薔薇紳士の興じ事

世万江生紬

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この道の先には

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 カランカラン

「いらっしゃいませ。」

「いらっしゃいませ~。」

 ここは悩みを抱えるお客様が来店される喫茶店。本日のお客様はこの店の常連、東堂さゆりです。さゆりはこの店で勉強を頑張る高校生ですが、今日はどこか浮かない顔をしています。

「さゆりちゃんこんにちは。すごく浮かない顔ですが何かあったんですか?」

「いちごちゃん...聞いてくれる!?」

さゆりはいちごが話を聞いてくれるとなるとドカッとカウンター席に座り、荷物を椅子に置きます。その様子を見た薔薇紳士は静かに紅茶を淹れ始めました。

「今日模試の結果が返ってきたの。ちょっと前に受けてたやつね。でもそれが!志望校には全然足りないの!今まででもすっごい頑張ってんのに、もっと頑張らないと厳しいって言われて!無理に決まってんじゃん!」

「そっか、頑張ってたのに結果が奮わないってキツいよね。」

「そうなの!でも話はそれで終わりじゃなくて、第一志望じゃない、レベルを下げた第二志望なら何とかなりそうではあるんだよね。でもそれってなんか逃げたみたいだし、でも今まで以上に頑張るとかしんどいし。もうどうしようって!」

さゆりは頭をガシガシと掻きむしります。いちごに愚痴を全部話してスッキリしたようではありますが、問題は何も解決していません。

「ねーどうしたらいいと思う?」

「結構将来に関わってくる悩みだね...薔薇紳士さん!どう思います!?」

答えられなかったいちごは薔薇紳士に助けを求めます。薔薇紳士は淹れたての紅茶をさゆりの前にコトリと置いてから話し出します。

「そうですね...。さゆり様、貴方がどんな道を選んだとしても、その道の先はあります。繋がっていますよ。だから何を選んだって構わないんです。貴方の進むべき方向が変わらなければ、どの道を選んだってその先は一緒です。だから一番に、後悔しない選択をしてください。貴方自身で、後悔しない道を選んでください。」

薔薇紳士はそう言うと、さゆりをまっすぐ見つめました。さゆりは薔薇紳士の言葉を黙ってかみ砕いていましたが、しばらくして徐にシュシュで髪をくくりました。

「アタシ...まだ分かんない。もう少し時間もあるし、ゆっくり考えるよ。自分の後悔しない道ってやつ。でもとりあえず今のアタシに出来るのは頑張っとくことだけだから、頑張る。」

「それがいいと思います。」

「さゆりちゃん、自分に手伝えることあったら言って下さいね!」

「じゃあ鞄から電子辞書出してもらえる?」

「はい!なんかパシリみたいですが!」

「ハハ。ありがとね!」


 どんな道を選んだって、進むべき方向を見失わなければ道の先は一緒です。道の分かれ目で迷った時は、ただ自分の後悔のしない方に進めばいいのです。
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