無頼・証券マン、哲二

ハリマオ65

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14話:プラザ合意とバブル崩壊

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 1986年があけ初詣ででは長男・健一の早稲田中等部への合格祈願をした。やがて3月になり、必要書類を提出して入学試験を受けて、数日後の合格発表で無事、合格できた。すぐ、その足で初詣でした神社にお礼参りに行ってきた。1986年での3年満期のスポットファンドが2856万円となった。

 一方、日本経済では欧米諸国は円安のせいで自国の産業が弱体化し、それが経済に悪影響を及ぼしていると主張し経済大国と化した日本にとり欧米諸国とイスを並べて話ができる事は光栄の至りだった。先進4か国から「円は安すぎる。高くしろ」と要請されれば、世界のトップの一員として協力したい。

 そんな考えから日本は円高政策に舵を切る。日本銀行を焚きつけて、がむしゃらに日本銀行券を刷らせている今の日本政府からは想像できない対応だといえるだろう。しかし当時は世界各国の言い分を受け入れなければ日本は世界から取り残されるという空気がそこには存在した。

 プラザ合意によって、各国の思惑通り円高は一気に進行した。1ドル235円前後で推移していた為替レートは、翌日から急落。わずか一年で1ドル150円前後になった。円高になろうが円安になろうが、日本国内でモノを売り買いする分にはまったく関係がない。

 円高になっても、国内での売価に変化はない。だが、海外で日本製品は高くなる。対米輸出で経済を急伸させた日本にとって急激な円高は産業界を震撼させた。アメリカに輸出するモノが、為替によって急激に高くなってしまったのだ。これでは売れ行きが鈍り、日本企業の成長が止まってしまうと危惧する声も出始める。

 急激な円高を招いたプラザ合意は、後から見れば日本経済崩壊の序章でしかなかった。プラザ合意こそが、日本経済史の転換点になった。プラザ合意を「第2の敗戦」となぞらえる。それほど、日本経済と産業界に大きな影を落とす失政だった。失われた10年、20年、30年が始まろうとしている。

 経済は魔物であり人智を超えた動きを見せる。プラザ合意後に始まった急激な円高は、その後に鈍化する。それでも円高が止まることはなかった。輸出に頼り切っていた日本の製造業にとって円高は回避したい危機だった。しかし石油や鉄鉱石などの原料は輸入に頼っていたため、当初は原料を安く仕入れる事ができるという円高メリットもあった。

 急激な円高にも関わらず日本経済が好調だった。その理由は政府が急激な円高に危機を感じ、それを食い止めるために金融緩和を実施したことが一因にある。日本政府は円高を憂慮し通貨量を増大させた。通貨発行量を増やしても円安にはできなかったが円高を食い止めることはできた。

 そして通貨発行量が増大したことで、お金が行き場を失う。それが、バブル景気を招くことにつながった。1988年から日経平均はみるみるうちに上昇。翌年末には、いまだ破られていない3万8915円という金字塔を打ち立てた。バブルは、国全体を狂わせた。このままバブルは続き、日本経済は右肩上がりを続ける。

 誰もが、そんな熱狂に冒されていた。しかし1990年初から株価は下落。当初は、高すぎた株価が一時的に下がっているだけ、少し経てば再び株価は急騰するという楽観的な見方が広がっていた。そうした思惑とは裏腹に株価が回復することはなかった。そのまま、ずるずると10年が経過。この頃、ようやく日本の政財界はバブル崩壊の認識を受け入れた。
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