魔法少女のファンな俺

世万江生紬

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魔法少女のファンな俺⑬

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 「先輩、本当にやるんですか?怒られたりしません?」

「大丈夫。前もやったけど怒られなかったから。」

「怒られ慣れてる問題児ですか...。」

 今日も俺はモンストルを作り出し街の人の負の感情を集めつつ、魔法少女の活躍を目に焼き付けていた。がしかし、今日はこないだ顔合わせをした元魔法少女の後輩2人を連れてきていた。理由は単純、

「それにしても、魔法少女と元魔法少女の対人戦闘なんてカオスですよね~、面白そうです。」

「お姉ちゃん、面白がらないで。先輩にすごいお願いされて折れちゃったけど、組織は魔法少女への対人戦闘は止められてるんだよ。」

そう、魔法少女との対人戦闘リベンジ。と言っても今回はただ見たいからという訳ではない。もちろんそれもあるけど、俺の真の目的はこないだ魔法少女たちがピンチな時に助けに入ったお助けヒーローをもう一度見定めるため。もっと言えば正体を掴むため。俺は毎日のように魔法少女の活躍を観戦しているし、より推し活を強固なものにするために敵組織にも入った。それくらいずっと、一番に応援しているのに、どこの馬の骨かもわからないポッと出のやつに美味しいところ持って行かれるのはものすごく腹立たしいのだ。せめてどんな奴かくらいは知っておかないと腹の虫が暴れ出しかねない。とはいえお助けヒーローがもう一度助けに入るには魔法少女がピンチになる必要があるが、こないだの様に俺が作ったモンストルのせいで魔法少女たちがケガをするのは見ていられない。そのためそこそこ総力戦になりつつ魔法少女の安全は確保されてる条件下でピンチに陥ってもらう必要があった。この難しい条件をクリアするための最適解として俺が導き出したのが、後輩たちを引き連れた対人戦闘だった。ちなみに、先輩にもう一度お願いするという案は速攻で捨てた。

「ていうか!先輩の欲望のために一役買ってあげてるのに魔法少女と実際に戦うのは私たちで先輩は魔法少女たちの前に出ないってどんなパワハラですか。先輩も体張ってくださいよ。」

「いや、俺魔法少女たちを前にすると緊張で何もできなくなっちゃうから。」

「小心者!」

「怒るなよ、オーロ。俺は対人戦闘はしないけどその代わりにモンストル大量生産してるんだから。」

「先輩の魔力は幹部並みにあるって本当だったんですね~。すごいです。」

「今そう言うこと言ってるんじゃないんだよお姉ちゃん!」

姉妹は俺の隣で全く違う反応を示す。正直この状況に対する反応は圧倒的に文句言ってる妹の方が正しい自覚はある。姉はなんと言うか、肝っ玉座りすぎてないか?不思議ちゃんの域を超えてる気がする。

「ん?ねぇ先輩、魔法少女ちょっと押されてません?」

「え?...確かに。」

今回俺は戦闘力や負の感情を集める能力を最小限まで抑えた小さなモンストルをとにかく大量に作っていた。魔法少女も全く強くもないモンストルを倒すことは赤子の手をひねるようだがそれにしても数が多い。未だ魔法少女の前に出ていないとはいえオーロとプラータも遠隔で魔法を使って援護してくれているので魔法少女はどんどん追い込まれているように見えた。

「これもしかしたらアタシたちが馬鹿正直に目の前に出る必要ないかもですよ。」

「でもピンチって感じではないからなぁ...。こないだはマジで危なかったんだよ。俺もなんであの時モンストルが魔法打ったのか分かってないし...。とにかく、アイツが出て来るにはもっとピンチにならないとだめだと思う。」

