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第1話「氷の女王」 冬の国デンドロン
4.デンドロンの剣術
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デンドロン国のもう一人の使者、リヒターは話がまとまりそうな状況をみていた。
ずい、とジュードの前にでて、ムハンマドを厳しい目でみる。
「ところで、ですがあなた様は本当にムハンマド王弟でしょうか?
わたしどもの把握しているところと、些細ではありますが、見逃せない差違があるようです」
ジュードは指摘され、はっとした。
先程から目の前の男は右腕を使っている。
報告では王弟は怪我により腕がぴくりとも上がらなかったのではないか?
それに、黒髪の娘は黒髪の若者である。差違二つ!
「わたしはムハンマドそのものだが、なんだったら怪我の跡でもみるか?腕はマッサージで治したのだ」
ムハンマドは黒髪の若者を愛しげにみる。
「確認したいのなら、見せもするが、、」
ジュードは立ちあがり、腰の剣を鞘ごと掴んだ。
彼はデンドロン国の女王付き第一の騎士である。確認の仕方は肌をみせてもらうより、こちらの方がいい。
先ほどまでの、育ちの良いお坊っちゃんのどこか抜けた感じのあるところが、削ぎ落ちる。
「こちらで確認させていただいても良いでしょうか?」
ははっとムハンマドは笑った。
北の国の者と手合わせをするのははじめてだった。
「面白いな」
デンドロン国の騎士とバラモン国の王弟ハンマドの剣術勝負が決まった。
場所はオアシスの外に移動する。
ジュードの剣はパリスの剣と似ていた。
だが、さらに細い。
両刃だ。
ムハンマドの剣は反り返った片刃の剣。
二人は様子を見合う。
ジュードは剣を突きいれる。
突きと払いを組み合わせた、二段階の複雑な軌道を描く。
ムハンマドは最初の突きをかわしてから、さらに振り抜かれる剣先をかわさなければならない。
何回かかわすと、ムハンマドは最初の突きだされた瞬間に、右手で握った剣を使い狙いすまして叩きつけた。
ジュードの剣は衝撃で地面に食い込んだ。
ジュードは剣からすぐさま体術に切り替える。
腰を落として片身になり拳を握る。
握った拳をたたきこむタイプの体術だ。
相手に顔に、脳に、内臓にダメージを与えて倒す。
はらはらしているリリアスと比べ、見ているバラーはうずうずしている。
バードも真剣に見ている。
冬の国の戦闘方式は研究されていない。
パンチが真っ直ぐムハンマドの頬に入った。
やったっと思った瞬間、ムハンマドは顎先を少し後ろに流した。
それだけで、クリーンヒットがかわされた。
赤く燃える目がすぐ側にあった。
ジュードのアイスブルーの目は、赤く燃える目に焼かれた。首根っこをとられ地面に叩き落とされる。
「一本!」
バラーがいい、勝負は決まった。
炎の燃える目は、バラモンの王族の王位継承権を持ったものだけがもつ、火の精霊の熱い目だった。
彼のアデュラリアの冷たい心を溶かす熱があった。
アデュラリアが頬を染めて笑い、己がうれしくて笑い返す幻影が浮かぶ。
衝撃で、背骨がきしみ肺からすべての空気が押し出された。
肋骨の何本かは骨折し、のど輪を食らってしまって声が一生でなくなるかもしれない。
それでも、アデュラリアの凍えた心を溶かすのなら、良いかもと思う。
火の加護を持つ男を見つけたのだ。
それが、意識を失っていてくデンドロン国の騎士が最後に思ったことだった。
ノアールは銀髪の若者の体を診た。
彼は医者でもある。
リリアスも後ろにつく。リリアスは医者の元でお手伝いをしていたこともある。
「呼吸の様子からみると、肋骨の何本かはひび。もしくは骨折。のども怪しいです。ムハンマド、、」
ムハンマドは柄にもなく申し訳なさそうな顔をしていた。
「彼が本気できたからつい、、」
一番の年長のリヒターは落ち着いている。
「いえ、お気になさらず。受け身をとれなかったジュードが情けないのです。
ムハンマド様は強いと聞いています。ジュードも第一の騎士。
弱くはありません。
ムハンマド様疑いまして申し訳ありませんでした。彼は、、」
リヒターは残念そうにいう。
「動けるようになるまで、ここに残して我々はデンドロンに行きましょう」
「おいていくのか?」
リヒターの決断にムハンマドは意外な顔をする。
「お恥ずかしながら、我々には一刻の猶予もないのです。」
「置いていくのは、それはないと思う。そもそもムハンマドが容赦ないのが悪い!」
涙目でリリアスはきっとムハンマドをにらんだ。
リリアスも以前容赦なく蹴りをいれられたことがある。
「僕がみるっ」
ノアールはいいのですか?とムハンマドをみる。
「嫌とはいえないか??」
ムハンマドはリリアスに渋々任せることにした。
若い男を手で触れてマッサージをするなんて、リリアスは自分の心をわかっていない。
ムハンマドは苦々しく思うのだった。
ずい、とジュードの前にでて、ムハンマドを厳しい目でみる。
「ところで、ですがあなた様は本当にムハンマド王弟でしょうか?
