断罪イベント成功 成功者は誰?

めい

文字の大きさ
1 / 32

始めの終わり

しおりを挟む
「ダイアナは死んだよ」

5日前に王国学院の卒業パーティーで断罪イベントを済ませた、
ヒロイン、第二王子、宰相の次男、騎士団長の嫡男、将来有望な魔法士の5人。
勝利に酔いしれ、王宮でお茶会をしていた席に、
悪役令嬢の父であり、外務大臣を務める侯爵が面会を求め、開口一番のセリフである。

王国学院は貴族の子息と一部の有力商人の子が学ぶ学校であり
その中にヒロインである男爵令嬢が、父の叙爵に伴い途中入学してきた。

侯爵の娘ダイアナ・フォン・ローリックは幼い頃、1歳上の第二王子の婚約者に選ばれ、
お妃教育を完璧に身につけた、誰もが認めるレディであった。

そのダイアナを第二王子が卒業するパーティーで断罪した。
ヒロインであるリリーを虐め、ないがしろにし、ケガまでさせた
そう信じ込んでいる4人に断罪され、
罪は認めなかったが、婚約者の座を降りることを約束させた。

誰もが認めるダイアナの悪事を裁き、辱めたことに5人は大いに酔っていた。

そんな中での突然の訃報である。

侯爵の言葉に5人が絶句していると、
いや、5人ではない、ヒロインの口元は醜く歪んで笑いをこらえているようだったが……。

「で、私も責任をとって外務大臣を辞任。息子も財務局を辞職させた
侯爵位も、甥のアルフレッドに譲渡する」

あまりの大事に、誰も身動きが取れない。

ダイアナは美しく聡明な女性で、王子の婚約者から外されても、引く手あまただと
ヒロインのリリーがいつも他の4人に言っていた。

自殺するなど思ってもいなかった。

外務大臣である侯爵は、国の外交を一手に担っており、国王の信頼も厚い。

兄のトルスタインも財務局に勤め始めて数年で、不正をただし帳簿の改善を行い、
国庫を豊かにした実績は、王宮内で有名である

その二人が職を辞して、なおかつ爵位まで下りたのだ。

学校を卒業したばかりの17歳の若者には重すぎる現実に、誰も声を発しない。

「ダイアナの罪の中に、リリー嬢に犬をけしかけた。ってのが、あった。
王子が庇い、かすり傷を負った?ってやつだ。
その罪のおかげで、国家反逆罪。
王子がその場所にいるのを知ってて、なおかつケガをしたのであれば、最初から王子を狙った可能性も消さないだろう??
まぁ、そのおかげで私たちの辞職も爵位の譲渡も認められた。
他にも罪を並べてくれたおかげで、王宮は真偽の確認で大変なことになってるぞ。
さて、諸諸の書類も受理された事だし、王子殿下がたには2度とお目にかかることはないだろう。
お礼をもうし…………いやいや、身分と共に口も軽くなったか。
では、失礼する」