「はぁ...ってか、そのお助けヒーローってどんな奴だったんですか?」

「イケメンだったぞ。」

「説明が簡潔すぎますよ...。」

俺とオーロが話していると、プラータがおもむろに腕を伸ばし、魔法少女に手を向けた。まるで魔法を撃とうとしているかのように。

「プラータ?何やってんだ?」

「いえ、ピンチにしてみようかと思いまして。」

「は?」

プラータはそう言うと魔法を放つための呪文を唱えだした。

「鏡に映す真実を見よ。ミラージュリジェクト!」

プラータはタイミングを計るようにそう唱えると、クリムゾンフレイムがモンストルに向かって火の魔法を放った瞬間クリムゾンフレイムの目の前に鏡を作り出し、フレイムの魔法が一瞬にして跳ね返された。敵に向かって真っすぐに放ったと思った自分の魔法が急にそのまま自分に返ってくることなんて誰も予想できない。フレイムも驚いて目を見開き体は固まっていた。

「ッフレイム!!」

誰かがフレイムに向かって叫んだその瞬間、フレイムの火の魔法が一瞬にして消えていた。以前見たお助けヒーローが魔法少女たちを助けるその様子と全く同じように。

「フレイム、大丈夫?」

「っ、だい、じょうぶ...。」

フレイムの前に立ち、優しい言葉をかける青年は間違いなく以前俺が見たお助けヒーローだった。以前と変わりなく、優しげな風貌に凛々しい表情をしたイケメンだ。俺はその姿を確認すると、いてもたってもいられなくなり木の陰から一歩踏み出しかけたがその俺の服の裾をプラータが掴んでいた。

「プラータ?」

「先輩、先輩が言っていたお助けヒーローってあの人ですか~?」

「そうだ。あのイケメンだ。くそ、魔法少女のお助けヒーローなんて美味しい役目のやつがイケメンなんて余計腹立たしい...。」

「先輩、あの人はアタシたちも含めて、魔法少女の生みの親です。」

「は?」

俺は思わず魔法少女たちから目を逸らし、姉妹の方を見る。姉妹は少し驚いたような、でもどこか安心したような顔をしていた。

「生みの親?」

「そうですよ~。魔法少女って、変身するときジュエルを体のどこかにつけているのは知っていますか?私とオーロはイヤーカフです。」

「もちろん知ってる。レインピースもそれぞれ色違いの宝石のアクセをつけてる。ブレスレットに髪飾りに眼鏡にネックレスに指輪にカチューシャ。」

「全部言えるの気持ち悪っ。」

「それが魔法少女に変身するアイテムなんですよ~。そしてそのアイテムを魔法少女たちに渡すのが彼、名前はブランと名乗ってましたよ。」

なんてこった!俺がいけ好かない奴だと思っていたお助けヒーローがまさか推しの創造主、つまり神だったとは!自分が作った魔法少女がピンチになればそりゃ助ける!合点がいった!

「にしても、ブランは魔法少女がピンチなとき助けてくれるんだね。知らなかった。」

「私たちはピンチな状態になる前にクビにされたものね~。」

「思い出したら腹立ってきちゃった。」

そうか、俺はシンプルに推しを作り出してくれた神だと思えるが、この2人にとっては魔法少女にされたのにクビにされた元雇い主って感覚なのか。それは確かに複雑な。

「と言うか、ブランっていつもは猫とタヌキを組み合わせたような見た目のファンシーな可愛いマスコットなんですよ。それが人型で格好良く助けてるのはビビる。」

「創造主でマスコットか!いいじゃん!」

「ファンは何でも肯定するからいいですね。で、どうします?モンストルは全部倒しちゃったみたいだし、お助けヒーローの正体も分かったし、もうアタシたち必要ないですよね。」

「ん?あ、そうだな。今日はありがとな。」

「いえいえ~お礼なんていいですよ。代わりに今度奢ってくれたらそれでいいです~。」

「お前不思議ちゃんキャラなのにそう言うとこしっかりしてんの?」


 俺はとにかく不快でしかなかった存在が実は神であったことを知り、驚きと同時に過去の自分を懺悔した。神よ、推しを生み出してくれてありがとう。俺はブランと呼ばれる青年に感謝を捧げた。
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