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第1話「氷の女王」 冬の国デンドロン
3.冬の国デンドロンの騎士ジュード
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今回の傷心の旅はムハンマド、ムハンマドの護衛で顔に傷のあるバラー、男装リリアス、リリアスの護衛役バード、吟遊詩人のノアールの5名。
旅のお金持ち商人の息子とその護衛、その他はご友人達、という体をとっている。
彼らは目立っていた。
近寄る者をまず威嚇する、図体の良いバラーにオアシスの住民は道を空ける。
続いて端正な顔立で強い目の光をもったムハンマドに目をひかれる。
どこぞの貴族の息子だろう?と考える。
そのあとに、甘いマスクの、大人の男の魅力を無駄にふりまくノアールが続く。
バードはこのグループにいながも、目立つ感じがないのがすごい、とリリアスは思う。
どこにいても自然体で溶け込める特技は、以前パリス国の隠密をしていただけある。
この飄飄としたバードがなぜに2年も自分と行動をともにしてくれているのか、不思議に思う。
パリスの王子ルージュがリリアスを守れっていったから、と以前聞いたことがある。
彼はその指示を遠く離れた異国で守ってくれている。
彼もルージュとどこかで繋がっているのだろうか?
となんとなく、夜の夢を思いだし、リリアスは振り払うように首をふった。
そう思っている、リリアスは実は密かに視線を集めてしまう。
ある意味派手なご一行のなかで、すらっと細身のからだ、綺麗な黒髪を後ろで無造作にひとつ結びにしている、その凛とした姿。
男の成りではあるが、女性にみえないこともない。
異国人であろう、日焼けをしてはいるが白い肌、黒い目。
綺麗といえばきれいであるが、絶世の、というほどではない。
まとう雰囲気が、きれいなのだ。
超絶目立つ一行に同行している彼は何者なんだろう?
相手に媚びをうるような愛嬌や表情がないので、次第に男であることを疑わなくなる。
ただ、また見つづけていると不思議なことに気がつく。
この黒髪の青年を商人の道楽息子はちらちらと見ては話しかけ、注意をひきたがり、甘いマスクの男は、彼には取って置きの笑顔を向けている。
さらに、なんでもない風を装っている茶色い髪の異国人は、黒髪と常に一定の距離をとっている。
油断なく周囲をさりげなくうかがっているようだった。
リリアスに注目していたひとり、銀髪の若者ジェードは報告書を思い出す。
ムハンマド王弟の背格好、彼が好んで従える親衛隊隊長の顔の傷、吟遊詩人の密偵?がいて、最近の王位交替の際には黒髪の美女を現王バーライトと争ったという。
黒髪の美女の詳細は、確か、一年ほど前に、バーライトが砂漠で拾い、自分のマッサージ師として教育。
前王が崩御した緊迫の瞬間には、彼女はバーライトではなく、なぜかムハンマドの側にいたという。
バーライトとムハンマドの間で何か取引があったのではと報告書にはあった。
さらにムハンマドは彼女を溺愛している、と記されていた。
彼が彼女であれば、確実だ。
ムハンマドは、昨年右腕を負傷し障害を負っているとあった。
彼の右手は??
