ペットボトルで能力開放!?【ソロキャンパーの異世界バックパッキング】

吉田C作

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第2章 ソロキャンパー、世界をめぐる

26、成長していくソロキャンパー。

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「暑い・・・」

クジュの山は今日も晴れ、自分の中では9月の初めだったのだけれど、この世界はどうやら暑いか寒いかの2択みたい。

今更だけど1日は24時間、1月は大体30日、1年は24カ月、これがこの世界での暦になる。地球でいう太陽は1つ、月が大中小3つ。太陽の呼び名はサニア、月はそれぞれイナ・ハニエ・ルミカと呼ぶ。

ちょっと話がずれたけど、1年の内1の月から12の月までは暑季といって12カ月真夏の気候が続き、13の月から24の月までは寒季となり真冬の気候が続くのだ。
ちなみに今は10の月。後2月も経てば一気に気温が下がり寒季になる。
何が不思議かって、春や秋のような気候が無く一気に暑くなったり寒くなったりするらしい。

要するにもう2月もすると一気に冬になる訳だ。
その為今は旅の準備に追われつつ、毎日鍛錬するという中々に忙しい日々を送っている。

ちなみにシブカンから戻って1週間程経っている。
あと2日か3日でブンゴールに旅立つ事になっているのだけど、これにはちゃんと訳があるのだ。
旅の準備は勿論だけど、リゼルさんとレッドアイから要望があったのだ。
2人共通しての要望は長旅になるだろうからきちんと装備を整えたいという事。

その上でリゼルさんは僕に剣術をある程度教えたかったらしいのだ。
これについては僕が『刀剣術』を使えるけれど、それはあくまでペットボトルの恩恵によるもので、いくら剣道をやっていたとはいえ剣についてはやはり未熟である事を懸念しての申し出だった。
僕自身ペットボトルに頼るだけではこの先厳しくなるのが目に見えていた為、力の底上げができるならと二つ返事でOKしたよ。

レッドアイはシブカンで『ミスリル鉱石』を安く見つけて来たらしく、自分の店で僕達の装備を整えた後にオ・グーニで合流するとの事だった。
公都に戻った途端、僕達を店に引っ張り込んで採寸を始めたもんだから、最初は「何事!?」と思ったけど、その場で『ミスリル』の話をされて納得した。
採寸だけでデザインは聞いてないからどんな物が出来るか楽しみにしてる。
それと『ミスリル』!ファンタジー世界では有名な鉱物だけどまさか自分が使う様になるとは思わなかった!

それで、この1週間だけど、・・・正直言って地獄だった。

オ・グーニに戻った後すぐにタラちゃんの住処に行く事になったのだけど、その時点でタラちゃんダッシュからのスタートだったのだ。
(タラちゃんとの追いかけっこにこっそり名前を付けたのは内緒ね)

オ・グーニからクジュの山中まで徒歩でゆっくり1日、その距離を基本全力ダッシュだよ?本当に意味が分からない。
まずアイーシャが動けなくなって吹っ飛ばされる。動けなくなった状態で魔力を練る。
で、治癒魔法で無理やり回復、その繰り返し、タラちゃんの住処に着くまで延々とだ。
アイーシャ泣いてたなあ。そうそうエルは凄く楽しそうだった。

僕もリゼルさんも基本は同じ、ダッシュ出来る時間がちょっと長いだけだ。
まあ、おかげでレベルやステータスもちょっと上がったのでOKだけど、正直死ぬと思ったね。
それからどこぞのハート○ン軍曹もびっくりな強行軍でタラちゃんの住処に着いたのだけど、そこでまたびっくりだった。

クジュ山の一部は所謂『岩峰』になっていて、その岩峰のとある場所で『『ここじゃ』』と言いだすもんだから思わず「どこじゃ?」って聞き返したね。
だって、只の岩の壁だよ?『『ここじゃ』』って言われても「??」ってならない?

ところがだ。タラちゃんが岩の壁に手を翳すとその壁が音も無く左右に分かれた訳だよ。
その先には広大な空間が広がっていて、内部の壁、その半分位が光ってた。
光ってる所は『明晶石』といって自ら光を放つ中々珍しい鉱石らしく、リゼルさんが「握り拳大で金貨2枚程度はしますよ」って教えてくれた。
(彼女がこっそり削っていたのはこれまた内緒ね)

その明晶石によって輝く空間の先にはやはり神殿の様な建造物があって、そこがタラちゃんの住処だった訳だけど、リヴィアスの所でタラちゃんが言った様に中はきれいに片付いていて正直目を疑った。なんとなくガサツなイメージがあったからね。

リヴィアスの所と違うのは玉座の様な豪奢な椅子がある事か。

それで結局この場所で1週間過ごす事になった訳だけど、なんというか最初の1日は拍子抜けだった。
本格的な鍛錬は次の日からという事で、まずは旅の計画を立てる事になったのだ。

ちなみにシブカンでブンゴール、ハヤト、グラーゴにそれぞれ1人ずつ神代の者がいるという事は確認していたので、まずは比較的距離が近いブンゴール連邦、そのまま南下してハヤトへ、公都へ補給に戻りつつグラーゴ王国に行き、その後海を渡り大森林へという順序で旅を進める事になっている。

次の日からはさっきも言った様に本当に地獄だった。
朝から昼まではタラちゃんとの鍛錬、という名のシゴキ。
最初はペットボトル無しでの戦闘、これがまずとんでもなかった!
タラちゃんが攻撃方法を予告して放って来るのだけど、まず見えない。見えないから当る。
吹っ飛ぶ。吹っ飛んだ先にタラちゃんが待っていて、また攻撃、当たる。吹っ飛ぶ。
意識を失いかける、治癒魔法。以下繰り返し。

これを2日で避けれる様になれだって。絶対に無理だと思ったね。だって見えないもん、攻撃。
ところが、ここで魔力を練る、その鍛錬を続けて来た事が生きて来た。徐々にだけど、タラちゃんが攻撃を放つ瞬間の魔力の流れを感じれる様になってきたんだ。
目に見える訳じゃないけど、空気の流れが変わる瞬間を肌で感じるようなイメージかな。

とにかくそれを感じる事が出来て、二日目にようやく右のフックみたいなパンチを避ける事が出来たのだけど。

『『避ける事が出来たか。では次じゃ。ペットボトルを飲んでおけ』』

これだよ?

