20 / 28
戦力増強
和田の現状
しおりを挟む
藤本と和田の2人はすぐに意気投合した。
「藤本さんのような方が居られれば、幾分か気持ちも楽です」
海軍航空技術廠の廠長室。
そこのソファーで藤本と和田は向かい合って座っていた。
傍らには和田が淹れた緑茶がある。
「それはなによりです。ですが私は少しかじっただけなのですが」
そう言うと和田は首を横に振る。
「藤本さんは各国の航空機の情報を探して、それを分析されていたんですよね?それで”少しかじっただけ”と言ってしまうのは末恐ろしいです」
藤本は苦笑いを浮かべる。
「あの戦闘機の有用性に気付いたのは今のところ、私とあなただけです」
これには藤本も頷く。
「欧米ではすでに格闘戦から一撃離脱へと航空戦の戦術が変化していると聞きます。そのために欧米は陸上戦闘機に関しては高速が狙える水冷エンジンを搭載しています。ですが、我が国には水冷エンジンを作る技術は無いとは言いませんが乏しいと言わざるを得ません。そこで私はあの空冷エンジンを積んだFw190に興味を持ったのです」
藤本の言葉に和田は大きく頷く。
「まさにその通りです。もはや航空戦は名人芸の格闘戦より誰でも行える一撃離脱へ変わってきております。我々は一刻も早く高速戦闘機を開発しなければならないのです」
そこまで言い終えると和田は少し遠い目をした。
「ですが、今の搭乗員連中の気の荒い奴らばかりで格闘戦を好んでいます。彼らが反対する限り、高速戦闘機は生まれ憎いでしょうな」
藤本は和田の言った事に既視感を感じた。
(まるで用兵側の要求に応えるだけだったあの頃の艦政本部ではないか…)
すると藤本は黙っていられなくなった。
「例え現場が難色を示しても、もはや戦いは一撃離脱が基本になることは確定的です!今のうちに開発しておかねば手遅れになります!」
和田は少し渋い顔をする。
「おっしゃっていることは痛いほどよくわかります。と言うよりかは私も同じ気持ちです。ですが、我々空技廠は海軍航空本部の従属組織です。上は”下が了解していないのなら開発するわけには行かない”と言い、下は”上が開発しなくていいと言っているのだからなおさらする必要がない”と我々は板挟みにあっているのです」
藤本はこの現状を知らなかった。
藤本の場合は元々が艦政本部という組織のトップであったためにこのような問題は生じなかった。
だが、和田の場合はそうはいかなかったのである。
「…今の航空本部長は誰でしたか?」
藤本は腹を決めてそう和田に聞いた。
「山本五十六中将です。どうかされましたか?」
和田が不思議そうに聞く。
「話を、つけに行きましょう」
「藤本さんのような方が居られれば、幾分か気持ちも楽です」
海軍航空技術廠の廠長室。
そこのソファーで藤本と和田は向かい合って座っていた。
傍らには和田が淹れた緑茶がある。
「それはなによりです。ですが私は少しかじっただけなのですが」
そう言うと和田は首を横に振る。
「藤本さんは各国の航空機の情報を探して、それを分析されていたんですよね?それで”少しかじっただけ”と言ってしまうのは末恐ろしいです」
藤本は苦笑いを浮かべる。
「あの戦闘機の有用性に気付いたのは今のところ、私とあなただけです」
これには藤本も頷く。
「欧米ではすでに格闘戦から一撃離脱へと航空戦の戦術が変化していると聞きます。そのために欧米は陸上戦闘機に関しては高速が狙える水冷エンジンを搭載しています。ですが、我が国には水冷エンジンを作る技術は無いとは言いませんが乏しいと言わざるを得ません。そこで私はあの空冷エンジンを積んだFw190に興味を持ったのです」
藤本の言葉に和田は大きく頷く。
「まさにその通りです。もはや航空戦は名人芸の格闘戦より誰でも行える一撃離脱へ変わってきております。我々は一刻も早く高速戦闘機を開発しなければならないのです」
そこまで言い終えると和田は少し遠い目をした。
「ですが、今の搭乗員連中の気の荒い奴らばかりで格闘戦を好んでいます。彼らが反対する限り、高速戦闘機は生まれ憎いでしょうな」
藤本は和田の言った事に既視感を感じた。
(まるで用兵側の要求に応えるだけだったあの頃の艦政本部ではないか…)
すると藤本は黙っていられなくなった。
「例え現場が難色を示しても、もはや戦いは一撃離脱が基本になることは確定的です!今のうちに開発しておかねば手遅れになります!」
和田は少し渋い顔をする。
「おっしゃっていることは痛いほどよくわかります。と言うよりかは私も同じ気持ちです。ですが、我々空技廠は海軍航空本部の従属組織です。上は”下が了解していないのなら開発するわけには行かない”と言い、下は”上が開発しなくていいと言っているのだからなおさらする必要がない”と我々は板挟みにあっているのです」
藤本はこの現状を知らなかった。
藤本の場合は元々が艦政本部という組織のトップであったためにこのような問題は生じなかった。
だが、和田の場合はそうはいかなかったのである。
「…今の航空本部長は誰でしたか?」
藤本は腹を決めてそう和田に聞いた。
「山本五十六中将です。どうかされましたか?」
和田が不思議そうに聞く。
「話を、つけに行きましょう」
34
あなたにおすすめの小説
未来を見た山本五十六、帝国を勝利へ導く
たか
歴史・時代
1928年12月10日の空母赤城艦長の就任式終了後、赤城の甲板に立ち夕暮れを見てた時だった。ふと立ちくらみのような眩暈が起きた瞬間、山本五十六「それ」を見た。 燃え上がる広島と長崎、硫黄島で散る歩兵、ミッドウェーで沈む空母、そして1943年ブーゲンビル島上空で戦死した事…… あまりに酷い光景に五十六は倒れそうになった、「これは夢ではない……現実、いやこれは未来か」 その夜、山本五十六は日記に記した。 【我、帝国の敗北を見たり。未来を変えねば、祖国は滅ぶ】
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる