舞姫の君

藤雪花(ふじゆきはな)

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番外編

秘密4、

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 サニジンは、この際介抱するふりをして、ミラクルマッシュルームの効果を確認することにしたようである。
 秘密を語らせて、自分の常識の範囲で理解しきれないものとか、犯罪に絡んでいたりするようなことが出てきたら対処に困るとも思う。
 あえて知って排除しておくことも、今後のことを考えたら必要なことなのか。
 ジプサムは誰の秘密も聞き出したいとは思わない。
 ただ、数日前に体調を崩していたユーディアが気になった。
 あの救出直前の様子はただごとでなない様子だった。
 その時のことは知りたいと思う。
 再び、ミラクルマッシュルームの成分を体に取り入れて大丈夫なのか。
 案の定、ユーディアは頭を押さえていた。

「ジプサムさま、テントで休んでいいですか。お酒が回ってきたかも」
 ふらりと立ち上がるので、ジプサムは肩を貸す。
 ジプサムよりも先に立ち上がろうとしたブルースは、ベッカムに袖を引かれどんと座らされる。
「護衛兵士は何が起こっても対処できるように周囲を見ろ」
 といいつつ、ベッカムもかなり酔っぱらっているようである。

「王子と小姓が逆転しているぞ!小姓、しっかりしろ!」

 そんな風に今まではやし立てられたことはないが、常日頃彼らはそう思っているのだろう。
 名誉のためにジプサム王子が小姓を凌辱しているという噂は演技だったということは明らかにしたが、ユーディアが色小姓だというところは否定していない。
 ファイザーの館では、女が部屋に送られてくることを避けるために、同室で寝ていたぐらいなのだ。

 三人用の簡易なテントには、厚手の敷物が何枚も敷かれ、河原の小石が背中に触れないようになっていた。
 ユーディアは、テントに入るなり大の字になって寝て、大きなため息をついた。
「ジプサムも横になって」
 言われるままに横になった。
「どんな気分?」
「ふわふわ気持ちがいい感じ」
「何か、話したくなるような気分だったりするのか?その、前の時と同じような?」
「めがまわるようなくらくらするような感じはよく似ている気がするけど、それは酒を飲んだからかな?」

 ユーディアを救出に突入した夜以来、久々に二人きりである。
 ジプサムも背中を下に、ユーディアの横に寝転んだ。
 顔だけユーディアに向けた。 

「もう体は大丈夫なのか?」
「大丈夫」
「救出直前、何が起こっていたのか知りたいんだが」
「アッシュが、僕の秘密を知りたがっただけ」
「おとりの?」
「おとりと知った上で、僕の体の秘密を知りたがった。服を脱がせて裸を確認したんだ」
「なんだって」

 それは初耳である。
 ブルースがユーディアを確保して、ジプサムも事後処理に忙しく詳細をユーディアから聞いていなかった。
 ずっとブルースがユーディアを放さなかったのだ。
 それはジプサムの目からというよりも、誰の目からもユーディアを隠したいというような過保護さ感じたが、事態はより深刻だった。ブルースだけが負うべきものではないではないか。
 赤毛の盗賊に対するささやかな温情、彼を利用しての今後の計画すべてが吹き飛ばすのに十分な、怒りが湧き上る。
 ジプサムが見たことがない、ユーディアの裸を見たことに対する嫉妬。
 今からでも処刑した方がいいと思う。

「あいつはどんな風に確認したんだ」
 ユーディアは横を向き、ジプサムの手を取って頬に押し付けた。
「まず顔に触れた。その手が首筋を伝い、胸をつかんだ。さらに、宦官のように去勢されているのかを知りたがり、手が下に降りていって探った」
「去勢も何も、男のままなんだから……」

 ユーディアの言葉通りにジプサムの手が誘導されていく。
 首から下は前合わせのひもがほどかれ白い晒が巻かれた上から胸をさわらせる。
 晒からではなくて、直接にだよ、つかまれると痛くて、とユーディアはいう。
 ユーディアは、胸のやけどの跡をきつく締めて見せないようにしている。
 本人がひた隠しにするその跡を見て、つかんだというのか。
 憤怒すると同時にジプサムの心臓は強く打ち始めた。
 吐く息が熱くなる。

 手が探るその体を、視線も追う。
 晒を滑りその下にはすっと縦に切れたへそがある。
 ウエストは引き締まり、日に当たらない部分は真っ白だ。
 滑らせると肌に吸い付いてくる。
 そのまま手を腰から背面へ、お尻に滑らせたくなる。
 男の尻はもっと固いと思っていたが、意外に弾むような筋肉がついて柔らかい。
 
 女の肌のようだと思ったとたん、ユーディアの肌から感じる甘やかな匂いにジプサムの下半身が反応していく。

「……下履きの中に手を入れて、形を探った。違う、僕たちは立っていたんだ。腰から後ろではなくて、前から滑りこみ指で……」
 ユーディアは目を閉じて思い出していた。
 ジプサムの胸に当たる息は熱い。
「ユーディア、だめだ」

 太ももの間にジプサムの手を差し入れようとしたので、あわててジプサムは手を引いた。
 このままでは、川辺のテントでユーディアの体を愛撫してしまいそうだった。
 ユーディアは自白剤で理性のタガが緩んでしまっている。
 


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