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3章
第10話 覚悟を決まったキッカケ
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レオくんからの「お店に来て」という誘いを、あの手この手でかわしつつ……しかし、時折見せる寂しそうな顔や、助けを求めるような切実な頼み方に罪悪感を覚え、結局月に一度は店に顔を出してしまう。
……つまり、全然かわしきれていない!
だから私は、この前の合コンを機に、再びマッチングアプリを始めていた。
レオくんとの関係を断ち切る勇気が欲しい。
別れを切り出す決断力が欲しい。
彼氏候補がいないからといって、こんな男にいつまでも執着するなんて愚かだと、誰もが思うだろう。
でも、私にとって、恋愛経験の少なさからくる自信のなさが、どうしてもブレーキをかけてしまうのだ。
こんな私には、もう二度と彼氏なんてできないかもしれない
そんな不安が頭をよぎり、顔が好みというのも相まって、『もったいない』という気持ちが湧き上がり、ついレオくんをキープしようとしてしまうのだ。
オタクで地味な女の分際で。
いや、全女性とは言わないけど、誰か共感してほしい。
キープしながら次を探そうとする、この複雑な行動原理を。
しかし、再開したマッチングアプリで出会う男性たちは、なかなか手強い相手ばかりだった。
自分の話ばかりで、まるで無料接待を受けているような気分にさせられる男。
やたらと「女の子なんだからもっと◯◯しなよ」と上から目線で語ってくる男。
初対面でいきなり腰に手を回してくる男。
会って数時間でホテルに誘ってくる男……etc。
(顔で選ぶなと言われるが、顔で選ばなくても幸せになれる気がしないと思うのは私だけ?思えばレオくんといて、会話して、女として不快に思ったことは無いな。……ホストすげぇ。)
……話は変わるが、私の親は躾には厳しく、不器用な私はよく注意された。
決して毒親ではなかったけど、息苦しかった。
『ちゃんとしなさい』『しっかりしなさい』『女の子なんだから恥をかかないようにしなさい』。姉たちは何でもそつなくこなし、私も真面目に努力はするのだが、どうしても上手くいかないことが多かった。
なぜだろう。
マッチングアプリで出会った男性たちとの食事は、いつも緊張の連続だった。
もし何か粗相をしてしまったら、直接何かを言われるわけではなくても、「ははは、大丈夫?」と笑顔で言われたとしても、内心ではガッカリしているのではないか?
『うわぁ、女子として食事マナーあんまり綺麗じゃないな…』と思われているかもしれない、という被害妄想が常に頭から離れなかった。
ふとレオくんとの食事デートの時のことを思い出していた。
二人でおでんを食べに行き、熱々のこんにゃくが箸からツルッと滑り落ち、小鉢から飛び出して、テーブルに落ちてしまったのだ。
「わ!ごめん!本当にごめん!粗相失礼!恥ずかしいな…はは…ははは」
慌てて謝った。
またやってしまった、という自己嫌悪と恥ずかしさで、顔が赤くなるのを感じた。
「……いや、そんな謝らなくて良くない?カモちゃん、この前もお冷ちょっと溢しただけでめっちゃ謝ってたけど」
「え?」
レオくんは不思議そうな顔で言った。
「それぐらい別に気にしないよ。さ、食べよ食べよ!」
「……箸の使い方下手だなーとか、食べ方汚いなーとか思わないの?」
レオくんはきょとんとして首を傾げた。
「?……よくわかんないけど、そんなことぐらいで別に思わないよ。カモちゃんの食べ方、別に普通だし」
その時のことを、鮮明に覚えている。
飾らないレオくんの言葉が、じんわりと心に染み渡った。
(私……レオくんのこと、好きだなぁって思ったから。)
そして、私の中で何かが決まった。覚悟を決める時が来たのだ。
……つまり、全然かわしきれていない!
だから私は、この前の合コンを機に、再びマッチングアプリを始めていた。
レオくんとの関係を断ち切る勇気が欲しい。
別れを切り出す決断力が欲しい。
彼氏候補がいないからといって、こんな男にいつまでも執着するなんて愚かだと、誰もが思うだろう。
でも、私にとって、恋愛経験の少なさからくる自信のなさが、どうしてもブレーキをかけてしまうのだ。
こんな私には、もう二度と彼氏なんてできないかもしれない
そんな不安が頭をよぎり、顔が好みというのも相まって、『もったいない』という気持ちが湧き上がり、ついレオくんをキープしようとしてしまうのだ。
オタクで地味な女の分際で。
いや、全女性とは言わないけど、誰か共感してほしい。
キープしながら次を探そうとする、この複雑な行動原理を。
しかし、再開したマッチングアプリで出会う男性たちは、なかなか手強い相手ばかりだった。
自分の話ばかりで、まるで無料接待を受けているような気分にさせられる男。
やたらと「女の子なんだからもっと◯◯しなよ」と上から目線で語ってくる男。
初対面でいきなり腰に手を回してくる男。
会って数時間でホテルに誘ってくる男……etc。
(顔で選ぶなと言われるが、顔で選ばなくても幸せになれる気がしないと思うのは私だけ?思えばレオくんといて、会話して、女として不快に思ったことは無いな。……ホストすげぇ。)
……話は変わるが、私の親は躾には厳しく、不器用な私はよく注意された。
決して毒親ではなかったけど、息苦しかった。
『ちゃんとしなさい』『しっかりしなさい』『女の子なんだから恥をかかないようにしなさい』。姉たちは何でもそつなくこなし、私も真面目に努力はするのだが、どうしても上手くいかないことが多かった。
なぜだろう。
マッチングアプリで出会った男性たちとの食事は、いつも緊張の連続だった。
もし何か粗相をしてしまったら、直接何かを言われるわけではなくても、「ははは、大丈夫?」と笑顔で言われたとしても、内心ではガッカリしているのではないか?
『うわぁ、女子として食事マナーあんまり綺麗じゃないな…』と思われているかもしれない、という被害妄想が常に頭から離れなかった。
ふとレオくんとの食事デートの時のことを思い出していた。
二人でおでんを食べに行き、熱々のこんにゃくが箸からツルッと滑り落ち、小鉢から飛び出して、テーブルに落ちてしまったのだ。
「わ!ごめん!本当にごめん!粗相失礼!恥ずかしいな…はは…ははは」
慌てて謝った。
またやってしまった、という自己嫌悪と恥ずかしさで、顔が赤くなるのを感じた。
「……いや、そんな謝らなくて良くない?カモちゃん、この前もお冷ちょっと溢しただけでめっちゃ謝ってたけど」
「え?」
レオくんは不思議そうな顔で言った。
「それぐらい別に気にしないよ。さ、食べよ食べよ!」
「……箸の使い方下手だなーとか、食べ方汚いなーとか思わないの?」
レオくんはきょとんとして首を傾げた。
「?……よくわかんないけど、そんなことぐらいで別に思わないよ。カモちゃんの食べ方、別に普通だし」
その時のことを、鮮明に覚えている。
飾らないレオくんの言葉が、じんわりと心に染み渡った。
(私……レオくんのこと、好きだなぁって思ったから。)
そして、私の中で何かが決まった。覚悟を決める時が来たのだ。
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