4 / 31
第1章 ソロキャンパー、大地に立つ(異世界の)
4、ソロキャンパー、出会う。
しおりを挟む
****
とにかく美しかった。
というよりも僕のタイプそのものだったのだ。
少しだけ癖のある黒髪で、肩甲骨まで有りそうなロングヘアー、大きくてパッチリとしているが少しだけキツそうに見える目、その瞳は綺麗な水色。すっと通った鼻筋、厚くもなく薄くもない柔らかそうな唇、服の上からでも分かる素晴らしいプロポーション。
その姿は僕の永遠のアイドル『どまぐれデコポンロード』のヒロイン『鯉山まどか』を彷彿とさせた。
「き、キミは?一体?」
???「&D(#$!K>‘は¥ )」
何を言ってるのかが全く分からない。
「! そうだ!そういえばアキュアリエスに言語能力って書いてあったぞ!」
僕は斧を下ろすと、明らかに狼狽している女の子に向かって両手の平を向け『ちょっと待って』とジェスチャーしてみる。
「分かってくれるといいんだけど・・・」
どうやら理解してくれたようで、女の子は静かになった。ワタワタと振り回していた手も降ろしてくれたようだ。
「と、取り敢えずここに座って?」
先程まで自分が座っていたローチェアーを指し示す。
女の子は理解したのか、恐る恐るながらもローチェアーに腰かけた。チョコンと腰かける姿がとても可愛い・・・って!違う、そうじゃない。
「た、試してみるか・・・」
僕はアキュアリエスのペットボトルを手に取り、簡易浄水器を着けずに一口飲んでみると、女の子に話しかけてみる。
「ぼ、僕の言葉、分かる?」
「ッ!分かりますっ!さっきまで全く意味が分からなかったのに・・・、どうしてですかっ?どうして突然?」
・・・やばい。声まで好みだ。って、違う、そうじゃない。
というか、これはもう間違いない。
謎の光、角付きハクビシン、無くなったザニトラと管理棟。それにこのペットボトル。更には言葉が理解できない美少女!どうやら僕は本当に異世界に来てしまった様だ。
只、なぜ周りの景色は変わってないんだろうか?よくある異世界転移物では全然違う場所に飛ばされるのが定石だと思ったのだけど・・・
「あの?すいませーん」
見た感じ周りの景色に大きな変化は見当たらなかった・・・
「あーのー!もしもしッ!?」
異世界に来たとして、ここまで景色が変わらないなんてことがあるのだろうか・・・
「ねえ!?聞こえてますかー!?」
先程管理棟があった場所から眺めた時も、九つ山群の硫黄岳辺りから噴煙が見えた。今は目の前で振られる手の平が見える・・・って!
「え?・・・あ、ご、ごめんなさいッ!考え事してました!」
僕の目の前で美少女が顔に向かって手を振っている。やっぱり可愛い。
「もう!やっぱり聞いてなかったんですね!?だ・か・ら!なんで突然言葉が分かるようになったんですか?って聞いているんですぅ!」
「そ、それはこのペットボトルの中身を口に含んだから・・・、あ、ペットボトルって分かる?」
そう言いながら、女の子に向かってペットボトルを差し出す。
「? 何ですかこれ? 水筒? でもこんな透明なものは見たことがないですね?さ、触っても?」
「ど、どうぞ」
女の子はペットボトルを手に取ると、さすってみたり、握りこんでみたりしているが、やめて頂きたい。
良からぬことを想像してしまうじゃないか。
「硬いようで、柔らかくもあり・・・不思議な素材ですねぇ。これは?・・・文字、でしょうか?全く読めません」
「あ、あのそろそろ返して貰っていいか、な?それと、僕は石動弓弦って言います」
「えっ?ああ!どうも有り難うございました!私はアイーシャ。アイーシャ・エル・ピオーネ、と申します。イ・シュ・ギ・ユ・ズ・ル?様?さん?変わったお名前ですねぇ」
「ははっ、変わっていますか?ユズルで構いませんよ。そちらはアイーシャさんで宜しいですか?」
「いえいえ、そういう訳には。では、ユズルさんとお呼びさせて頂きます。私の方こそ呼び捨てで構いません。ところでユズルさんはここで何をなさっていらっしゃったのでしょう?見たところ野営していらっしゃるご様子ですが・・・」
そう言いながらアイーシャはサイトを見回す。どうやら焚火が気になるようで、その一点をまるで獲物でも狙うような目つきで見つめている。
「アイーシャさん?どうしたんですか?」
「えッ?い、いや!こ、これは!『ぐううううううぅ!』ッ!ち、違うんですぅぅ!お昼から何も食べてないだけで・・・。あッ!と、とにかく違うんですぅ!・・・ううう・・・」
どうやらお腹が減っていらっしゃるようだ。
「ははは。大した物は無いですけど、袖触れ合うも他生の縁。です。良ければ食べていかれませんか?」
そう言いながら、アイーシャさんをローチェアーへと促す。
こうみえて女性に免疫はあるんだ!なぜならバイト先がシャレオツなコーヒースタンド『ブルースハレルズコーヒー』なのだから!