「何が、確実なんだ?銀髪さん」
ジェードは飛び上がる程びっくりして、手に持っていた適当な野菜を取り落としかけた。
あの一行の茶髪の男が声をかけたのだ。
道楽息子、顔に傷のある男、甘いマスクの男、黒髪の若者が全員、ジュードを見ていた。
「わたしは、デンドロン国から参りました。アデュラリア女王の第一の騎士ジュードと申します。
このようなところで偶然にもお会いできまして光栄至極でございます。ムハンマド王弟ご一行様のように拝見いたしましたが、あっておりますか?」
銀髪、アイスブルーの目が、開き直った。
いずれ、対面して話す必要があった。
それが今になっただけだった。
ノアールは眉をあげて、ひゅーっと唇をつきだした。
「アデュラリア女王の冬の王国デンドロンですか!」
「、、、ご案内状を差し上げたのですが、なかなかお返事をいただけないので、私の方からムハンマドさまを探しにまいりました」
ジュードは20代前半の、恐れを知らないまっすぐなアイスブルーの目で、ムハンマドを見る。
「我がデンドロンにお越しいただき、火の加護を持つ赤毛の王弟さまの力によってデンドロンに『春』を取り戻してもらえないでしょうか!!」
ジェードはムハンマドの前に膝まづき、頭を垂れる。
いつのまにか、もう一人、銀髪の壮年の男性がジュードに従う。
オアシスの町の通行人は丸々な目をして
この滑稽な図をみていた。
「お話だけでもきいてあげましょう、、、わたしたちは、王弟さまとは関係のない旅のものですが」
ノアールは彼の手をとり、立たせた。
場所を移す。
ノアールの手配した個室だ。
静かに休める場所にノアールは実に詳しい。
「我が国、海と氷河に守られた樹木の国に、デンドロンにはささやかながら四季があり、一年のうち数か月は、春夏秋と駆け抜けます。命が燃える季節です。
それが、二年前から『春』の訪れがなくなりました。『春』が女王にとらえられてしまったのです」
「春は捕まえられるものだったか?」
バラーは不快な顔をしている。
「我がアデュラリア女王は春を閉じ込めた。デンドロンの女王さまですから」
ムハンマドをみる。
「バラモン国の王がみな赤毛で火の精霊の加護をもっているのと同じようなものです」
ジュードは情報に詳しい。
冬の国デンドロンは国交がないとはいえ、情報収集には熱心なようだった。
「二年前からバーライトさまにはいらっしゃるようにお願いしておりましたが、良い返事をいただけないまま、王になられてしまいましたので、王弟さまに来ていただけると、本当にデンドロンとしてはありがたいのです。
火の精霊の力で、女王の冷たい心を溶かして、閉じ込められた春をふたたびデンドロンにもたらして欲しいのです」
リリアスは嫌な気持ちがした。
冷たい心をとかす情熱って恋ではないか?
なぜにムハンマドに白羽の矢が立つのだ?
「わたしがいっても、春がくるとかはいえないし、こちらには行く用事もない。一方的にこいというなら、なにか相応のを用意しているんだろうな」
ムハンマドの目が野心的にきらめく。
ジュードは畏まって言った。
「向う10年、年間1トンの氷をムハンマドさまに差し上げましょう」
決まりだった。
砂漠でかき氷!がさも涼しげに、一行の頭に浮かんだのだった。
旅のお金持ち商人の息子とその護衛、その他はご友人達、という体をとっている。
彼らは目立っていた。
近寄る者をまず威嚇する、図体の良いバラーにオアシスの住民は道を空ける。
続いて端正な顔立で強い目の光をもったムハンマドに目をひかれる。
どこぞの貴族の息子だろう?と考える。
そのあとに、甘いマスクの、大人の男の魅力を無駄にふりまくノアールが続く。
バードはこのグループにいながも、目立つ感じがないのがすごい、とリリアスは思う。
どこにいても自然体で溶け込める特技は、以前パリス国の隠密をしていただけある。
この飄飄としたバードがなぜに2年も自分と行動をともにしてくれているのか、不思議に思う。
パリスの王子ルージュがリリアスを守れっていったから、と以前聞いたことがある。
彼はその指示を遠く離れた異国で守ってくれている。
彼もルージュとどこかで繋がっているのだろうか?
となんとなく、夜の夢を思いだし、リリアスは振り払うように首をふった。
そう思っている、リリアスは実は密かに視線を集めてしまう。
ある意味派手なご一行のなかで、すらっと細身のからだ、綺麗な黒髪を後ろで無造作にひとつ結びにしている、その凛とした姿。
男の成りではあるが、女性にみえないこともない。
異国人であろう、日焼けをしてはいるが白い肌、黒い目。
綺麗といえばきれいであるが、絶世の、というほどではない。
まとう雰囲気が、きれいなのだ。
超絶目立つ一行に同行している彼は何者なんだろう?
