旦那が語るに。~ニッチな床屋が嫁に話した色々な話~

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2024/07/14 嫁の備忘録 【石垣島旅行】3日目

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明けて3日目。
起床。私は天井を眺めながら「ふくらはぎはもうダメだ捨てていく。太ももお前はよくやった。下腕筋たち、世話になったな。上腕筋たちも連れて行ってやってくれるか?広背筋、腰痛によろしく」と、アホみたいなことをぼんやりと考えていた。余すことなく全身筋肉痛である。

この日は宿を移動したこともあり別の商店(これまた小汚い)に行ってみた所、日曜は惣菜はやっていないとのことで朝食難民になってしまった。
ただ、そこのおばちゃんによると車で20分ほどの所にJAがあるとのこと。
JA大好きな私である。行かないわけがない。
この日のスケジュールとしては、AMはほぼフリー。
というのも、なんせ前日が前日なので旦那も一応AMは空けておこうというつもりがあったらしい。本当に良かった。AMから海に行くとか言われた日には私は戦線離脱宣言をしていたに違いない。部屋で酒飲んどくから君たちだけで行ってきなさいと。
地獄の山登りから明けたこの日、私の太ももとふくらはぎは全力で働くことを拒否していた。座る時は手から行かないと座れない。油の足りないブリキ玩具もかくやというような動きしかできないでいた。

それでもJAは行く。


そういうわけで急遽予定に追加された「JAゆらてぃく市場」巡り。
ここは農産物や海産物、それからお土産物だのが目白押しで夢中になっていたせいで写真が一枚も残っていない。とんだ失態である。
入場すぐに詰まれたアセロラの香りがとても心地よかったのを覚えている。子らも「イイ匂い」と喜んでいた。パイナップルの匂いだと思っていたようだが。あぁ、写真がないのが悔やまれる。

朝食に私はスパムおむすびを、娘はクリームパンを、息子はマグロの刺身をチョイスした。明かに量が多かったので旦那と半分こ、とはいえ朝から豪勢なことである。
娘は口の中がやはり痛いようで、眉をしかめて黙々とクリームパンを食べていた。

無事腹ごしらえも済ませ、お土産もいくつか購入し、さぁ移動しましょうと旦那に目的地を聞くと「石垣牛のハンバーガー食べに行く」とのこと。
今、スパムおむすびでお腹みちみちですけど…。
なんでも、子らもハンバーガーが食べたいらしく前々から約束していたそうだ。
その約束知らんかったなぁ…。
まぁ、私も聞かなかった。

ということで、目的のカフェは宿を挟んだ反対方向にあるそうだ。一旦宿に寄って午後の荷物を纏め、すぐに出発した。

宿から北へこれまた30分ほど。
ウリウリカフェ 方言で「ほらほら」という意味らしいが、そういう意味でつけているのかどうかは知らない。

石垣牛のハンバーガーの他、アイスやらのスイーツ、それからサンドイッチだのの軽食もあった。
壁には「お1人様1品のご注文をお願いします」との張り紙。
この感じ、ちょっと嫌な気分になってしまった。
別の店ではあるのだが、大人の1人前を小学生にも頼まされて、食べきったものの時間がかかったことで店主からの圧が凄かったことがあるのだ。それを思い出した。
お店側の言い分ももちろんわかる。客単価とか時間単価とか。
しかし一応良識的なカスタマーを気取っている身としては、わざわざこういう事を書かれるとちょっと身構えてしまう。
これを書かざるを得ないカスタマーが多いという現実なのだろう。嘆かわしいね。

閑話休題。

さて、一人一品どうしたものかと考えているとお子さまはお飲み物だけでも、とのことだったので、件の石垣牛ハンバーガーセットを1つと単品で1つ。それからまだ腹の中でスパムおむすびが荒ぶっていた私はみんなで摘まめるようにとガーリックシュリンプを頼んだ。

あとは人数分の飲み物。
料理を待っている間息子が窓の外を見て「見て!イトトンボが交尾してる!」と大興奮していた。


ここの料理もやはりどれも美味しかった。
正直な所、私は形の整っていないハンバーガー(手づかみで食わす気ないだろというようなやつ)は苦手なのだが、ちびりと摘まませてもらった石垣牛のパテは「これなら我慢したるか」というようなお味であった。半端な時間のスパムおむすびが悔やまれる。あれはあれでやっぱり美味しかったんだけれど。
ガーリックシュリンプ3匹とパン一切れでお腹いっぱいになってしまったので相変わらず口が痛い娘の為にハンバーガーを出来るだけ形を保ちつつ細切れにする作業に徹した。


お腹も満たされた所で本日のメインイベントである。
ウリウリカフェさんからやや南下。海沿いの道は時折海が見えて子らが退屈しないのでいい。

「さんご礁の海から」さんは、旦那がお客様から紹介していただいた小規模シュノーケリングショップだ。
この全身筋肉痛でシュノーケリング。笑うしかない。
しかし、子らと旦那に任せるつもりで半笑いを浮かべていた私に店主は言った。
「お母さん!楽しむしかないですよ!」
この言葉に私は天啓を得たような心持になった。
確かに。おっしゃる通り。筋肉痛が痛いもんは痛いんだからぐだぐだするより楽しんだもん勝ちだ。
私は「うはは」と笑って店主に全て委ねる事を決めた。

まずは店内で簡単なレクチャーを受けた。
シュノーケルやゴーグルの着脱方法や水が入った時の対処法、それにどうすれば水が入りにくいかなど。
「ライフジャケットは必ず浮く」と繰り返す店主に子らも追従する。
どうやら店主の決め台詞のようだ。


そして着替えを済ませ港へ移動し船へと乗り込む。
底面がアクリル張りになっていて海面下が見下ろせるという所謂グラスボートというやつ。

湾内の水は薄く濁っていたがそれでも私の見たことのある海の色とは違った。萌黄色、というのだろろうか。港から離れて沖に出るとこの萌黄色は透き通った鶯色になった。

まずは珊瑚の少ない地点で装備の確認。
ノリノリだった子らであるが、いざ海へ入る段階になると途端に尻込みし始めた。特に娘は船に乗った段階から「楽しいけど怖い」と零していたほどだから、その瞬間はさぞ恐ろしかっただろう。
スマホを構えつつ大丈夫かしらと過った不安は、しかし杞憂だったようだ。
店主のサポートを受けつつ十数分ほども浮かんでいればすっかりライフジャケットへ信頼を寄せたらしく、そこからはまるで犬か猫か、何かしらの4足動物のように泳ぎ始めた。
踏み込む足でフィンを使う方法があるとは、新しい発見だった。

慣れたようなので本番のポイントへ行きましょう、と、また船に戻って少し移動した先では海面下一面に珊瑚礁が広がっていた。そこここで小魚が無警戒に泳ぎ回っている。
店主は子らをすぐにフォローできる体勢で「ここの下には大きい珊瑚があるよ」だの「ここにはシャコガイが」だのと言っているのだが、この目印に乏しい海上で何の特殊能力なのだろうと不思議に思った。
途中で息子と旦那が海底から引き揚げたシャコガイを持たせてもらっていたのだが、素晴らしい動画が撮れたのでにんまりである。

しかしこの水中撮影(スマホを防水ケースのようなものに突っ込んだ簡易カメラにて)、よくあるジップロックを強化したようなタイプの防水ケースに入れていたのだが、コイツには罠があった。
ビニールが水圧その他で画面にペタッとなるせいでスマホが誤反応を起こして勝手に撮影が止まったりホーム画面に戻ったり、酷い時はインカメラに切り替えてきやがるのだ。あと、ビニールが反射して画面が全く見えないので大体の勘で撮るしかないのである。これは盲点だった。
もし次回があるとしたら、大人しくゴープロを買おうと思った。

結果スマホ内には「溺死した人のスマホに残った最後の映像」のような、右往左往する映像と「ゴボボッガボッ………」というような恐ろしい水音を含んだ動画が大量に保存されることとなった。
整理するのが億劫だ。

約3時間ほどのツアー。すっかり水にも慣れて堪能した子らはそれはもう満足気であった。






この日の夕食は「鰓呼吸」というお店だった。こちらも旦那がお客さんから教えていただいたというお店で、後で発覚する話によると「島の人が内地のものを食べにくるお店」だとか。相変わらずニッチなチョイスをするなぁと思った。

ここで私は生まれて初めてソーメンチャンプルーを食べたのだが、こんなにおいしいものだとは思っていなかった。
そもそも私は炒め物があまり好きではない。100%作り手の責任なんだろうと思うのだが、べちゃっとしたのが嫌なのだ。
この時は地元のものだし娘はソーメン好きだしということで本当になんとなく注文したのだが、私のなんとなく、実に冴え渡っていたと言わざるを得ない。
麺はもちもち、味付けは恐らくめんつゆなんだろうが振ってある鰹節の出汁も相まってとても上品な味だった。
帰宅後丁度1杷余っていたソーメンで似たようなものを作ってみたのだが、この時ほどではなかったもののやはり美味しかった。
ソーメンチャンプルー、推せる。

この日、娘の手足口病はピークを迎えていたようで、娘はずっと「口が痛い」と言っていた。唇にものが触れるのを嫌がり、喉にも発疹が出来ているようで飲み込むのも難しい顔をしていた。
食べるのが好きな子なのに、本当に不憫だった。
なので薬局を調べて旦那に小児用沈痛解熱剤を買いに走らせた。持っていなかった私の失態であったが、この場に旦那と子らだけ残すのはそこはかとなく不安だった。あと、とっとと酒が飲みたかった。
こういう時嫌な顔をしない、良い旦那である。
離席中にここぞとばかりに高い酒を注文した。


店内には生け簀代わりの水槽があり、子らが覗いたところデカイ二枚貝がいるらしい。息子が食べたいとせがむのでメニューを探せばそれらしいものとして「白ハマグリ」があったが、なんとコイツ1匹550円もする。正気の沙汰じゃない。
まぁ、思い出だからよろしかろうかと2つ注文して息子に1つ、娘はいらないと言ったので旦那と私で半分こ。
JAと同じくらい貝類が好きな私だ。本当の所は1つ丸々食べて味がしなくなるまで咀嚼したかったのだが、丁度いいタイミングで戻って来た旦那に少し気を使ってしまった。私だって気を使えるのだ。

結局、私に似て貝類が大好きな息子が旦那にせがんでもう1つ追加注文することとなった。
1個550円…。
くらくらしていた私はその貝殻を持ち帰りたいと愛想のいい店員さんに交渉した。
「全然いいですよ。沖縄の貝じゃないんですけどね。ウチは島の人が内地の食べ物を食べにくるお店なんです」
と、その時の店員さんの言葉である。

帰宅後“白ハマグリ”は忘れるもんかという私の意志を刻まれて立派なオブジェとなった。


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