そこからは魔法も刀も体術も交えた複合的な戦闘の訓練だった。
これが、それまでの鍛錬を遥かに超える地獄。
タラちゃんがフレイムを身に纏いながら突っ込んできたかと思えば、後ろに回られフレイムと蹴りの前後同時攻撃。そのフレイムを氷雪魔法の『アイスピラー』で防ぎながら、蹴りをガード。

ガードした瞬間にタラちゃんが手刀に魔力の刃を出現させながら袈裟切りに斬り込んでくる。ガード出来るわけがない。
ぶっちゃけ1週間で4、5回腕と足を切り落とされた。いや本当に。
想像を絶する痛みだった。こんな痛みが世の中に有るのかという位に痛かった。

でもね?

切り落とされた痛みでのたうちまわる僕にタラちゃんが治癒魔法をかけて腕や足をくっ付けてくれたのだけど、その痛みは切り落とされた時の比じゃなかった。
手足を切り落とされた痛みを数倍にした様な、それこそ死んだ方がマシと思える激痛が襲ってくるんだ。
でも治癒魔法の最中だから決して意識を失う事はないんだよ?気が狂うかと思った。

とにかく普通で有れば全く勝てる筈の化け物を相手に延々と闘わされるんだ。

で、タラちゃんとの鍛錬が終わったら今度は昼食を挟んでリゼルさんと剣術の鍛錬をする。
リゼルさんは双剣士、所謂2刀流の剣士なのだけど、もともとは1刀の使い手だったらしく、祓を数度振った後、刀の振り方、構え方何かを指導してくれた。
その後は1週間素振りのみ、まずは振る事に慣れないと話にならないらしい。
確かに真剣と竹刀ではかなり違うからね。

まあ、タラちゃんにしてもリゼルさんにしても僕に対して同じ様な懸念があったらしく、それがこの1週間の鍛錬ってことだ。

その懸念というのは勿論ペットボトルだ。

僕の場合、ペットボトルを使わないと現状では魔法やスキルが全くと言って良いほど使えない。
今後旅を続けていく中でこれは本当に致命的といえる欠点だ。それは僕もずっと感じてた事なのだけど、2人はまずそれをどうにかしたかったらしい。

それで現状の鍛錬って訳だ。
僕自身の身体能力を無理矢理引き上げる事によって、魔法やスキルが使えない状態でも戦える様にする。それが1番の目的で、後は戦いの流れを掴む事、痛みに対する恐怖心を減らす事、これ等を1週間で一気に僕に叩き込んだってわけだ。

何度も超回復を繰り返したせいか、ステータスもレベルも大分上がった。

ペットボトルを飲んでいない状態でこんな感じだ。


*********************

ユズル・イスルギ レベル87
野営者・退ける者・彼岸の旅人

体 力 9689
魔 力 250987
攻撃力 6839
防御力 8456
回避力 7327

魔 法 NONE
スキル 空間移動1 空間停滞1 刀剣術2

*********************


どうやらスキルにもレベルみたいな物があるみたい。

ちなみに僕の初期値はこんな感じ。


*********************

ユズル・イスルギ レベル20
野営者

体 力 250
魔 力 65536
攻撃力 300
防御力 350
回避力 400

魔 法 NONE
スキル NONE

*********************


こうやってみるととんでもない上昇率だな。
魔力に関しては元々高かったのかはぐれ人補正なのか上昇率がすごい。
勿論魔力を練る事を覚えたせいもあるのかもしれないが。
攻撃力より防御力・回避力が高くなってるのは、常にタラちゃんの攻撃を受け続けていたからだろう。

タラちゃんやリゼルさんの話だと、エルダーと肉弾戦で良い勝負が出来るらしい。
やらないけどね。
ん?という事は身体能力だけなら1等ギルダー超えてるんじゃない?
そう思ってリゼルさんに聞いてみると「身体能力だけはそうでしょうね」だって。
やはり技術やスキル、判断力なんかが圧倒的に足りてないみたいだ。

まあ、どちらにしてもあり得ない鍛錬だった訳だけど。

そうそう、アイーシャはというと最初の3日はひたすら魔力を練る事を強いられてたよ。
その後はずっと体力づくりだった。昼からこっちタラちゃんダッシュ。

とにかく、僕とアイーシャはかなりのステータスアップを果たした。
レッドアイに関しては合流してから地獄を見る事になる様で、タラちゃんとリゼルさんがほくそ笑んでる姿を何回か目にしてる。

そんなこんなで地獄の1週間を終えた後、今はクジュの山をオ・グーニに向かって下っている最中だ。
理由は勿論レッドアイと合流する為、でもその前に途中にある温泉に入ってく事になっている。

まずは温泉で疲れを癒して、レッドアイと合流、その後ブンゴールへの旅。

目的は気楽な物ではないけれど、異世界の長旅、やっぱりちょっと楽しみだね!

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