相手に媚びをうるような愛嬌や表情がないので、次第に男であることを疑わなくなる。
ただ、また見つづけていると不思議なことに気がつく。
この黒髪の青年を商人の道楽息子はちらちらと見ては話しかけ、注意をひきたがり、甘いマスクの男は、彼には取って置きの笑顔を向けている。
さらに、なんでもない風を装っている茶色い髪の異国人は、黒髪と常に一定の距離をとっている。
油断なく周囲をさりげなくうかがっているようだった。
リリアスに注目していたひとり、銀髪の若者ジェードは報告書を思い出す。
ムハンマド王弟の背格好、彼が好んで従える親衛隊隊長の顔の傷、吟遊詩人の密偵?がいて、最近の王位交替の際には黒髪の美女を現王バーライトと争ったという。
黒髪の美女の詳細は、確か、一年ほど前に、バーライトが砂漠で拾い、自分のマッサージ師として教育。
前王が崩御した緊迫の瞬間には、彼女はバーライトではなく、なぜかムハンマドの側にいたという。
バーライトとムハンマドの間で何か取引があったのではと報告書にはあった。
さらにムハンマドは彼女を溺愛している、と記されていた。
彼が彼女であれば、確実だ。
ムハンマドは、昨年右腕を負傷し障害を負っているとあった。
彼の右手は??
「何が、確実なんだ?銀髪さん」
ジェードは飛び上がる程びっくりして、手に持っていた適当な野菜を取り落としかけた。
あの一行の茶髪の男が声をかけたのだ。
道楽息子、顔に傷のある男、甘いマスクの男、黒髪の若者が全員、ジュードを見ていた。
「わたしは、デンドロン国から参りました。アデュラリア女王の第一の騎士ジュードと申します。
このようなところで偶然にもお会いできまして光栄至極でございます。ムハンマド王弟ご一行様のように拝見いたしましたが、あっておりますか?」
銀髪、アイスブルーの目が、開き直った。
いずれ、対面して話す必要があった。
それが今になっただけだった。
ノアールは眉をあげて、ひゅーっと唇をつきだした。
「アデュラリア女王の冬の王国デンドロンですか!」
「、、、ご案内状を差し上げたのですが、なかなかお返事をいただけないので、私の方からムハンマドさまを探しにまいりました」
ジュードは20代前半の、恐れを知らないまっすぐなアイスブルーの目で、ムハンマドを見る。
「我がデンドロンにお越しいただき、火の加護を持つ赤毛の王弟さまの力によってデンドロンに『春』を取り戻してもらえないでしょうか!!」
ジェードはムハンマドの前に膝まづき、頭を垂れる。
いつのまにか、もう一人、銀髪の壮年の男性がジュードに従う。
オアシスの町の通行人は丸々な目をして
この滑稽な図をみていた。
「お話だけでもきいてあげましょう、、、わたしたちは、王弟さまとは関係のない旅のものですが」
ノアールは彼の手をとり、立たせた。
場所を移す。
ノアールの手配した個室だ。
静かに休める場所にノアールは実に詳しい。
「我が国、海と氷河に守られた樹木の国に、デンドロンにはささやかながら四季があり、一年のうち数か月は、春夏秋と駆け抜けます。命が燃える季節です。
それが、二年前から『春』の訪れがなくなりました。『春』が女王にとらえられてしまったのです」
「春は捕まえられるものだったか?」
バラーは不快な顔をしている。
「我がアデュラリア女王は春を閉じ込めた。デンドロンの女王さまですから」
ムハンマドをみる。
「バラモン国の王がみな赤毛で火の精霊の加護をもっているのと同じようなものです」
ジュードは情報に詳しい。
冬の国デンドロンは国交がないとはいえ、情報収集には熱心なようだった。
「二年前からバーライトさまにはいらっしゃるようにお願いしておりましたが、良い返事をいただけないまま、王になられてしまいましたので、王弟さまに来ていただけると、本当にデンドロンとしてはありがたいのです。
火の精霊の力で、女王の冷たい心を溶かして、閉じ込められた春をふたたびデンドロンにもたらして欲しいのです」
リリアスは嫌な気持ちがした。
冷たい心をとかす情熱って恋ではないか?
なぜにムハンマドに白羽の矢が立つのだ?
「わたしがいっても、春がくるとかはいえないし、こちらには行く用事もない。一方的にこいというなら、なにか相応のを用意しているんだろうな」
ムハンマドの目が野心的にきらめく。
ジュードは畏まって言った。
「向う10年、年間1トンの氷をムハンマドさまに差し上げましょう」
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