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ハワイ沖決戦
超アウトレンジ戦法
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小沢連合艦隊はその司令官をハワイに残して出撃した。
ただ、第一、第二、第三航空艦隊の司令長官である角田、松永、そして山口の3名の中将は小沢機動部隊で中核を担ってきた者たちであり当の小沢は何も心配していなかった。
(奴らなら、問題なくやってくれるだろう…)
そう小沢が思ったころには時計の針が真ん中に戻ってきていた。
「攻撃隊は順次出撃せよ!」
角田の命令に誰も異を唱えない。
彼我の距離はちょうど500海里。
新型艦載機である陣風や流星が増槽をして攻撃できるドンピシャな距離である。
次々と攻撃隊が各空母の飛行甲板を蹴って空に舞っていく。
ほぼ同時刻に松永、山口両名も出撃命令を出しており3個の航空艦隊は離れてはいるものの辺り一帯はエンジンの音で満たされた。
「やはり壮観ですな」
草鹿はどこかしみじみした声で言う。
無理もない。
彼は開戦当初から小沢と共に第一航空艦隊を育て上げた張本人であり何人もの仲間の死を見届けてきた。
(これで…終わらせる…)
草鹿は固い決意を胸に発進した攻撃隊を見送った。
超アウトレンジ戦法には最も大きな利点がある。
それは、防御をほぼ無視できることである。
敵の攻撃半径に入らないことが前提の戦法なのだから当然だが、この意味は非常に大きい。
艦載機のすべてを攻撃に回せるのである。
小沢連合艦隊は計2波の攻撃隊を出撃させた。
第1波が陣風873機からなる戦闘攻撃隊。
第2波が陣風27機、流星720機からなる攻撃本隊。
これを合わせると1620機となる。
前述の通り、小沢連合艦隊の航空戦力は1620機である。
そのため、23隻の高速空母は現在はその艦上に1機も艦載機が存在しないのである。
これは超アウトレンジ戦法だからできる芸当であり、またそれを可能にした陣風、流星などの新型艦載機。
ひいてはこの両機を開発した三菱、川西の技術陣、そして各所を走り回ってこの両機に搭載されている誉エンジンの安定化に成功した和田操。
たくさんの人々の血と汗が結実となった結果であった。
「…!?ちょっ、長官!レーダーに機影が…」
通信兵が困惑と驚愕の入り混じった声で報告した。
「なんだ?何かあったのか?」
スプールアンスは不思議そうレーダーのモニターを覗き込む。
「…なんだこれは」
まさに絶句である。
「レーダーの不調ではないのか?」
スプールアンスがそう問うたその時、電話が鳴り響く。
掛けてきたのは第一空母群のミッチャー中将だった。
『長官!敵機が…敵機が来ました!700機はいます!』
これでレーダーの故障と言うことは無くなった。
「ヘルキャットを全機上げろ!何としてでも母艦に近づけさせるな!」
スプールアンスがそう命令を下す間にも戦闘攻撃隊は時速400㎞で迫っていた。
ただ、第一、第二、第三航空艦隊の司令長官である角田、松永、そして山口の3名の中将は小沢機動部隊で中核を担ってきた者たちであり当の小沢は何も心配していなかった。
(奴らなら、問題なくやってくれるだろう…)
そう小沢が思ったころには時計の針が真ん中に戻ってきていた。
「攻撃隊は順次出撃せよ!」
角田の命令に誰も異を唱えない。
彼我の距離はちょうど500海里。
新型艦載機である陣風や流星が増槽をして攻撃できるドンピシャな距離である。
次々と攻撃隊が各空母の飛行甲板を蹴って空に舞っていく。
ほぼ同時刻に松永、山口両名も出撃命令を出しており3個の航空艦隊は離れてはいるものの辺り一帯はエンジンの音で満たされた。
「やはり壮観ですな」
草鹿はどこかしみじみした声で言う。
無理もない。
彼は開戦当初から小沢と共に第一航空艦隊を育て上げた張本人であり何人もの仲間の死を見届けてきた。
(これで…終わらせる…)
草鹿は固い決意を胸に発進した攻撃隊を見送った。
超アウトレンジ戦法には最も大きな利点がある。
それは、防御をほぼ無視できることである。
敵の攻撃半径に入らないことが前提の戦法なのだから当然だが、この意味は非常に大きい。
艦載機のすべてを攻撃に回せるのである。
小沢連合艦隊は計2波の攻撃隊を出撃させた。
第1波が陣風873機からなる戦闘攻撃隊。
第2波が陣風27機、流星720機からなる攻撃本隊。
これを合わせると1620機となる。
前述の通り、小沢連合艦隊の航空戦力は1620機である。
そのため、23隻の高速空母は現在はその艦上に1機も艦載機が存在しないのである。
これは超アウトレンジ戦法だからできる芸当であり、またそれを可能にした陣風、流星などの新型艦載機。
ひいてはこの両機を開発した三菱、川西の技術陣、そして各所を走り回ってこの両機に搭載されている誉エンジンの安定化に成功した和田操。
たくさんの人々の血と汗が結実となった結果であった。
「…!?ちょっ、長官!レーダーに機影が…」
通信兵が困惑と驚愕の入り混じった声で報告した。
「なんだ?何かあったのか?」
スプールアンスは不思議そうレーダーのモニターを覗き込む。
「…なんだこれは」
まさに絶句である。
「レーダーの不調ではないのか?」
スプールアンスがそう問うたその時、電話が鳴り響く。
掛けてきたのは第一空母群のミッチャー中将だった。
『長官!敵機が…敵機が来ました!700機はいます!』
これでレーダーの故障と言うことは無くなった。
「ヘルキャットを全機上げろ!何としてでも母艦に近づけさせるな!」
スプールアンスがそう命令を下す間にも戦闘攻撃隊は時速400㎞で迫っていた。
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