嘘です。内心ドキドキです。バイト先でも女性のお客様にお釣り渡すときドキドキしちゃいます。
「本当ですか!?有難うございますっ!!実はものすごーくお腹が減っていたのです!」
キラキラした笑顔で彼女はそう答えた。
「そうですそうです!まだ質問の答えを頂いていませんでした。ユズルさんは何故こんな所で野営を?」
「えっと・・・、そうですね。話すと長くなるのでまずは食事をどうぞ・・・って!もう食べてる!?」
こちらが勧めるよりも早く、彼女はステーキの8割ほどを口の中に頬張っていた。
「なんですか!!なんなんですか!?このお肉!!!とんでもなく美味しいです!こんなお肉食べたことがありません!」
「・・・ユズルさん!!」
「ハッ!ハイッ!?」
「これは一体何のお肉なんですか!?」
「何って・・・牛ですけど。和牛ですよ。ビンゴ牛」
「ウシ?ビンゴギュウ? ウシというのは一体どんな動物なのでしょう?ビンゴギュウとは?」
そうか、ここはやはり異世界だ。牛がいないのだろう。
僕はそう考えながら、携帯を取り出して、写真のフォルダから以前撮った黒毛和牛の写真を表示し、アイーシャさんに見せる。
「これが牛です」
アイーシャさんは僕のすぐ傍まで来て、携帯を覗き込む。 ち、近い! 顔が近い!
「えっ!?これってプウメじゃないですか・・・て!この器具は!? 解りました!魔道具の一種ですね?そう考えるとさっきの水筒も・・・、成程成程・・・」
「あの、アイーシャさん?」
「そうなのですねっ!!!!」
「ヒッ!?」
「解りましたよぉ!!ユズルさんはいずれ名のある魔導師様なのですね?高名な魔導師様に“さん”付けするとは・・・、私としたことが・・・失礼いたしました。ユズル様」
「い、いや、僕は魔導師じゃないんだけ・・・ど・・・」
「いえいえ!皆まで仰られなくても大丈夫です!! 御身分をお隠しになって旅をされているのでしょう?その不思議な天幕、奇妙な御姿も!全ては周りを欺く為の物!!!ああ!なんと素敵な!やはり好奇心に逆らわず足を赴けて良かったのです!!」
「奇妙って・・・、アイーシャさん?だから僕は・・・」
「ユズル様!ご心配なさらなくとも大丈夫です!このアイーシャ、ピオーネ家の名に懸けて、この事は一切他言いたしません!魔道具の事も、二日前の光の事も!ええ!決して漏らすものですか!私にお任せくださいませぇっ!!」
「いや、だから違うって・・・?光?アイーシャさん、光を見たって!?どこから?いつ見えたの??」
僕はアイーシャさんの肩を掴みながら問いただす。
「ちょ、ちょっとユズル様?!お顔が!お顔が近いですー!!」
「えっ?あ、ああ、ごめんなさい///」
「い、いえ。大丈夫です///」
なんだこれ。ラブコメか。
「とにかく光を見た時の事を教えてくれますか?」
「え、ええ、あれは2日前の夜。8つの鐘位でした。私の部屋からこの神山の方を眺めていた時でした。眺めていると、突然お山の方で光が爆発したように見えたのです」
「ど、どんな光だったんですか?」
「七色に見えて、白くも見えました。渦の様で・・・、あ、人の手の様にも見えました」
「そう・・・なんですね・・・」
もう間違いない。夜中の光。あれが僕を異世界に転移させたんだ。
しかし何故荷物も一緒に転移して、ペットボトルは不思議な道具に変わってしまったんだろうか?
