薔薇紳士の興じ事

世万江生紬

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どんな星空にも

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 カランカラン

 「いらっしゃいませ。」

「いらっしゃいませ~。」

 ここは悩みを抱えるお客様が来店される喫茶店。本日のお客様は大学生くらいの女性です。

「こんにちは。こちらの席へどうぞ。」

「ありがとうございます。」

いちごは女性をカウンター席へ案内しました。女性は席に座るとスマホを開き、どこかニヤニヤと笑みを浮かべています。

「お姉さん、なんか嬉しそうですね?」

「えっ!ごめんなさい、ニヤニヤしてたかな。」

「はい、なんか幸せそうでした。何かあったんですか?」

「えへへ、実はね、高校の時の...あ、私は植松円って言います。今大学生で。で、高校の時の親友が進学するからって遠くに引っ越したの。で、寂しいな~って思ってたんだけど、昨日こんな写真が届いてね。」

円はスマホの画面をいちごに見せます。いちごが画面をのぞき込むとそこには綺麗な星空の写真がありました。

「綺麗な星空ですね!」

「うん。そんな感じのメッセージと一緒に送ってきてたんだけど、それでね、私その時外を見てみたの。そしたら同じような空が広がっててね。なんか...繋がってるんだなぁって。あはは、なんかポエムみたいになっちゃた。」

「いえいえ!素敵じゃないですか!」

いちごが興奮気味にそう言った時、紅茶の良い香りがふわりと漂ってきました。

「どうぞ、こちら淹れたてですよ。」

「わぁ!いい匂い!ありがとうございます!」

円はゆっくりと紅茶を一口飲みました。そしてほぅっと息を吐くと「おいしい」とこぼしました。

「それは良かったです。ところで先ほどの話が聞こえてしまったのですが、素敵なお話でしたね。どんな星空にも星が瞬いている。距離が離れていても空を見上げるだけで側にいるように感じられる。とても良い親友をお持ちですね。」

「..へへ。ありがとうございます。自慢の親友なんです。」


 どんな星空にも星が瞬いている。離れていても同じ空の下にいる。クサくたって恥ずかしかったって、事実なんですから、伝えてみてもいいんじゃないでしょうか。
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