3 / 27
開発
重点開発エンジン
しおりを挟む
総力戦航空機の要求性能は以下の通りであった。
総力戦航空機
速度:時速550㎞以上
武装:20㎜機銃4挺か12.7㎜機銃6挺
装備:250㎏爆弾を抱いての急降下爆撃、800㎏爆弾、800㎏航空魚雷
航続距離:最低600海里
かなり無茶な要求に見えるが、実際はそうでもない。
まず、東条英機は”格闘戦の時代は去った!”と明言し、この総力戦航空機に関して言えば要求される格闘性能が大きく引き下げられていた。
既に欧米では翼面荷重などが増加傾向にあることを東条はしっかり把握していたのである。
(格闘戦はいわば名人芸だ…確かに初めの内は圧倒できるかもしれないが、優秀な搭乗員を消耗するとまともに戦えなくなるというのはかなり困る!)
東条はあくまで先輩の永田鉄山が提唱した総力戦経済の観点からそう考えた。
戦時になると、軍民問わず熟練の者が消耗していく。
補充されるのは新米ばかり。
新米に”熟練者同様の事をやれ!”と言うのはいささか酷な話である。
これは航空機にも言えることであり、戦闘機に置いて最も顕著だったのだ。
その代わりと言っては何だが、武装はかなりの重武装が要求されている。
また、250㎏爆弾を抱いての急降下爆撃や800㎏航空魚雷を抱いての雷撃。
そして最低600海里を超える航続距離が要求されている。
開発は各航空機メーカーと統合航空本部傘下の統合航空技術廠が行うことになるが、三菱は開発から外されていた。
三菱にはこの総力戦航空機に搭載される予定である火星エンジンの開発に全力を注ぐことが求められていたのである。
火星エンジンはすでに骨子が出来上がっており、試作の段階で1400馬力と言う高出力を発揮できていた。
統合航空本部はこれに目を付け、この火星エンジンを重点開発エンジンに指定。
このエンジンは三菱のエンジンであることから、統合航空本部(以下、航空本部)は三菱の負担を減らすために開発から外したのだ。
三菱側としては自分たちのエンジンが認められたからこそ、開発から外されたのだから複雑な心境である。
それでも仕事はやってもらわねばならない。
航空本部は1938年末までに火星エンジンの馬力を1700馬力に引き上げることが要求されていた。
また、できればエンジン直径を小さくし燃費を向上させる…。
など多々要求があり、三菱は期待の開発を行わなくてもてんてこ舞いの忙しさとなった。
だが遅延は許されない。
既に機体を開発している企業などは1700馬力エンジンが手に入ることが前提で設計を行っているためだ。
三菱の多忙は終わりそうもない。
総力戦航空機
速度:時速550㎞以上
武装:20㎜機銃4挺か12.7㎜機銃6挺
装備:250㎏爆弾を抱いての急降下爆撃、800㎏爆弾、800㎏航空魚雷
航続距離:最低600海里
かなり無茶な要求に見えるが、実際はそうでもない。
まず、東条英機は”格闘戦の時代は去った!”と明言し、この総力戦航空機に関して言えば要求される格闘性能が大きく引き下げられていた。
既に欧米では翼面荷重などが増加傾向にあることを東条はしっかり把握していたのである。
(格闘戦はいわば名人芸だ…確かに初めの内は圧倒できるかもしれないが、優秀な搭乗員を消耗するとまともに戦えなくなるというのはかなり困る!)
東条はあくまで先輩の永田鉄山が提唱した総力戦経済の観点からそう考えた。
戦時になると、軍民問わず熟練の者が消耗していく。
補充されるのは新米ばかり。
新米に”熟練者同様の事をやれ!”と言うのはいささか酷な話である。
これは航空機にも言えることであり、戦闘機に置いて最も顕著だったのだ。
その代わりと言っては何だが、武装はかなりの重武装が要求されている。
また、250㎏爆弾を抱いての急降下爆撃や800㎏航空魚雷を抱いての雷撃。
そして最低600海里を超える航続距離が要求されている。
開発は各航空機メーカーと統合航空本部傘下の統合航空技術廠が行うことになるが、三菱は開発から外されていた。
三菱にはこの総力戦航空機に搭載される予定である火星エンジンの開発に全力を注ぐことが求められていたのである。
火星エンジンはすでに骨子が出来上がっており、試作の段階で1400馬力と言う高出力を発揮できていた。
統合航空本部はこれに目を付け、この火星エンジンを重点開発エンジンに指定。
このエンジンは三菱のエンジンであることから、統合航空本部(以下、航空本部)は三菱の負担を減らすために開発から外したのだ。
三菱側としては自分たちのエンジンが認められたからこそ、開発から外されたのだから複雑な心境である。
それでも仕事はやってもらわねばならない。
航空本部は1938年末までに火星エンジンの馬力を1700馬力に引き上げることが要求されていた。
また、できればエンジン直径を小さくし燃費を向上させる…。
など多々要求があり、三菱は期待の開発を行わなくてもてんてこ舞いの忙しさとなった。
だが遅延は許されない。
既に機体を開発している企業などは1700馬力エンジンが手に入ることが前提で設計を行っているためだ。
三菱の多忙は終わりそうもない。
69
あなたにおすすめの小説
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
日露戦争の真実
蔵屋
歴史・時代
私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。
日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。
日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。
帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。
日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。
ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。
ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。
深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。
この物語の始まりです。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
幻影の艦隊
竹本田重朗
歴史・時代
「ワレ幻影艦隊ナリ。コレヨリ貴軍ヒイテハ大日本帝国ヲタスケン」
ミッドウェー海戦より史実の道を踏み外す。第一機動艦隊が空襲を受けるところで謎の艦隊が出現した。彼らは発光信号を送ってくると直ちに行動を開始する。それは日本が歩むだろう破滅と没落の道を栄光へ修正する神の見えざる手だ。必要な時に現れては助けてくれるが戦いが終わるとフッと消えていく。幻たちは陸軍から内地まで至る所に浸透して修正を開始した。
※何度おなじ話を書くんだと思われますがご容赦ください
※案の定、色々とツッコミどころ多いですが御愛嬌
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる