神速艦隊

西太平洋戦争

アメリカ残存艦隊

1942年2月。
ハルゼーとブローニングはミッドウェーに居た。
「日本軍がミッドウェー攻略に動き出したそうです。潜水艦が敵大艦隊の出港を確認しました」
ブローニングの報告にハルゼーは機嫌を悪くする。
「小賢しいジャップどもめ…、何としてでも西海岸に向かうぞ！」
ミッドウェーには太平洋に配備されていたアメリカ海軍の残党が結集してた。
その戦力は以下の通りだった。


アメリカ残存艦隊
暫定司令長官：ウィリアム・ハルゼー中将
暫定参謀長：マイルズ・ブローニング大佐
旗艦：戦艦ニュージャージー
空母：エンタープライズ
戦艦：ニュージャージー、ミズーリ、ウィスコンシン、コロラド、ワシントン、テキサス、ミシシッピ
巡洋戦艦：ボクサー、シャングリラ、ワスプ、コンスティチューション
以下補助艦42隻


大艦隊ではあるが航空戦力がエンタープライズただ1艦だけだった。
既に海戦の主役は戦艦から航空機に移り変わっているのはハルゼーやブローニングも承知でありまさに絶望的であった。
また悪いことにエンタープライズ航空隊も先のダグパン沖海戦から立ち直っておらず艦載機は僅か43機だった。
そしてこれが最も大きな問題であるのだが、艦隊を動かす燃料が切れかけていた。
既にミッドウェーは西太平洋で唯一のアメリカ軍の拠点となっていたが、そのミッドウェーも山口率いる特別第2航空艦隊の空襲で燃料備蓄を破壊されていた。
今ある燃料は各艦艦艇が母港から持ちだせたものとタンカー2隻だけだった。
この燃料があれば”何事もなければ”西海岸まで到達できる。
これ以上はジリ貧だとして一部の艦艇は早々にミッドウェーを出港した。
だが彼らを待っていたのは南雲率いる第1航空艦隊だった。
第1航空艦隊はその圧倒的な航空戦力を持って先を急いだ艦隊を撃破した。
これを見たハルゼーは”結集してから一気に西海岸を目指さなければ活路はない”としてミッドウェーにアメリカ海軍を結集させていた。
ここならハワイへの日本軍の補給も妨害できるとの考えだったが、そもそも燃料が残り少ないからこうしてミッドウェーに集結しているのであって日本の輸送船団へは何の攻撃もできなかった。


「明日にでもここを経たねばならん、急いで準備しろ」
ハルゼーの命令にブローニングは頷く。
そしてブローニングが部屋を出て行こうとした時、ハルゼーは彼を呼び止めた。
「明日、出港前に潜水艦がミッドウェーに来る予定だ。お前は数人の幕僚と共にそれに乗り、確実に西海岸までたどり着け」
ブローニングは目を丸くして何か言おうとしたがハルゼーがそれを制止する。
「これは長官命令だ」
ブローニングはこくりと頷いて力なく部屋を後にした。