空母伊吹大戦録

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習熟訓練

寮艦

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1940年10月12日。
早朝より伊吹は呉を出港した。
多少は改良が加えられているとはいえ、もともとは巡洋艦の船体の為赤城や加賀に比べるとかなり揺れる。
「ここまで揺れるか…俺のカミさん並みに気難しい奴だな」
大西は少し緊張感が漂っていた艦橋に冗談を投げかける。
クスクスと笑う声が聞こえて雰囲気は柔らかいものに変質した。
ゆっくり2時間ほど航行すると徳山沖に着いた。
寮艦となる筑波ははるばる横須賀からやってくるため少し待つことになる。
「徳山と言えばだ。例の戦艦が来ているのではなかったか」
そう問われた加来は小声で言う。
「あまり大きな声で言わない方が良いと思います。軍機なので」
「ふん。この艦橋にいる者ならだれでも知っているだろう」
その通りなのだが、大西はいささか豪胆すぎる。
「あんな馬鹿でかい戦艦を造って何が楽しいのやら…。全く、年寄の道楽には泣かされる」
そうこうしていると報告が入った。
「どうやら、筑波が到着したようです」
「そうか。なら後は佐世保まで行くだけだ」
こうして第六航空戦隊は編成されたのである。


伊吹と筑波は瓜二つで、どちらも角ばった印象を受ける。
これは2年以内に竣工させるために量産性に配慮された結果だった。
見分け方と言えば、艦尾にでかでかと書かれてるカタカナだけである。
2隻は夕方ごろに佐世保に到着した。
佐世保は佐世保で大量の艦艇を建造しており、てんてこ舞いの忙しさだった。
それでも艦載機を受領しなければ空母はただの大きな船である。
だが、受領は昼間に行わなければならず今日はひとまず碇泊することになる。
2隻は並んで接岸する。
「今日ぐらいは乗組員の奴らに遊ばせてやっても良いだろう。明日からは訓練漬けの毎日だ」
そうして大西は乗組員たちに寸暇を取らせた。
「よろしいのですか?」
そう問う加来に大西は少し真剣な顔で言った。
「そろそろ大きな戦争が始まる。お前も分かっているだろう。これが奴らにとって心から楽しめる最後の機会になるやもしれんのだ。このくらい良いだろう」
「確かにそうですね。では、私も」
下がっていく加来に笑いながら、大西は誰も居なくなったことを確認してから執務室で資料を読みだす。
大西は連合艦隊司令長官である山本から”真珠湾攻撃”の研究を命じられていたのである。
これは極秘も極秘で大西以外に知っているのは第一航空艦隊航空参謀の源田実大佐くらいだった。
「この作戦が行われた時、我々は後戻りできなくなる」
そう呟いて作戦研究に没頭していくのである。
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