そう言い捨てると、苦笑しながら扉の方に向かっていく。
ノブに手をかけたところで、思い出したかのように振り返り。

「そうそう、魅了の魔法って知っているか?」

と、それだけ問うと、
答えも聞かずに退出した。


残されたのは、茫然とした男たち。
「国家反逆罪ってなんだ?」
「侯爵が辞職?」
「ダイアナが自殺……?」

最後の侯爵の言葉は耳には入っていない。







全ての手続きが終わり、王宮を辞した。

侯爵と息子のトルスタインは上機嫌で急ぎ王都の屋敷に馬車で戻っていく。

この5日間で水面下で手続きは終わり、
あとは、新しい侯爵である甥を待つだけとなった屋敷。

甥である新侯爵は無能でない。
没落させる事もないだろう。

屋敷も使用人も領地も愛着があるが、
それに伴う重責を考えれば、財産・身分とて割に合わないと思っている。

この家に生まれた責任を呪ったこともあるが、
ブルーブラッドの宿命。与えられた責任は、死ぬまで全うするつもりでいた。

それが、王族によって『いらない』と言われたのである
ならば、責任も義務も捨てても良いだろう。
その機会は、自分の代では来ないと思っていた。

もともと軍功で爵位を得た一族。
領地に魔物が多く出る森を持ち、先祖代々一族が鎮圧してきた。
知られていないが、侯爵家の一族は有能な冒険者の一族でもある。

いま何のしがらみもない。

第二王子の生母と親友であった侯爵夫人を4年前に流行り病で亡くし、
トルスタインは独身。
娘のダイアナは、王家から冤罪をかぶせられ縁を切られた。

もう、何の遠慮もいらない。

王宮から戻ると、自室に戻り着替えをすませた。
別れを感じ取った使用人たちが涙を流すのを見ない振りをしながら屋敷を移動する。
玄関の大扉は執事が開けてくれた。
執事が扉を開けるなど、常ではない。
だが、彼なりの見送りなのだろう。

外には、トルスタインが笑顔で荷物を積んだ馬2頭を連れていた。

「父上、早く行きましょう。ダイアナが待っています。
王にばれる前に、とっとと行きますよ」

と、手綱を手渡してきた。

そう、娘は死んではいない。

自傷したのは、同じ名を持つ侍女。
彼女は、自分をダイアナの代わりに。と遺書を残していた。
主人の思いを誰よりも身近で感じていた忠義者。
彼女の行為を無駄にはしない。

辞職の手続きは、すべて政敵である伯爵に渡るように裏工作をしていた。
そうすれば受理までに時間はかからない

有能な彼は、3日で申請を受諾させた。
おかげで、王は自分が何にサインしたか気づいてもいないだろう。

数日後には、ダイアナが断罪された罪への調査報告書が王宮に届くように手配してある。
そこで名誉も回復されるだろう。

その頃には3人で国境を越えられる。

楽しい冒険者生活が始まる。

第二王子には感謝はするが、かわいい娘を陥れた責任は取ってもらう。

さぁ、新しい生活が始まる。

自分たちを待つ娘の元へ急ごう!!

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

薔薇の令嬢はやっぱり婚約破棄したい!

蔵崎とら
恋愛
本編完結済み、現在番外編更新中です。 家庭環境の都合で根暗のコミュ障に育ちましたし私に悪役令嬢は無理無理の無理です勘弁してください婚約破棄ならご自由にどうぞ私ちゃんと手に職あるんで大丈夫ですから……! ふとした瞬間に前世を思い出し、己が悪役令嬢に転生していることに気が付いたクレアだったが、時すでに遅し。 己の性格上悪役令嬢のような立ち回りは不可能なので、悪足掻きはせず捨てられる未来を受け入れることにした。 なぜなら今度こそ好きなことをして穏やかに生きていきたいから。 三度の飯より薔薇の品種改良が大好きな令嬢は、無事穏便な婚約破棄が出来るのか――?

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

入れ替わりのプリンセス

夜宮
恋愛
 気が付くと花蓮(カレン)は前世で読んだ物語「ただ一人の君へ~僕だけのプリンセス~」の世界に転生していた!  転生先のカレンは婚約者であるヒーローが愛するヒロインを殺害しようとした罪で断罪される悪役令嬢。  でも、花蓮の推しはヒーローとヒロインの恋の当て馬役の騎士だった。  結局、ヒロインは推しの当て馬役を選ばないのだから自分の身の安全を確保しつつ、推しがヒロインと出会わずにすむようにしたらどうだろう?    そのためには、推しがヒロインと出会うきっかけとなる物語の開始前の出来事を全力で変えるのだ!  私が推しの大切な人を守る!    だが、この時のカレンにはわかっていなかった。  カレンのこの決断が物語の行く末を大きく変えてしまうことを。  カレンは我知らずに物語のヒロインを挿げ替えてしまったのだった。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

処理中です...