わたしどもの把握しているところと、些細ではありますが、見逃せない差違があるようです」
ジュードは指摘され、はっとした。
先程から目の前の男は右腕を使っている。
報告では王弟は怪我により腕がぴくりとも上がらなかったのではないか?
それに、黒髪の娘は黒髪の若者である。差違二つ!
「わたしはムハンマドそのものだが、なんだったら怪我の跡でもみるか?腕はマッサージで治したのだ」
ムハンマドは黒髪の若者を愛しげにみる。
「確認したいのなら、見せもするが、、」
ジュードは立ちあがり、腰の剣を鞘ごと掴んだ。
彼はデンドロン国の女王付き第一の騎士である。確認の仕方は肌をみせてもらうより、こちらの方がいい。
先ほどまでの、育ちの良いお坊っちゃんのどこか抜けた感じのあるところが、削ぎ落ちる。
「こちらで確認させていただいても良いでしょうか?」
ははっとムハンマドは笑った。
北の国の者と手合わせをするのははじめてだった。
「面白いな」
デンドロン国の騎士とバラモン国の王弟ハンマドの剣術勝負が決まった。
場所はオアシスの外に移動する。
ジュードの剣はパリスの剣と似ていた。
だが、さらに細い。
両刃だ。
ムハンマドの剣は反り返った片刃の剣。
二人は様子を見合う。
ジュードは剣を突きいれる。
突きと払いを組み合わせた、二段階の複雑な軌道を描く。
ムハンマドは最初の突きをかわしてから、さらに振り抜かれる剣先をかわさなければならない。
何回かかわすと、ムハンマドは最初の突きだされた瞬間に、右手で握った剣を使い狙いすまして叩きつけた。
ジュードの剣は衝撃で地面に食い込んだ。
ジュードは剣からすぐさま体術に切り替える。
腰を落として片身になり拳を握る。
握った拳をたたきこむタイプの体術だ。
相手に顔に、脳に、内臓にダメージを与えて倒す。
はらはらしているリリアスと比べ、見ているバラーはうずうずしている。
バードも真剣に見ている。
冬の国の戦闘方式は研究されていない。
パンチが真っ直ぐムハンマドの頬に入った。
やったっと思った瞬間、ムハンマドは顎先を少し後ろに流した。
それだけで、クリーンヒットがかわされた。
赤く燃える目がすぐ側にあった。
ジュードのアイスブルーの目は、赤く燃える目に焼かれた。首根っこをとられ地面に叩き落とされる。
「一本!」
バラーがいい、勝負は決まった。
炎の燃える目は、バラモンの王族の王位継承権を持ったものだけがもつ、火の精霊の熱い目だった。
彼のアデュラリアの冷たい心を溶かす熱があった。
アデュラリアが頬を染めて笑い、己がうれしくて笑い返す幻影が浮かぶ。
衝撃で、背骨がきしみ肺からすべての空気が押し出された。
肋骨の何本かは骨折し、のど輪を食らってしまって声が一生でなくなるかもしれない。
それでも、アデュラリアの凍えた心を溶かすのなら、良いかもと思う。
火の加護を持つ男を見つけたのだ。
それが、意識を失っていてくデンドロン国の騎士が最後に思ったことだった。
ノアールは銀髪の若者の体を診た。
彼は医者でもある。
リリアスも後ろにつく。リリアスは医者の元でお手伝いをしていたこともある。
「呼吸の様子からみると、肋骨の何本かはひび。もしくは骨折。のども怪しいです。ムハンマド、、」
ムハンマドは柄にもなく申し訳なさそうな顔をしていた。
「彼が本気できたからつい、、」
一番の年長のリヒターは落ち着いている。
「いえ、お気になさらず。受け身をとれなかったジュードが情けないのです。
ムハンマド様は強いと聞いています。ジュードも第一の騎士。
弱くはありません。
ムハンマド様疑いまして申し訳ありませんでした。彼は、、」
リヒターは残念そうにいう。
「動けるようになるまで、ここに残して我々はデンドロンに行きましょう」
「おいていくのか?」
リヒターの決断にムハンマドは意外な顔をする。
「お恥ずかしながら、我々には一刻の猶予もないのです。」
「置いていくのは、それはないと思う。そもそもムハンマドが容赦ないのが悪い!」
涙目でリリアスはきっとムハンマドをにらんだ。
リリアスも以前容赦なく蹴りをいれられたことがある。
「僕がみるっ」
ノアールはいいのですか?とムハンマドをみる。
「嫌とはいえないか??」
ムハンマドはリリアスに渋々任せることにした。
若い男を手で触れてマッサージをするなんて、リリアスは自分の心をわかっていない。
ムハンマドは苦々しく思うのだった。
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