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第8話 勝負
78-2、勝負 棒
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サニジンがユーディアの勝利を告げ、棒で打ち合っていた者たち全員が動きを止めて二人を見た。
「あんたの負け。サンを侮辱したことをこの場で謝ってほしい」
きらきらと輝く宝石のような目が、ルーリクを見ていた。
完全な敗北だった。
この馬や棒を自在に操る女は、ただの奴隷ではなかった。
秩序を壊し、新たな変化を生む女だ。
撃ち落された手はしびれていたが、この女にルーリクの心はしびれた。
この勝負が何をきっかけに始まったのか、ルーリクにはもうどうでもいいことだった。
「今まで不快にさせて申し訳なかった」
ルーリクはサンに向かって素直に謝罪する。
「え?あ、はい!では許します!僕も至らないところが多くてイライラさせることがこれからもあるのじゃないかと思いますが、共に切磋琢磨したいとと思っています!」
サンは緊張した面持ちで生真面目に答えている。
そこへ、ドンと背後から背中を小突かれ手に持っていた棒を取り落して膝をついた。
わけのわからない顔をしたサンに、背後で仁王立つのはクロード。
「サン、お前俺との勝負をないがしろにしていいのか?」
「あ、すみませんっ、勝負の途中でした」
「ったく馬鹿だなあ」
どっとその場がわく。
だが同じ馬鹿でもさげすみのニュアンスはない。
「今ならルーリクに勝てそうだ。本当は顔だけなんだろ?裏から手をまわして王子騎士の枠に入り込んできたに違いないって思っていたんだ。次は俺の相手になってもらえないだろうか?」
そういうのはラルフ。
彼から話しかけてきたことはこれまで一度もない。
辛辣な言葉に、ルーリクは自分たちが見下していたように、見下していたものたちも自分たちのことをある意味、見誤っていることを知る。
互いを隔てていた見えない線を越えても、雷は落ちないし、雪崩も起こらない。
もちろんジプサム王子の叱責が飛ぶわけでも、サニジンが密につけているだろう各自の評価が下がるわけでもない。サニジンは身分など気にしない男だった。
だから、モルガン族の奴隷を王子のそばに置いているし、王子騎士を身分に分け隔てなく選んだのだ。
にやりとルーリクは笑った。
「ラルフ、言ってくれるね。裏口で入ったかどうかすぐにわかるだろうよ」
もとより、王子の騎士になる者同士で出身がどうだという方がおかしいのだ。
実力があれば、彼らの上に立てるし、王子の信頼を得て責任のある立場に立つと誰もがそう思ったのである。
10人の王子騎士の友情が生まれ結束が固まったのは、蛮族出身の男装の小姓とのルーリクの勝負で、ルーリクが1勝3敗で無様に負けた時だったと思い出話になるのはまだ先だったが、確実に彼等の意識が雪が水滴に代わるように変容した瞬間だった。
ルーリクはたて続けに申し込まれた勝負を受けて立った。
サラードには辛くも負けたが、他はすべて勝利する。
もちろん、体じゅうにあざができたが、打たれた分は倍にして返してやった。
「顔だけじゃない男だったんだな」
「顔は認めてくれていてありがとう」
王子騎士見習いの中ではサラードに次いでの実力を見せつけ、ルーリクは騎士仲間の中で名誉を挽回したのである。
「あんたの負け。サンを侮辱したことをこの場で謝ってほしい」
きらきらと輝く宝石のような目が、ルーリクを見ていた。
完全な敗北だった。
この馬や棒を自在に操る女は、ただの奴隷ではなかった。
秩序を壊し、新たな変化を生む女だ。
撃ち落された手はしびれていたが、この女にルーリクの心はしびれた。
この勝負が何をきっかけに始まったのか、ルーリクにはもうどうでもいいことだった。
「今まで不快にさせて申し訳なかった」
ルーリクはサンに向かって素直に謝罪する。
「え?あ、はい!では許します!僕も至らないところが多くてイライラさせることがこれからもあるのじゃないかと思いますが、共に切磋琢磨したいとと思っています!」
サンは緊張した面持ちで生真面目に答えている。
そこへ、ドンと背後から背中を小突かれ手に持っていた棒を取り落して膝をついた。
わけのわからない顔をしたサンに、背後で仁王立つのはクロード。
「サン、お前俺との勝負をないがしろにしていいのか?」
「あ、すみませんっ、勝負の途中でした」
「ったく馬鹿だなあ」
どっとその場がわく。
だが同じ馬鹿でもさげすみのニュアンスはない。
「今ならルーリクに勝てそうだ。本当は顔だけなんだろ?裏から手をまわして王子騎士の枠に入り込んできたに違いないって思っていたんだ。次は俺の相手になってもらえないだろうか?」
そういうのはラルフ。
彼から話しかけてきたことはこれまで一度もない。
辛辣な言葉に、ルーリクは自分たちが見下していたように、見下していたものたちも自分たちのことをある意味、見誤っていることを知る。
互いを隔てていた見えない線を越えても、雷は落ちないし、雪崩も起こらない。
もちろんジプサム王子の叱責が飛ぶわけでも、サニジンが密につけているだろう各自の評価が下がるわけでもない。サニジンは身分など気にしない男だった。
だから、モルガン族の奴隷を王子のそばに置いているし、王子騎士を身分に分け隔てなく選んだのだ。
にやりとルーリクは笑った。
「ラルフ、言ってくれるね。裏口で入ったかどうかすぐにわかるだろうよ」
もとより、王子の騎士になる者同士で出身がどうだという方がおかしいのだ。
実力があれば、彼らの上に立てるし、王子の信頼を得て責任のある立場に立つと誰もがそう思ったのである。
10人の王子騎士の友情が生まれ結束が固まったのは、蛮族出身の男装の小姓とのルーリクの勝負で、ルーリクが1勝3敗で無様に負けた時だったと思い出話になるのはまだ先だったが、確実に彼等の意識が雪が水滴に代わるように変容した瞬間だった。
ルーリクはたて続けに申し込まれた勝負を受けて立った。
サラードには辛くも負けたが、他はすべて勝利する。
もちろん、体じゅうにあざができたが、打たれた分は倍にして返してやった。
「顔だけじゃない男だったんだな」
「顔は認めてくれていてありがとう」
王子騎士見習いの中ではサラードに次いでの実力を見せつけ、ルーリクは騎士仲間の中で名誉を挽回したのである。
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