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電気溶接技術の向上
復帰
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「驚いたよ。急に倒れたと聞かされたからね」
海軍技術研究所の所長である箕原勉造兵中将は病床に横たわる藤本喜久雄造船少将にそう言った。
捕捉しておくと藤本は第四艦隊事件以降、技研にその籍を置いていた。
「心配させてしまい申し訳ございません。ですが、見ての通りピンピンしております」
藤本は笑みを浮かべて言った。
だが、実は藤本は生死の淵を彷徨っていたのである。
彼が倒れた原因は脳溢血である。
そのまま死んでもおかしくなかった。
だが、藤本が死ぬことを天が許さなかった。
そうして、藤本はこうして生きている。
(これは何かの天啓なのかもしれない…)
藤本は意識を回復してからその思いを強くしていた。
「軍令部は君の謹慎処分を取り消したよ。これからも引き続き造船官の責務を遂行せよだと。奴らからしても用兵側の意見をできるだけ取り入れようとした君には悪い感情は抱いていなかったのだろう」
箕原にそう言われて、藤本は件の”天啓”を悟った。
(天は私にこの海軍の艦船を設計し続けろというのだな…)
彼は第四艦隊事件や友鶴事件でかなり自信を失っていたが、俄然やる気が湧いてきた。
「すぐにこの体を治して、復帰いたします」
藤本は固い決意で言った。
藤本は1935年2月1日に艦政本部第四部基本設計主任に復帰。
第四艦隊事件などがあったとは言え、藤本の設計はやはり革新的である。
当たり前のことだが、革新無くして進歩など無いのだ。
軍令部もこのことはわきまえており、こうして藤本を艦船設計を一手に引き受ける役職に抜擢したのだ。
「これから、我々はさらに革新的な技術に挑戦していくことになる」
復帰直後の談話で藤本はこう語った。
これはある種、保守的な造船官である平賀譲造船中将への挑戦状でもあった。
(確かに第四艦隊では艦船の強度不足が露呈した…だが、技術革新を行えば必ずや成し遂げられる!)
彼の最大の目標は電気溶接の多用である。
電気溶接は既存のリベット工法より短期間かつ、安価で建造可能。
そして重量軽減や気密性の向上など、軍艦にとっては是非とも欲しい性能を実現するためにはどうしても必要だった。
だが、日本はその技術が未熟である。
電気溶接こそできるが、その信頼性はそこまでであった。
藤本はその電気溶接は仕様に耐えうる水準まで引き上げようというのだ。
(欧米ではすでにこの電気溶接で軍艦が作られている…。欧米に出来て我々日本人に出来ないはずがない!必ず実現してやる!)
彼はその決意を心に秘めていた。
海軍技術研究所の所長である箕原勉造兵中将は病床に横たわる藤本喜久雄造船少将にそう言った。
捕捉しておくと藤本は第四艦隊事件以降、技研にその籍を置いていた。
「心配させてしまい申し訳ございません。ですが、見ての通りピンピンしております」
藤本は笑みを浮かべて言った。
だが、実は藤本は生死の淵を彷徨っていたのである。
彼が倒れた原因は脳溢血である。
そのまま死んでもおかしくなかった。
だが、藤本が死ぬことを天が許さなかった。
そうして、藤本はこうして生きている。
(これは何かの天啓なのかもしれない…)
藤本は意識を回復してからその思いを強くしていた。
「軍令部は君の謹慎処分を取り消したよ。これからも引き続き造船官の責務を遂行せよだと。奴らからしても用兵側の意見をできるだけ取り入れようとした君には悪い感情は抱いていなかったのだろう」
箕原にそう言われて、藤本は件の”天啓”を悟った。
(天は私にこの海軍の艦船を設計し続けろというのだな…)
彼は第四艦隊事件や友鶴事件でかなり自信を失っていたが、俄然やる気が湧いてきた。
「すぐにこの体を治して、復帰いたします」
藤本は固い決意で言った。
藤本は1935年2月1日に艦政本部第四部基本設計主任に復帰。
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当たり前のことだが、革新無くして進歩など無いのだ。
軍令部もこのことはわきまえており、こうして藤本を艦船設計を一手に引き受ける役職に抜擢したのだ。
「これから、我々はさらに革新的な技術に挑戦していくことになる」
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藤本はその電気溶接は仕様に耐えうる水準まで引き上げようというのだ。
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彼はその決意を心に秘めていた。
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