しかし奇妙なのは、僕にとっては今日の夜中の出来事がここでは2日前?時差・・・かなにかかな?
まあそれはとりあえず置いておこう。ここにきてどうして聴きたい事が僕にはあった。
「アイーシャさん。その光って良くあるんですか?例えば何日かに一回とか、数年に一回とか」
「い、いえ、初めて見ました。ですから気になってここまで来たのですよ。というよりあの光もユズル様の魔法なのでしょう?」
「いや・・・、それは僕ではありません」
「そうなのですか?あっ!そうですね。そういう事にしておきます。ただですね、光には言い伝えがあって・・・、といってもおとぎ話のような物ですが・・・」
「そういう事って・・・、ん?言い伝え?言い伝えってなんですか!?」
「ちょ、ちょっとユズル様?!また!?お顔が!お顔が!!」
「えっ?あ、ああ、ごめんなさい///」
「い、いえ。大丈夫です///」
再度問おう。何だこれ。ラブコメか。
「い、言い伝えというのはですね、今からおよそ300年前、突然現れた光から別世界の人間が現れたらしいのです」
「それで?」
「その方は『はぐれ人』とよばれ、その方に最初に出会えた人はとても幸せになる事が出来たそうです。ただとんでもない冒険に巻き込まれたとも言われています。以上です」
「え?」
「え?」
「それで終わりですか?」
「ええ」
「勇者として魔王を倒し世界を救うとかではなく?」
「ええ」
「逆に魔王になったとかでもなく?」
「ええ。そもそも魔王なんていませんもの」
「え?」
「え?」
「魔王がいない?じゃあ魔物は?」
「魔物はいますよ?」
あ、魔物はいるんだ。
もしかしたら、伯父さんはこの光に巻き込まれたのかもしれない。そう思ったんだけど、どうやら違うようだ。300年前だもんな・・・。
「ユズル様?」
「え? あ、ああ、すいません。魔物がいるって、例えばどんな奴なんですか?」
「そうですねぇ。この辺りですと一番よく見るのは『ラクー』でしょうか・・・、大きいものでは『トライアド・ベア』ですかねぇ」
ベアって事は熊なのだろうか?あと『ラクー』ってのは・・・、もしかして。
「ラクーというのは、角があって、黒くて目の周りが白い?」
「そうですよ?どうしたんです?ラクーなんてよく見る魔物じゃないですか」
「え、いやぁ、とするとトライアド・ベアはやはり大きいのでしょうか?」
「?何を仰ってるのですか?どちらも左程大きくはないですよ?魔法で一発です!」
「魔法。魔法かぁ・・・、魔法、使えないしなぁ・・・」
「え?何を仰ってるのですか?物凄い魔力をお持ちなのに・・・、ああ!そうでした、世を欺く御姿なのでしたね!うっかりしてました!」
「え?」
「え?」
「僕に魔力が?」
「ええ」
「膨大な?」
「ええ。ですから高名な魔導師様かと」
「え?」
「え?」
*****
・・・魔力?この僕に?さっき試してみたけれど魔法なんて出なかったぞ?やりかたがおかしかったのかな?というか、なんでこの子は僕に魔力があるって分かるんだ?
「ね、ねえアイーシャさん?」
「はい?なんでしょう?」
「僕に魔力があるってどうして分かったのですか?」
「え?どうしてって、当たり前じゃないですかぁ」
「だ・か・ら!それがどうしてって聞いてるじゃな・い・で・す・かっ!」
「ええっ!三度目ぇっ!?ですからユズル様!お顔が!お顔が!!近いですうううう!」
「ハッ!す、すいません!何度も何度も・・・」
「い、いえ、構わないのですが///」
「とにかく、何故魔力の有無が分かるのか教えてくれますか!?」
「本気で仰られているのですか?」
「はい。本気も本気です」
「世を欺く・・・」
「もうそれはいいから!早く教えて!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか・・・」
「怒ってません。ですから教えて下さい」
「わ、分かりましたよぅ。ですけど!ユズル様?!」
「な、なんでしょう・・・?」
「先にこのビンゴギュウ?もっと頂いても宜しいですか?」
「え?ど、どうぞ・・・」
魔力が何故見えるのか?一体ここはどこなのか?まだこの謎は解明されない様である・・・。
ハァ・・・。
とにかく美しかった。
というよりも僕のタイプそのものだったのだ。
少しだけ癖のある黒髪で、肩甲骨まで有りそうなロングヘアー、大きくてパッチリとしているが少しだけキツそうに見える目、その瞳は綺麗な水色。すっと通った鼻筋、厚くもなく薄くもない柔らかそうな唇、服の上からでも分かる素晴らしいプロポーション。
その姿は僕の永遠のアイドル『どまぐれデコポンロード』のヒロイン『鯉山まどか』を彷彿とさせた。
「き、キミは?一体?」
???「&D(#$!K>‘は¥ )」
何を言ってるのかが全く分からない。
「! そうだ!そういえばアキュアリエスに言語能力って書いてあったぞ!」
僕は斧を下ろすと、明らかに狼狽している女の子に向かって両手の平を向け『ちょっと待って』とジェスチャーしてみる。
「分かってくれるといいんだけど・・・」
どうやら理解してくれたようで、女の子は静かになった。ワタワタと振り回していた手も降ろしてくれたようだ。
「と、取り敢えずここに座って?」
先程まで自分が座っていたローチェアーを指し示す。
女の子は理解したのか、恐る恐るながらもローチェアーに腰かけた。チョコンと腰かける姿がとても可愛い・・・って!違う、そうじゃない。
「た、試してみるか・・・」
僕はアキュアリエスのペットボトルを手に取り、簡易浄水器を着けずに一口飲んでみると、女の子に話しかけてみる。
「ぼ、僕の言葉、分かる?」
「ッ!分かりますっ!さっきまで全く意味が分からなかったのに・・・、どうしてですかっ?どうして突然?」
・・・やばい。声まで好みだ。って、違う、そうじゃない。
というか、これはもう間違いない。
謎の光、角付きハクビシン、無くなったザニトラと管理棟。それにこのペットボトル。更には言葉が理解できない美少女!どうやら僕は本当に異世界に来てしまった様だ。
只、なぜ周りの景色は変わってないんだろうか?よくある異世界転移物では全然違う場所に飛ばされるのが定石だと思ったのだけど・・・
「あの?すいませーん」
見た感じ周りの景色に大きな変化は見当たらなかった・・・
「あーのー!もしもしッ!?」
異世界に来たとして、ここまで景色が変わらないなんてことがあるのだろうか・・・
「ねえ!?聞こえてますかー!?」
先程管理棟があった場所から眺めた時も、九つ山群の硫黄岳辺りから噴煙が見えた。今は目の前で振られる手の平が見える・・・って!
「え?・・・あ、ご、ごめんなさいッ!考え事してました!」
僕の目の前で美少女が顔に向かって手を振っている。やっぱり可愛い。
「もう!やっぱり聞いてなかったんですね!?だ・か・ら!なんで突然言葉が分かるようになったんですか?って聞いているんですぅ!」
「そ、それはこのペットボトルの中身を口に含んだから・・・、あ、ペットボトルって分かる?」
そう言いながら、女の子に向かってペットボトルを差し出す。
「? 何ですかこれ? 水筒? でもこんな透明なものは見たことがないですね?さ、触っても?」
「ど、どうぞ」
女の子はペットボトルを手に取ると、さすってみたり、握りこんでみたりしているが、やめて頂きたい。
良からぬことを想像してしまうじゃないか。
「硬いようで、柔らかくもあり・・・不思議な素材ですねぇ。これは?・・・文字、でしょうか?全く読めません」
「あ、あのそろそろ返して貰っていいか、な?それと、僕は石動弓弦って言います」
「えっ?ああ!どうも有り難うございました!私はアイーシャ。アイーシャ・エル・ピオーネ、と申します。イ・シュ・ギ・ユ・ズ・ル?様?さん?変わったお名前ですねぇ」
「ははっ、変わっていますか?ユズルで構いませんよ。そちらはアイーシャさんで宜しいですか?」
「いえいえ、そういう訳には。では、ユズルさんとお呼びさせて頂きます。私の方こそ呼び捨てで構いません。ところでユズルさんはここで何をなさっていらっしゃったのでしょう?見たところ野営していらっしゃるご様子ですが・・・」
そう言いながらアイーシャはサイトを見回す。どうやら焚火が気になるようで、その一点をまるで獲物でも狙うような目つきで見つめている。
「アイーシャさん?どうしたんですか?」
「えッ?い、いや!こ、これは!『ぐううううううぅ!』ッ!ち、違うんですぅぅ!お昼から何も食べてないだけで・・・。あッ!と、とにかく違うんですぅ!・・・ううう・・・」
どうやらお腹が減っていらっしゃるようだ。
「ははは。大した物は無いですけど、袖触れ合うも他生の縁。です。良ければ食べていかれませんか?」
そう言いながら、アイーシャさんをローチェアーへと促す。
こうみえて女性に免疫はあるんだ!なぜならバイト先がシャレオツなコーヒースタンド『ブルースハレルズコーヒー』なのだから!
嘘です。内心ドキドキです。バイト先でも女性のお客様にお釣り渡すときドキドキしちゃいます。
「本当ですか!?有難うございますっ!!実はものすごーくお腹が減っていたのです!」
キラキラした笑顔で彼女はそう答えた。
「そうですそうです!まだ質問の答えを頂いていませんでした。ユズルさんは何故こんな所で野営を?」
「えっと・・・、そうですね。話すと長くなるのでまずは食事をどうぞ・・・って!もう食べてる!?」
こちらが勧めるよりも早く、彼女はステーキの8割ほどを口の中に頬張っていた。
「なんですか!!なんなんですか!?このお肉!!!とんでもなく美味しいです!こんなお肉食べたことがありません!」
「・・・ユズルさん!!」
「ハッ!ハイッ!?」
「これは一体何のお肉なんですか!?」
「何って・・・牛ですけど。和牛ですよ。ビンゴ牛」
「ウシ?ビンゴギュウ? ウシというのは一体どんな動物なのでしょう?ビンゴギュウとは?」
そうか、ここはやはり異世界だ。牛がいないのだろう。
僕はそう考えながら、携帯を取り出して、写真のフォルダから以前撮った黒毛和牛の写真を表示し、アイーシャさんに見せる。
「これが牛です」
アイーシャさんは僕のすぐ傍まで来て、携帯を覗き込む。 ち、近い! 顔が近い!
「えっ!?これってプウメじゃないですか・・・て!この器具は!? 解りました!魔道具の一種ですね?そう考えるとさっきの水筒も・・・、成程成程・・・」
「あの、アイーシャさん?」
「そうなのですねっ!!!!」
「ヒッ!?」
「解りましたよぉ!!ユズルさんはいずれ名のある魔導師様なのですね?高名な魔導師様に“さん”付けするとは・・・、私としたことが・・・失礼いたしました。ユズル様」
「い、いや、僕は魔導師じゃないんだけ・・・ど・・・」
「いえいえ!皆まで仰られなくても大丈夫です!! 御身分をお隠しになって旅をされているのでしょう?その不思議な天幕、奇妙な御姿も!全ては周りを欺く為の物!!!ああ!なんと素敵な!やはり好奇心に逆らわず足を赴けて良かったのです!!」
「奇妙って・・・、アイーシャさん?だから僕は・・・」
「ユズル様!ご心配なさらなくとも大丈夫です!このアイーシャ、ピオーネ家の名に懸けて、この事は一切他言いたしません!魔道具の事も、二日前の光の事も!ええ!決して漏らすものですか!私にお任せくださいませぇっ!!」
「いや、だから違うって・・・?光?アイーシャさん、光を見たって!?どこから?いつ見えたの??」
僕はアイーシャさんの肩を掴みながら問いただす。
「ちょ、ちょっとユズル様?!お顔が!お顔が近いですー!!」
「えっ?あ、ああ、ごめんなさい///」
「い、いえ。大丈夫です///」
なんだこれ。ラブコメか。
「とにかく光を見た時の事を教えてくれますか?」
「え、ええ、あれは2日前の夜。8つの鐘位でした。私の部屋からこの神山の方を眺めていた時でした。眺めていると、突然お山の方で光が爆発したように見えたのです」
「ど、どんな光だったんですか?」
「七色に見えて、白くも見えました。渦の様で・・・、あ、人の手の様にも見えました」
「そう・・・なんですね・・・」
もう間違いない。夜中の光。あれが僕を異世界に転移させたんだ。
しかし何故荷物も一緒に転移して、ペットボトルは不思議な道具に変わってしまったんだろうか?
しかし奇妙なのは、僕にとっては今日の夜中の出来事がここでは2日前?時差・・・かなにかかな?
まあそれはとりあえず置いておこう。ここにきてどうして聴きたい事が僕にはあった。
「アイーシャさん。その光って良くあるんですか?例えば何日かに一回とか、数年に一回とか」
「い、いえ、初めて見ました。ですから気になってここまで来たのですよ。というよりあの光もユズル様の魔法なのでしょう?」
「いや・・・、それは僕ではありません」
「そうなのですか?あっ!そうですね。そういう事にしておきます。ただですね、光には言い伝えがあって・・・、といってもおとぎ話のような物ですが・・・」
「そういう事って・・・、ん?言い伝え?言い伝えってなんですか!?」
「ちょ、ちょっとユズル様?!また!?お顔が!お顔が!!」
「えっ?あ、ああ、ごめんなさい///」
「い、いえ。大丈夫です///」
再度問おう。何だこれ。ラブコメか。
「い、言い伝えというのはですね、今からおよそ300年前、突然現れた光から別世界の人間が現れたらしいのです」
「それで?」
「その方は『はぐれ人』とよばれ、その方に最初に出会えた人はとても幸せになる事が出来たそうです。ただとんでもない冒険に巻き込まれたとも言われています。以上です」
「え?」
「え?」
「それで終わりですか?」
「ええ」
「勇者として魔王を倒し世界を救うとかではなく?」
「ええ」
「逆に魔王になったとかでもなく?」
「ええ。そもそも魔王なんていませんもの」
「え?」
「え?」
「魔王がいない?じゃあ魔物は?」
「魔物はいますよ?」
あ、魔物はいるんだ。
もしかしたら、伯父さんはこの光に巻き込まれたのかもしれない。そう思ったんだけど、どうやら違うようだ。300年前だもんな・・・。
「ユズル様?」
「え? あ、ああ、すいません。魔物がいるって、例えばどんな奴なんですか?」
「そうですねぇ。この辺りですと一番よく見るのは『ラクー』でしょうか・・・、大きいものでは『トライアド・ベア』ですかねぇ」
ベアって事は熊なのだろうか?あと『ラクー』ってのは・・・、もしかして。
「ラクーというのは、角があって、黒くて目の周りが白い?」
「そうですよ?どうしたんです?ラクーなんてよく見る魔物じゃないですか」
「え、いやぁ、とするとトライアド・ベアはやはり大きいのでしょうか?」
「?何を仰ってるのですか?どちらも左程大きくはないですよ?魔法で一発です!」
「魔法。魔法かぁ・・・、魔法、使えないしなぁ・・・」
「え?何を仰ってるのですか?物凄い魔力をお持ちなのに・・・、ああ!そうでした、世を欺く御姿なのでしたね!うっかりしてました!」
「え?」
「え?」
「僕に魔力が?」
「ええ」
「膨大な?」
「ええ。ですから高名な魔導師様かと」
「え?」
「え?」
*****
・・・魔力?この僕に?さっき試してみたけれど魔法なんて出なかったぞ?やりかたがおかしかったのかな?というか、なんでこの子は僕に魔力があるって分かるんだ?
「ね、ねえアイーシャさん?」
「はい?なんでしょう?」
「僕に魔力があるってどうして分かったのですか?」
「え?どうしてって、当たり前じゃないですかぁ」
「だ・か・ら!それがどうしてって聞いてるじゃな・い・で・す・かっ!」
「ええっ!三度目ぇっ!?ですからユズル様!お顔が!お顔が!!近いですうううう!」
「ハッ!す、すいません!何度も何度も・・・」
「い、いえ、構わないのですが///」
「とにかく、何故魔力の有無が分かるのか教えてくれますか!?」
「本気で仰られているのですか?」
「はい。本気も本気です」
「世を欺く・・・」
「もうそれはいいから!早く教えて!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか・・・」
「怒ってません。ですから教えて下さい」
「わ、分かりましたよぅ。ですけど!ユズル様?!」
「な、なんでしょう・・・?」
「先にこのビンゴギュウ?もっと頂いても宜しいですか?」
「え?ど、どうぞ・・・」
魔力が何故見えるのか?一体ここはどこなのか?まだこの謎は解明されない様である・・・。
ハァ・・・。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる