薔薇紳士の興じ事

世万江生紬

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夜は朝より

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 カランカラン 

「いらっしゃいませ。」

「ここ、夜も開いてるの?意外~♪」

 ここは悩めるお客様が来店される喫茶店。ですが、日も暮れてそろそろ閉店という時間にやってきたのはお客様、ではなく薔薇紳士の幼馴染、鬼灯シアンです。

「基本的にはお客様がいなくなってから、私の気分で閉店していますからね。高校生であるいちご君には帰ってもらいましたが。」

「ふ~ん。でも今ワタシというお客が来ちゃったからまだ閉店しちゃダメヨ。」

「そうですね。というより、貴方昨日の朝にも来たばかりでは?」

「昨日はお仕事前の頑張ろって気分の紅茶で、今はお仕事終わりのお疲れって気分の紅茶なノ♪」

「そうですか。ではお疲れの体を癒す紅茶をお出ししましょう。」

「あら~、さすが薔薇紳士ね♪」

薔薇紳士はそう言うと、ダージリンティーのいい匂いを店中に漂わせながら1杯の紅茶をシアンの前に置きました。

「はい、どうぞ。」

「ありがと♪」

シアンは出された紅茶をゆっくりと飲んでは「あぁ~」と疲れた声を上げます。

「お疲れのようですね。」

「そうよ、すごく疲れちゃった。お化粧も大分ボロボロよ。」

「お化粧…昨日の朝見た時とあまり変わらないように見えますが…。」

「失礼ネ!ワタシの顔をよく見てないってこと!?結構顔違うよ、ほらほら!」

シアンは薔薇紳士の言葉に頬を膨らませ、顔を薔薇紳士に近づけます。そんな子どものように怒るシアンの様子を見て、バラ紳士はくすりと笑います。

「失礼。夜は朝よりずっと暗い。お顔もよく見えなかったのですよ。」

「電気付いてるけど。」

「おや、そうですか。」

「むー!やっぱり私の顔よく見てないんじゃない!」

シアンはぷりぷりと怒りながらも紅茶を美味しそうに飲みます。

「ふふ、失礼しました。ではお詫びにこちらの紅茶は私からのサービスにさせて頂きます。」

「ふ~ん?じゃあもう一杯もらおうかな♪」

もう一杯を、ゆっくりと時間をかけて飲む。そんな穏やかな時間を2人は楽しく感じているのでした。

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