が純白の落下傘を開いて成都に舞い降りていく。
同時に戦闘機や爆撃機なども戦闘態勢となった。
成都からは対空砲火の一発も飛んでこない。
「ただ成功を祈るだけだ」
搭乗員はその様子を見ながら言った。
「諸君らが、この事変を終わらすのだ。作戦の成功を祈っている」
わざわざ大陸の奥地の飛行場まで訪れた山本が捕蒋作戦に参加する陸戦隊員、航空機搭乗員の前でそう訓示した。
前日の8月20には陸軍のチハを主力とする部隊が湖北から攻勢を仕掛けており、今日の天気は快晴。
もはや作戦開始待ったなしだった。
陸戦隊員たちは33機の九九式輸送機に続々と乗り込んでいく。
最初に発艦したのは母艦から陸揚げされた第三航空戦隊の九九式艦戦と陸軍の九九式戦闘機だった。
陸軍の九九式戦闘機は海軍の九九式艦上戦闘機と何ら変わらなかった。
但し、折り畳み機構がない分10㎞あまり速度が向上していた。
九九式艦戦と九九式戦は合わせて63機となっていた。
それらの後に続くのは第一航空戦隊の九九式艦爆隊である。
数は45機であり、うち21機が250㎏爆弾を1発、24機がが60㎏爆弾を12発搭載していた。
その後に、やっと九九式輸送機が発進した。
結局、捕蒋作戦に参加した航空機は141機に達した。
(頼むぞ…)
山本は成都に向かっていく航空隊を見送りながら心の中で願った。
翻って成都の蒋介石だが、彼は彼で多忙を極めていた。
8月20日に開始された日本軍戦車部隊による攻勢が激しかったためである。
チハは対歩兵戦では期待以上の役割を果たし、次々と国民党軍の防衛線を突破していた。
これに対抗するのは戦車なり対戦車砲を配備するしかないが、例え配備したとしても日本軍の航空隊に撃破されてしまうため歩兵による肉薄攻撃により戦車を破壊するしかなかった。
だが、チハの周りは日本軍の歩兵が固めておりそう易々と近づけなかった。
(何としてでも北部の攻勢を抑えなければ…)
蒋介石や国民党軍の首脳陣はそう思い立ち、各戦線からの引き抜きを行っていた。
それで最も引き抜かれたのが、後方だった。
つまり、後方で警備に従事している兵士も前線に立たせるのだ。
それは成都にも言えることであり、防衛部隊の8割を北部に送っていた。
そのため、成都にはわずか400名の国民党軍しか居なかった。
「隊長、成都が見えました」
搭乗員からの言葉を受けて陸戦隊の隊長は命令した。
「降下準備!」
機体後方の大きな扉が開かれる。
「降下!」
そうして990名の陸戦隊が純白の落下傘を開いて成都に舞い降りていく。
同時に戦闘機や爆撃機なども戦闘態勢となった。
成都からは対空砲火の一発も飛んでこない。
「ただ成功を祈るだけだ」
搭乗員はその様子を見ながら言った。
38
あなたにおすすめの小説
征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~
蒼 飛雲
歴史・時代
ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。
その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。
そして、昭和一六年一二月八日。
日本は米英蘭に対して宣戦を布告。
未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。
多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
カミカゼ
キリン
歴史・時代
1955年。第二次世界大戦にて連合国軍に敗北した大和帝国は、突如現れた『天使』と呼ばれる機械の化け物との戦争を余儀なくされていた。
GHQの占領政策により保護国となった大和帝国は、”対『天使』の防波堤”として戦い続けている。……受け続ける占領支配、利益なき戦争を続けたことで生まれた”失われた十年”は、必ず取り戻さねばならない。
「この国には力が必要なんだ。もう、誰にも何も奪われないための……守るための力が」
「そのために、ならねばならないのだ。俺は」
「この国を救う、”神風”に」
──これは、神国”大和”を真なる《勝利》へと導いた、未来へ駆け抜ける神風の物語──
大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。
戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら
もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。
『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』
よろしい。ならば作りましょう!
史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。
そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。
しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。
え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw
お楽しみください。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる