藤本喜久雄の海軍

ypaaaaaaa

文字の大きさ
2 / 28
電気溶接技術の向上

復帰

しおりを挟む
「驚いたよ。急に倒れたと聞かされたからね」
海軍技術研究所の所長である箕原勉造兵中将は病床に横たわる藤本喜久雄造船少将にそう言った。
捕捉しておくと藤本は第四艦隊事件以降、技研にその籍を置いていた。
「心配させてしまい申し訳ございません。ですが、見ての通りピンピンしております」
藤本は笑みを浮かべて言った。
だが、実は藤本は生死の淵を彷徨っていたのである。
彼が倒れた原因は脳溢血である。
そのまま死んでもおかしくなかった。
だが、藤本が死ぬことを天が許さなかった。
そうして、藤本はこうして生きている。
(これは何かの天啓なのかもしれない…)
藤本は意識を回復してからその思いを強くしていた。
「軍令部は君の謹慎処分を取り消したよ。これからも引き続き造船官の責務を遂行せよだと。奴らからしても用兵側の意見をできるだけ取り入れようとした君には悪い感情は抱いていなかったのだろう」
箕原にそう言われて、藤本は件の”天啓”を悟った。
(天は私にこの海軍の艦船を設計し続けろというのだな…)
彼は第四艦隊事件や友鶴事件でかなり自信を失っていたが、俄然やる気が湧いてきた。
「すぐにこの体を治して、復帰いたします」
藤本は固い決意で言った。


藤本は1935年2月1日に艦政本部第四部基本設計主任に復帰。
第四艦隊事件などがあったとは言え、藤本の設計はやはり革新的である。
当たり前のことだが、革新無くして進歩など無いのだ。
軍令部もこのことはわきまえており、こうして藤本を艦船設計を一手に引き受ける役職に抜擢したのだ。
「これから、我々はさらに革新的な技術に挑戦していくことになる」
復帰直後の談話で藤本はこう語った。
これはある種、保守的な造船官である平賀譲造船中将への挑戦状でもあった。
(確かに第四艦隊では艦船の強度不足が露呈した…だが、技術革新を行えば必ずや成し遂げられる!)
彼の最大の目標は電気溶接の多用である。
電気溶接は既存のリベット工法より短期間かつ、安価で建造可能。
そして重量軽減や気密性の向上など、軍艦にとっては是非とも欲しい性能を実現するためにはどうしても必要だった。
だが、日本はその技術が未熟である。
電気溶接こそできるが、その信頼性はそこまでであった。
藤本はその電気溶接は仕様に耐えうる水準まで引き上げようというのだ。
(欧米ではすでにこの電気溶接で軍艦が作られている…。欧米に出来て我々日本人に出来ないはずがない!必ず実現してやる!)
彼はその決意を心に秘めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

電子の帝国

Flight_kj
歴史・時代
少しだけ電子技術が早く技術が進歩した帝国はどのように戦うか 明治期の工業化が少し早く進展したおかげで、日本の電子技術や精密機械工業は順調に進歩した。世界規模の戦争に巻き込まれた日本は、そんな技術をもとにしてどんな戦いを繰り広げるのか? わずかに早くレーダーやコンピューターなどの電子機器が登場することにより、戦場の様相は大きく変わってゆく。

北溟のアナバシス

三笠 陣
歴史・時代
 1943年、大日本帝国はアメリカとソ連という軍事大国に挟まれ、その圧迫を受けつつあった。  太平洋の反対側に位置するアメリカ合衆国では、両洋艦隊法に基づく海軍の大拡張計画が実行されていた。  すべての計画艦が竣工すれば、その総計は約130万トンにもなる。  そしてソビエト連邦は、ヨーロッパから東アジアに一隻の巨艦を回航する。  ソヴィエツキー・ソユーズ。  ソビエト連邦が初めて就役させた超弩級戦艦である。  1940年7月に第二次欧州大戦が終結して3年。  収まっていたかに見えた戦火は、いま再び、極東の地で燃え上がろうとしていた。

戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~

川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる …はずだった。 まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか? 敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。 文治系藩主は頼りなし? 暴れん坊藩主がまさかの活躍? 参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。 更新は週5~6予定です。 ※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。

日露戦争の真実

蔵屋
歴史・時代
 私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。 日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。  日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。  帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。  日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。 ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。  ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。  深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。  この物語の始まりです。 『神知りて 人の幸せ 祈るのみ 神の伝えし 愛善の道』 この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。 作家 蔵屋日唱

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜

岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。 けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。 髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。 戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!??? そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。

処理中です...