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棚から牡丹餅

先輩、後輩

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王太子殿下との謁見は、謁見室ではなく執務室で行われるようだ。
まぁ、そちらの方がやりやすいので、ありがたい。

先導の騎士が部屋をノックする。

「アルフレッド殿をご案内いたしました」

騎士が伝えると、中からドアが開いた。
空けてくれたのはマルセーヌだ。
部屋の中には、エドワルド王太子殿下の2人だけだった。

「お久しぶりです。アルフレッド先輩」

人好きする笑顔で、マルセーヌが出迎えてくれた。

「うん。久しぶりだね」

この2人とは学院時代からの馴染みだった
学年は違うが、俺の作る魔道具に興味を示して
なにかとつけては研究室に遊びにきてくれていた2人。

案内の騎士が部屋のドアから外に出、ドアが閉まると

「この度は、申し訳ありませんでした。全て王家の不始末です」

執務用のイスから立ち上がったエドワルドが頭を下げてきた。
謝罪の姿も、さすが王家‥‥美しいなぁ~
なんて、思っている場合ではないよね
頭を下げてはいけない相手にさげさせている

「頭を上げてください。エドワルド王太子殿下。
謝罪はいただきました。」

顔をあげた殿下は、まだ酷い顔色だ

「お気づきだとは、思いますが、
ローリック家に私も含め踊らされたのだと思いますよ」

マルセーヌと殿下が顔を見合わせて苦笑する

「そこまで、言っていただけるとありがたいです。
どうぞ、私の事は今まで道りエドワルドとお呼びください」

執務室から、内ドアで繋がっている応接室に案内してくれ
ソファーを勧められた。

「ありがとうございます。エドワルド様
では、私の事もいままでどうり?
いや臣下になるのだから先輩は勘弁してほしいので、呼び捨てでよいですよ」

3人掛けのソファーに腰かけた。
机をはさんだ反対側の1人掛けのソファーにはエドワルドが腰かける。
マルセーヌは、お茶を入れてくれている。

「では、私はアルフレッド先輩のままで良いですよね」

お茶をテーブルに置いてくれながらマルセーヌが口をはさんだ

「ず、ずるいぞ。私も……」

この2人は相変わらずだ。
何だろう‥‥目の前でイチャつかれている

「いやいや、学院ではないのだから先輩呼びはやめてください」

先ほどの謝罪の雰囲気は消え、昔の空気に戻る
あいかわらず、マルセーヌの空気を読む力はすごい!!

はい、はい

と言いながら自分のカップを用意して
エドワルドの隣の一人掛けのイスにマルセーヌが腰を下ろす。

今回の事件の後始末の始まりだ。

「まずは、この度の第二王子ウィリアムの不義により、
ローリック家には大変なご迷惑をおかけした。
すでに関係者への処分は言い渡しております。」

エドワルドが話し始めた。
昨日、執事から渡された書類と同じ内容の書類を渡され内容の確認をする。

「ダイアナ嬢が公の場で事実と異なる断罪された事により
侯爵は、あなたに爵位を譲り、
次期侯爵であったトルスタインと共に全ての職を辞した。
そして‥‥‥当人は大勢の前で辱め受けたのを苦に自死。
という最悪な結果に終わった。」

書類の内容を簡潔に読み上げる。

「まぁ、公にはね」

俺が合いの手を入れると
マルセーヌが困った顔になる。

「ローリック家の被った被害に比べて、加害者の罪が軽い。という声が上がっています」

うん。それは、正当な意見だろう
表だけで見ると、被害者であるローリック家が自発的に冒してもいない罪を償なっている。
加害者‥‥とくにリリー嬢の死罪を求める声もあがるのは必然だ。

王家を始め有力な貴族は、
裏で台本を書いていたがローリック家であった事には気づいている。
そして、被害者側が極刑を望んでいない。

「今回の爵位の譲渡、ダイアナ様の死に関しては箝口令がひかれています。
王子たちの罪については、ローリック家の恩情により既に裁かれました。
それを踏まえて、今後の事をローリック侯爵閣下と話し合うために今回の謁見の場が設けられました」

おや??侯爵閣下と呼んでくれるのか
すでに王宮では、侯爵として見ているという事を示してくれた

「説明ありがとう。マルセーヌ」

この2人が事後処理に走り回っているんだろう
その割には、元気そうだけど
2人に贈ったという魔石のおかげか??
それも研究してみたいな。
後で、レポートでも書かせるか‥‥‥

「謁見となっておりますが、
こちらの部屋で今後の話し合いたいと思っています。
ローリック家から通達もありましたが、
今回の事には王や宰相に決定権はありません。
私が決定を下すことが承認されております。
この場は、私とマルセーヌ、アルフレッドせん‥‥様だけですので、
いつもの通りの話し方で結構ですので、決められるところは全て決めてしまいましょう」

エドワルドが言い切った

「では、エドワルド。いつも道理にさせてらもらうよ。
そちらも先輩で良いよ。この場ではね」

決めないといけない事が多すぎる。話し方なぞ拘っていられるか

「では、まず………」

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